第10話 エピローグ:沙梨ちゃんの朝──読むか読まないかは、あなた次第です。

朝、まぶたの裏がじわっと明るくなって、なんとなく目が覚めた。


「……変な夢見たなあ」


天井をぼんやり見上げながらつぶやく。


確か、私、キャサリンって名前で


──え、令嬢? 屋敷? ざまぁ? なんかよくわかんないけど、感情のジェットコースターだった気がする。


それにめっちゃ修羅場だったんだけど。


沙梨はひとつあくびをした。まだ......眠い。


──でも、今日も現実は容赦ないわけで。


……うん、忘れよう。


枕元のスマホがブルッと震える。

LINEだ。開いてみると──







マナ《既読》:

おはよー


さり:

おはよー。ねぇマナちゃん、ちょっと聞いて

昨日めっちゃ変な夢見たんだけど


マナ《既読》:

なに夢占い?w

どんな夢?


沙梨:

わたし、キャサリンっていう名前で、メイドがいるのね、マリアっていう……それで、変な男に引っかかって……

最後にすごく冷静に、きっぱり振ったの。スカッとしたけど……リアルすぎて。


マナ《既読》:

え、なにそれ? 映画の話?(笑)


沙梨:

違う違う、ただの夢。でも、やたら舞台が凝ってた。

なんか洋館とかドレスとか、まるで時代劇かってくらい。


マナ:

へ〜.....さりちゃんこの頃疲れてない?大丈夫?それより、毛利くんとはその後進展あった?


沙梨:

んー……まだ何も。

でもね、土曜日に会う約束はしてるよ。


マナ:

おお、じゃん! で、明日レポートの提出日じゃなかったっけ?


沙梨:

うそ、明日!?

え、なんだっけ?課題……


マナ:

ヘンリー・ジェイムズの『ワシントン・スクエア』だよ。英米文学ゼミ。


沙梨:

そうだっけ?マナちゃんそれもう読んだ?


マナ:

いやそれが......何度読み始めても10分で寝落ちするんだわ。


沙梨:

ほんとに?レポートどうしよう......


(スマホがブルッと震える)


沙梨:

あ、毛利くんからLINE来た……


毛利くん:

「土曜なんだけどさ、ごめん。急にセミナー入っちゃって……」


沙梨:

……ん?


毛利くん:

「もしよかったら、一緒に行かない? すごく勉強になると思う」


(沙梨、スマホを見ながらちょっと首をかしげる)


沙梨:

──え、セミナーって?……それ、


(画面には、返信入力中のカーソル。静かにフェードアウト)




(おわり)

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『地味令嬢ですが、資産チラつかせたらモテ期来ました!?』 赤栗ハイツ@文体実験 @akaguri_heights

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