闘志滾るリスナー
ローズの負った首筋の一撃の反射を受けつつも、リオは淡々と傷口を手で抑えて踵を返す。どう声をかければいいかわからないでいるエルクリッドにすみませんと先に口を開き、首を横に振るエルクリッドも戸惑いを振り払って返す。
「ううん、リオさんもアセスもやっぱり強いしかっこよかったです!」
「そう言ってもらえるなら少しは気が楽になります」
エルクリッドの言葉を受けて少しだけリオも余力を取り戻しながら微笑み、タラゼドが手当ての為に来たのに合わせそちら側へと歩み寄る。
カラードは次は誰かと言わんばかりの強く熱い眼差しでエルクリッドとシェダを見つめ、今度こそと勇み前へ行こうとするエルクリッドよりも先にシェダが進み出てカードを抜く。
「お、次は君か。名前は確か……」
「シェダ・レンベルトっす。クロス師匠のお仲間だったっていうカラードさんを、倒してみせます!」
滾る闘志が魔力の高まりを、魔力の高まりが風を呼んで向かい風となるそれを受けてカラードは喜々しながらカードを抜いて応え、次の戦いが始まる。
「闇を断って悪しき光を祓ってこいヤサカ!」
「熱風引き連れ大地を燃やせアネス!」
シェダは三日月の刃を武器とする鬼のヤサカを、カラードは色鮮やかな羽毛を持つ飛ばない巨鳥火喰い鳥のアネスを召喚する。
先のリオの戦いからシェダはカラードの戦術を把握し、それを踏まえつつも深く息を吐いて昂ぶる気持ちを落ち着かせた。
(リスナーは常に冷静であるべし……火喰い鳥か、どう思うディオン)
(飛ばない代わりに強靭な脚力とドラゴン程ではないが火の息を武器とする魔物だな。だが鳥類に対応するツールカードは限られている、連札劇を考慮するならばある程度は読みやすく、そしてそれは相手もわかっているということだ)
アセスである魔人ディオンの分析を聞いてシェダは戦略を考え始める。鳥類に対応するツールカードというのは多くはなく、主に武器が中心で身を守るものはほとんど対応していない。
となればスペルを中心とし連札劇を行うと予想され、カラードもそれを踏まえて動くとも。
「どうした、来ねぇならこっちから行くぜ! 疾走れアネス!」
カラードの言葉に甲高い鳴き声で答えたアネスが長い首をまっすぐ伸ばして走り出し、その加速力はシェダの予想を越えるもヤサカは冷静に見極めすれ違いざまの蹴りを避けつつ距離を取る。
避けられたと同時にアネスは再びヤサカに向かって走り、今度は左右への緩急もつけて翻弄する動きをしヤサカを惑わせ再びすれ違いざまに蹴りを繰り出し、右肩を爪で切り裂く。
(速すぎる! でもヤサカは落ち着いて見極めてるから……俺がやるべき事は……!)
「スペル発動フレアフォース! ガンガン飛ばしてくぜ!」
火属性アセスを強化するフレアフォースの効果を受け赤い光を帯びたアネスが三度走り出し、それに合わせヤサカが三日月状の刃を投げ飛ばし迎え撃つ。
回避の為に急停止しアネスが横へ跳び、ヤサカも返ってくる刃を自ら動いて手に取ると再び投げつけ着地前を狙う。
「ちっ、スペル発動プロテクション!」
舌打ちしつつカラードがカードを切って薄い膜がヤサカの刃を弾き返す。その真意が連札劇の阻止であるのもすぐに察し、そこからシェダもヤサカの支援へと移り攻勢へ。
「スペル発動ウォリアーハート! 頼むぜヤサカ!」
強化スペルによりヤサカの身体能力も底上げされ、アネスに追いつくとまでは行かずとも反応できるようになり、切り返してはすれ違いざまに蹴りを叩き込んでくるアネスの蹴りを避けられるようになる。
しかし反撃するにはまだまだアネスの方が素早く、またウォリアーハートの効果も長くない事からシェダも素早い判断を迫られていく。
(あんまり考えてもいられねぇ……だが冷静でねぇとこの人には勝てねぇ、なら!)
炎のように熱い闘志とそれに反比例する冷静な判断力とを併せ持つカラードは格上なのは間違いなく、だが自分の目指すものの為には越えねばならない壁ともシェダは認識しその目に闘志を燃やす。
「スペル発動エアーブラインド!」
淀む黄色の煙が黙々とヤサカを中心に発生し、その姿を隠しながら広がり素早い攻撃を続けていたアネスの動きを止める。
やはり、と、シェダはリオとの戦いで召喚されたヘルハウンドのメタルの事を思い返し、アネスも含めカラードのアセスの傾向を見抜く。
(アセス自身の経験や判断力の高さ……それもカラードさんの実力の一つ。連札劇の特性から勢い任せに見えて、そうではない)
(へぇ、オイラのアセスの特徴ちゃんと見てるな……いいね、そうでねぇと燃えねぇよ!)
カラードもシェダが冷静に分析し次の一手を思案するのを悟り闘志にさらに火がつく。刹那、カラードの闘志に呼応するようにアネスが口から広がるように火を吐いてエアーブラインドの風に乗せ、姿を眩ませるヤサカのあぶり出しにかかる。
風は火の勢いを強めるもの。エアーブラインドを逆手にとった攻撃に対しヤサカは煙のようにアネスの背後に攻撃態勢で現れ、アネスもまた後ろ蹴りで応戦し攻撃同士のぶつかり合いが衝撃波と熱とをもって吹き荒れた。
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