天然で眼鏡な彼は、まだ恋を知らない

マエノめりー

プロローグ『恋を知らない誰かへ』

朝のホームは、いつも同じ景色だった。

誰もがスマホを見つめていて、誰もが誰にも興味がないふりをしている。


だけど。


ふと目が合ったそのとき。

電車のドアが閉まるほんの数秒前。

それまで静かだった世界が、なぜか音を立てて動き出したような気がした。


知らない顔。知らない名前。

でも、なぜか目が離せなかった。


それが何だったのかは、まだわからない。

ただ、その日から――同じ時間の電車に乗ることが、少しだけ待ち遠しくなった。


***


これは、「恋」を知らなかったふたりの物語。

名前も、気持ちも、まだ知らないまま。

ほんの少しずつ、すれ違いながら、それでも確かに近づいていく。


そんな、はじまりの話。

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