第42話 上級
やはりおれの予想通り、彼女達はここで大きな休憩を取ることにするようだった。具体的に言うと、シャワーを浴び、順番に仮眠を取るのだ。
さすがに全員で寝るようなことはなさそうなので、やはり奇襲は聖女のシャワー時である。
少し待っていると、まずは汗を流そうという話になって、聖女がシャワールームに入ってきた。
服を脱ぎ、裸になる。そして、シャワーの温度を確かめた後、頭からお湯を浴び始めた。
「それにしても不思議なダンジョンですね。なぜこのような場所があるのでしょうか?」
「分かりません。私も文献を色々調べてはみたのですが、過去こういった例はありませんでした。この壁を見るに、モルダン教に関係があるとは思うのですが」
勇者達がそんな会話をしているときだった。
聖女の背中側の、薄い壊れる壁で隠していた部分を静かに水音に紛れさせて壊し、上級ゴブリン魔道士が杖に魔力を込め始めた。
使う魔法は雷の矢の魔法である。濡れている聖女には効果的だろう。速いので避けられる心配もない。
ありったけの魔力を込めたそれが狙い通り、裸で無防備にシャワーを浴びている聖女のうなじに刺さった。
「くあ゛」
バリバリと雷が鳴り響き、聖女が鈍い声を上げ、倒れ込んで大きな音を立てた。
「何の音!?」
「聖女様!」
勇者達がすぐさま反応するが、その顔めがけてスライムが跳んだ。
魔法の発動とともに、壁上部の薄くしていた部分を破壊し、入ってきていたのだ。
さらに偽セーフティエリアの入口からミニゴーレム、ゴブリンやスライムが続々と入っていく。
ミニゴーレムは一体だけだ。もっと配置できたら良かったのだが、制限ポイント的にきつかった。
青髪の女がスライムが顔についているのも構わず、聖女の所に向かった。
聖女はシャワールームで倒れており、シャワーからは水が流れ続けていた。
青髪の女が顔にスライムをつけたまま、聖女に近寄り、その身体を揺するが返事はない。
そこへ上級ゴブリン魔道士がまた、雷の矢を放った。それは青髪の女の首の根元辺りに当たった。
スライムに顔を覆われているため、青髪の女は声にもならないうめき声を上げ、聖女の横にそのまま倒れ込んだ。
「聖女様!? ラナさん!? 大丈夫!?」
スライムを外し、ミニゴーレム達を軽く一蹴した勇者が入ってきて叫んだ。
すぐさま青髪の女の顔についていたスライムを倒し、シャワーの水がかからないように聖女と青髪の女を動かした。
そこにまた雷の矢が飛ぶが、勇者は恐るべき反射神経でそれを躱し、左肩に当たるに留まる。
勇者がその射線を避けるように聖女達を動かし、その体を揺すって声をかけた。
しかし二人とも返事はない。二人とも息をしていないようだった。
聖女の首筋に勇者がその手を当て、その後青髪の女も同様に調べる。
「なんで…」
脈がなかったのだろう。勇者が悲痛そうに呟いた。
その時、シャワールームにゴブリンが続々と入ってくる。さらに上級ゴブリン魔道士が魔法を撃った隙間からはスライムが。
そして上級ゴブリン魔道士は偽セーフティエリアの入り口の方に回ってきていた。
現在のポイント:???
まさかここまで上手くいくとは。特に青髪の女の顔にスライムが張り付けたのが良かったな。上級ゴブリン魔道士のためにもっと壁に穴を開けていたら完璧だった。いや、壊れない壁に穴を開けるのは結構ポイントを使うし、増やせばバレる可能性もある。これがベストか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます