第35話 スライム最強説

 まずは探知魔法が何を探知しているのか、知らなければならない。魔物や罠を探知しているなら仕掛けを変える必要があるし、正解ルートを探知しているなら、それに合わせて防衛を変える必要が出てくるからだ。


 1階層では正解の道を迷いなく進んでいったが、それは魔物や罠をその道にしか配置していなかったからとも考えられる。


「そことそこに罠あるから、気をつけて下さい」

 こんなことを聖女達に言っていたので、罠は探知していることが確定しているしな。


 そこで2階層で試してみたいところだが、他の冒険者が多く難しい。


 3階層も言わずもがな。


 となると、4階層だな。4階層では元々バケツ部隊の運用メインで罠も余り集中させていない。わざとバラけさせてみよう。





「ん?」

 4階層に来た勇者が言った。


「どうしました?」


「この階層は正解が分からないですね」

「そうなんですか?」


「はい。でもまあ大丈夫! 進めばいつか着きます!」


「ふふ。そうですね。でも私は正解を知っているので、そっちに行きましょうか」


「あ、そうでしたね」

 聖女の言葉に、勇者は照れたように笑った。


 なるほど。分からないか。魔物や罠を探知しているということで良いのかな?


 いや、まだ罠だけの可能性もあるか。よし、バケツ部隊の出番だ。


 バケツ部隊に壁裏に隠れさせ、不意打ちさせてみる。すると勇者はそれに気づき、言った。


「そこ曲がったところ。モンスターがいるから気をつけて下さい」


「分かりました」


 やはり魔物も探知するか。


 とりあえずバレているとは知らないバケツゴブリンが水をかけに飛び出していく。


 しかしその瞬間、勇者が間合いを詰め、剣で切り裂いた。


 めちゃくちゃ速い。ゴブリンは真っ二つだ。


 やばいな。過去最高に強い…!



 とりあえずゴブリンには勇者に直接水をかけるのは避け、勇者達が行く先の道を水で濡らすことに専念させた。


 すぐに元に戻るとはいえ、直前なら効果はあるはずだからな。


 誰もが経験したことがあるだろうが、靴が濡れるというのは中々の不快感である。


 とりあえずこうやってチマチマ嫌がらせをしていこう。


 しかし早いところ、対策を考えなければならない。


 魔物や罠を探知するわけだから、不意打ちは通用しない。となると純粋な力勝負か…?


 いや、削るぐらいはできるか。


 とにかく魔物を送り込んで、消耗させる。それしかないな。


 後はひとつ、疑問がある。


 勇者は魔物や罠を探知できるわけだが、では道は? 正解の道は分からないとしても、道の概形などは分かるのだろうか?


 もし分からないのだとしたら、勇者の探知的には、魔物と罠だけが平面上に浮かび上がるような分かりにくいもののはず。


 となると迷路も効果はあるし、壁も効果はありそうだ。


 後は……そうだ。


 探知したものは区別できるのか否か。


 例えば、スライムとゴブリンは区別できるのか。矢の罠とゴブリンの区別はつくのか。


 つかないのだとしたら、スライムを大量にダンジョン内に放つ。


 これだけで無効化できるんじゃないか…?

 



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