第34話 元気系

 残ったのはお嬢様も合わせて、9人。初めと比べると半分以下だが、一般的な冒険者パーティと比べるとまだ結構いる。


 彼女達は9階層の端っこで休んでいた。


「お嬢様。これからどうしましょうか」


 隊長がお嬢様に話しかけた。


「そうね……」


 しかしそこに、ミニゴーレム。ここは攻めどころだからな。どんどん行くぜ。


 とはいえ彼女達が休んでいたのは繋がっている通路が多い場所。するりと逃げられてしまった。


 やるな。


 彼らはもう一つ所に休んでいたら襲われると学習したのか、上の階層に向けて歩き出した。


 そんな彼らがどこか他と様子の違う、明るい偽セーフティエリアに惹かれたのは必然だったのだろう。


 まるでチョウチンアンコウの灯りに惹かれて寄ってきた魚のように、その部屋の中に入っていった。



 

 最初彼らはまたミニゴーレムが来るのではないかとかなり警戒した様子だった。


 しかしモルダン教のシンボルマークがあることや、ゴブリンやミニゴーレムが入ってこれなさそうなのを見て、おかしいとは思いつつも、やっと一息つき出した。


「とりあえずここで休みましょう」

「そうね」


 お嬢様は元気がなかった。まあ仲間が半分以上死んだからな。


「お嬢様、よければシャワーでも」

「いえ。やめておくわ」

 今はひとり呑気にシャワーを浴びる気分じゃないのだろう。残念。


「…そうですか」


「それでこれからのことについてですけど……」


「帰るしかない…でしょうね」


「ええ。しかし我々はその場合、あなたを連れて逃げるよう、旦那様から言われております」


「そんなこと…!」


「力及ばず申し訳ありません」


「いいえ。一番力がないのは私だわ」


 どうしようかな。偽セーフティエリアの決まりを破ってもいいが……


 やはり信頼かな。こいつら逃したところで特に痛くないし。


 というわけで、彼女達には特別な処置はせず、順当に帰ってもらうことにした。


 



 それから4日経った。

 また、聖女が来た。何がとは言わないが、やはりでかい。


 今度は、金髪を後ろで括った元気のありそうな女の子と、青髪長身のモデルのような美女を連れて、3人で来たようだった。


「ここがシオンさんのやられたダンジョンか。思ったより明るいね」

 金髪の女が言った。


「1階層は広間になっていて、冒険者さん達の交流の場になってるんです」


「そうなんですか」

 どうやら聖女には敬語を使うらしい。金髪の女は見たところ聖女より若そうだ。年齢的には女子高生ぐらいか? 腰に剣を着けているので前衛だな。


「お! 探知したよ。どうやらその道が正解みたいですね!」

「さすがですね。その通りです」

 探知? まさか……


「これが伝説の探知魔法…!」

 実際に行ってみて、金髪の女が言った通路が正解であると知った青髪の女が言った。探知魔法。やはり。チートじゃないか。


「さすがは勇者様です」

「まあね! 探知は任せといて!」


 金髪の女は勇者なのか。こりゃまた、凄そうなのが来たな。



 現在のポイント:3万6904


 勇者と言えば、男というイメージがあったが、今回は女らしい。そして黒髪などではなく、金髪。顔立ちもこっちの世界っぽい感じだ。異世界召喚系ではなさそうである。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る