第28話 ブラッシュアップ

 それから彼らは、「このままこのダンジョンも攻略してくれるわ!」と、意気揚々と進んできた。


 そして4階層を降りる階段の前で、休憩を取るようだった。


 おれはもちろんゴブリンを定期的に送り、削りにかかっているのだが、何しろ数が多い。


 4人が対応している間に、残りの4人がゆっくり休めるのだから、消耗はあまり期待できないかもしれない。


 しかしだ。4人が対応しているとは言っても、最低限気を張っているはずである。不意打ちとか怖いだろうしな。なら一応効果はあるか? 鍛えた軍人にはそんなこと関係ないとか言われたらお手上げだが……おれはそこら辺分からない。


 奇襲などできたら良いが…


 そうか。こういう時、スライムだけが通れるような小さい穴を開けておいて、奇襲させればいいかもしれない。スライムなら核が通れるほどの小さな隙間で通れるからな。


 いくらスライムの攻撃がほとんど通じないとは言っても、気を張るだろうし、口と鼻を覆えれば、殺せるはずだ。


 よし。下の階層には、休憩できそうなところの壁や天井に小さな穴を開けておいて、そこにスライムを入れておこう。


 タコが壺から飛び出すような感じで、奇襲できるはずだ。


 そうこうしている内に、彼らが4階層に来た。


 4階層の仕掛けはコウモリネットワークを利用した数の罠のままだ。


 彼らが中頃まで進んできた時、おれはそれを発動させた。


 ゴブリンやスライム、ミニゴーレムが一斉に突撃する。


 彼らは魔法で応戦するが、焼け石に水だ。


 そうして近づこうとしている時、2人の白装束が魔物の群れに突っ込んだ。


 そして、爆発。また自爆か。芸がないな。


 これで残り6人。


 ミニゴーレムや、後列にいたゴブリンは何体か生きていたが、続く魔法でやられてしまった。


 そうして残りの6人はほとんどの魔物を使い尽くした4階層を突破した。


 また5階層に降りる階段手前で休むようだった。


 それが彼らのルーティンなのだろうか。


 彼らは一度撤退するか話し合い始めた。


「一度撤退しましょう。人員が足りません」


「バカを言うな。ここでダンジョンを浄化せずしてどうする」


「しかし…」


 その時、天井からスライムが6匹、ポツリと落ちてきた。5匹は地面に、1匹1人の頭に着地した。


「ぅごぁ…!」


 スライムに顔を塞がれた男は、必死になって剥がそうとした。しかしスライムはほぼ液体なので、中々剥がせない。


 地面に落ちたスライムを処理した仲間が短剣を急いで取り出し、スライムの核を斬った。スライムが形を失い、地面に落ち、消える。


「はぁ、はぁ……ありがとう」

「いや」


 やはりスライムじゃ、倒すまでは行かないか。


「しかしどこから…」

「上から急に落ちてきたようだったぞ……」


 連中が上を見上げるが、特に何も見当たらない。かなり小さい穴だからな。ただでさえ凸凹している天井だ。この暗い中だと分からないだろう。


「…ここで長居するのは危険だな。先に進もう」


「隊長!」


「なんだ貴様? ダンジョンを攻略したくないのか? …おかしいな。ダンジョン攻略は聖典に記された我々の使命であるはずだが……」


「い、いえ。…私も隊長に賛成だと言おうとしたのです」


「ふむ。良いだろう。では進もうではないか。何、心配はいらん。5階層を攻略して、まだ続くようであれば、私も撤退を考えよう」


「ありがとうございます…」


 ふむ。なるほど。ひとり賢いのが混ざっているようだ。決めた。彼は最優先だ。


 撤退されたら厄介だからな。



 現在のポイント:3万3144

 こうやってスライムで色々していると、最初の頃を思い出す。あの頃は天井にわざわざ壁をつけて、その上にスライムを乗せていたのだったか。理解が足りてなかったなと思うと同時に、自身の成長を感じた。



 

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