第25話 こころ
とするとボス部屋はどういう仕掛けが良いだろうか。
まず冒険者の魔力は消耗しているわけだ。つまり彼らは節約しようとするだろう。そこに付け込めるか?
とりあえず1000ポイントをゴブリンやスライムに使い、数で消耗させる。
そこにオーク(2000)を突っ込み、そして最後にゴーレム(5000)。これで決まりだな。
残りの3000は罠や装備に注ぎ込むことにしよう。
そして大事なのが道中。
15階層までにどう消耗させるか。どう消耗させたままでボス部屋に入るように仕向けるか。
ボス部屋の前で休まれたら意味がないからな。
しかしその対策は簡単だ。
冒険者の半径25メートル外周に魔物を召喚し続ける波状攻撃を行えばいい。
剣で頑張ることで魔力を温存ということも考えられるが、その場合は体力がすっからかんになる。
後はどう消耗させるかだが。
これはもう罠や魔物に繰り返し襲わせるしかない。できるだけ休憩できないように途切れないようにする。
そのためにゴブリン生成器を4個購入した。彼らは波状攻撃要員だ。
後は冷やし罠や、矢の罠、網網の罠、天井からスライム。
これまでの罠を総動員し、油断すればやられる、と向こうが思うように配置していくだけ。
精神を削りに行くのだ。
さらに、新たな仕掛けとして、偽セーフティエリアを用意した。ここには罠はないし、魔物も入って来ない。表向きは、だが。
実際は入ることができるので油断したところをグサリ、である。
折角削ったものが回復されてしまうので、設置は6階層と、12階層のみの予定だ。そして12階層では油断したところを襲う予定なので回復される心配はない。
セーフティエリアと分かるように、壁を使って部屋っぽくして、明かりをつけて明るくしているが、上手く引っかかってくれるだろうか。
一応、魔物が前を素通りしたり、中に椅子やシャワー、トイレを設置したりするといった仕掛けをしているが……
深夜のコンビニのような安心感を感じて油断してくれないかと期待している。
また、6階層のセーフティエリアには、裏の目的として、情報収集もある。
1階層の広間が冒険者達の憩いの場になっているのだが、それが思っていた以上に情報収集に役立っている。
しかし2階層以下は冒険者達が気の休まる場所がなく、故に会話も少ない。
ならば作ってしまえば良いのだ。
という発想である。
ちなみにシャワーは300ポイントだった。出しっぱなしにして水浸し作戦ができるか? と思ったが、必ず排水溝とセットで置かなければならず、下には水が絶対に溜まらないという概念設計だった。
排水溝を何かで塞ぐというのも試してみたが、ダンジョン内の誰のものでもないモノは、15分で消えてしまう。おれのモノなのでいけるかと思ったが無理だった。おれの部屋なら大丈夫なのだがな。
同じ理由で、バケツに入った水が保たれるなら、バケツを穴に埋め込めば、水溜りが作れるかと思ったが無理だった。
まあそこら辺は概念でガッチガチということだな。
安い矢の罠が効かなかったように、1万ポイントレベルの魔物の攻撃じゃないと効かない冒険者が現れる可能性もあるが、その時は改めて、15階層に来るまでに、ミニミニドラゴンでも召喚すれば良いだろう。
これで準備は万端だ。来るなら来い!
あ、でも生成器があるから遅い方が良いな。時間はこちらの味方である。
現在のポイント:1335
そういえば天然のセーフティエリアとしては、各階層を繋ぐ階段がある。そこには罠を置くことができない。しかし魔物は入れるので、下と上からの挟み撃ちを行なうことができる。こちらとしては強い地形だ。それを分かっているのか、冒険者達も長居することは少ない。
一度階段を降りてすぐに罠を仕掛けたこともあるのだが、冒険者達もそこは警戒しているのか、普通に解除されて終わった。
他のダンジョンで痛い目に遭ったことでもあるのだろうか?
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