第23話 齎されたもの
「3階層の右奥で、異端者が現れました。協力してください」
聖女が2階層に上がり、出会った冒険者に言った。異端者か。なるほど。
「…分かりました」
話しかけられた冒険者が素直に言った。
「私は他の冒険者にも頼んでいくので、お願いします」
「分かりました」
聖女が遠くに行った後、その冒険者達がコソコソと言った。
「じゃあ行くか」
「異端審問にかけられない程度にゆっくりな」
「おれ達が異端者に勝てるわけないものな」
「違いねえ」
彼らは笑いながら、少し駆け足で走り出した。
さすが2階層で燻っている冒険者達。命を大事にしているらしい。
おれとしては、ありがたい限りだ。
そうして彼らがゆっくり現場に行くと、そこには血の跡とドンク達の死体しかなかった。
異端者達の死体は一つすらない。これはドンク達が誰も倒せなかったというわけではなく、異端者達が死体を持っていったのだ。
何か儀式でもやるんじゃないだろうかと不安である。
ちなみに異端者達は今、3階層の左奥に移動している。
タッチの差だが、もし冒険者達が間に合っていたら、冒険者達は普通に死んでいたと思われるので、彼らの判断は自分の命という観点から見ると、最適な判断だった。
ドンク達には気の毒だがな。
その後、聖女様は大量の冒険者達の集団を引き連れ、現場に向かったが、そこにはドンク達の死体もなかった。
救出が手遅れだと知った聖女は、辺りを少し探索した後、意外にも冒険者を引き連れ、帰っていった。
これには冒険者達の必死の訴えと、恐らくドンク達の犠牲を無駄にしない的な思いがあったのだと思う。
折角命を賭して、逃がしてもらったのに、またむざむざと戦いに戻るという愚策を避けたのだ。
冒険者達が頼りなかったというのも大きかったと思うが。
彼らの遠回しの訴えはかなり面白かったからな。
まあそんなこんなで聖女様が帰り、2日が経った。
その日の夕方、1階層に1人の冒険者が駆け込んできて、こんなことを言った。
「おい。 このダンジョンに浄化隊が来るらしいぞ」
その言葉に1階層の広間はシーンと静まり返った。
「それは確かな情報か…?」
ひとりの男が恐る恐る尋ねた。
「ああ。街の教会で聞いた。ギルドも撤退の準備を始めているらしい」
「マジかよ…」
「良い稼ぎ場だったのにな」
「折角ここまで来たのに…?」
「おれなんて昨日来たとこだぜ? ふざけんなよな。全く」
冒険者達が口々に言った。
ふむ。浄化隊。物騒な名前だ。冒険者達の反応からして、ダンジョンを攻略しに来るのだろう。そしてその反応的に、かなり強そうだ。
どうしよう……。
幸いなことに、あの保護派の奴らも浄化隊の話を聞きつけたからか、昨日数を増やし、あれから 5人ほど増えていた。
もはや彼らが頼みの綱だ。頼むぞ。お前ら。
なんて言ってみたが、もちろんおれにも策はある。
彼らは聖女を追い返すのみならず、素晴らしいものを
なんとあの自爆した奴ら一体一体で2000ポイントはあったのだ。それが6人だから1万2000ポイント。かなりの収入である。そこからさらに聖女の付き人が7000ポイントだった。
そして新人冒険者ちゃん達が4人で大体1万ポイント。
ヤバいな。最強になっちまうよ。
ということで、これらのポイントを使って、15階層を作り、そのボス部屋を半端じゃない強さにしようと思う。
といってもポイント制限があるので、実際は11〜15階層全体にポイントを注ぎ込む形になるだろうが。
ボスモンスターは何にしようかな。
現在のポイント:2万835
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