第21話 郷愁
おれが聖女の胸を眺めていると、その後ろから見知った顔が歩いてきているのに気づいた。
新人冒険者ちゃん御一行である。久しぶりの顔ぶれに、おれは懐かしい気持ちになった。
「私達がいた頃より、人が増えてますね」
「本当だな」
「そうなんですか」
「ええ。私達がいた頃は数組いるぐらいだったのですが」
今は5組ほど屯っていて、さらに露天商までいる。よく発展したものだ。
「皆さんダンジョンを攻略しに来てくださったのでしょう」
聖女の少し後ろを歩いていた、長身のスタイルの良い、槍を持った女が言った。
それに、聖女がしみじみと答えた。
「ありがたいことです」
「2階層からは、矢の罠にスライムがくっついてくるようになるので、気をつけて下さい」
「スライムですか?」
「はい」
新人冒険者ちゃんの案内を受けながら、聖女達が潜ってきた。彼女達は知り合いだったのだろうか。
「変わったダンジョンですね」
「そうですね」
先ほど聖女の後ろを歩いていた長身の女が聖女と話す。どうやら彼女は聖女のお付きの人らしい。
さっき1階層でゴブリンと戦っていたが、すごい強かった。
「聖女様がいると男達がよく働いてくれて、助かります」
新人冒険者ちゃんが言った。それに、金髪の男、確かドンクだったか。彼が反論しようとした。
「おいおい…」
そうすると、新人冒険者ちゃんはそれを遮るようにきっと睨んだ。
喧嘩でもしたのだろうか? 面白い。
その時、聖女が笑いながら言った。
「ふふふ。仲がよろしいんですね」
「「どこが」」
それに対して2人がハモって反論した。
なるほどな。
「ほら」
と聖女が笑った。
「シオンさんの話では3階層の入り口までは問題なく来れたと言っていました」
「となると、ここから先が難関になりそうですね」
3階層に来た彼女らがそう会話している。シオンというのはあのミディアムヘアの女だろうな。
そして何気に新人冒険者ちゃんはここまで来るのは初めてか。成長したなあ。
でもおれのダンジョンも新たな仕掛け、バケツ部隊が増えた。こちらも成長しているのだ。
「ええ。シオンさんがやられる程ですから……」
「大丈夫。シオンのためにも、頑張って攻略しましょう」
「そうですね。……すみません。聖女様」
「気にすることはありません。大丈夫です。彼女もすごい強いですから」
聖女が付き人を指して言った。やっぱり強いよなあ。あの女に匹敵するかな? 厄介だなあ。
「あ。一本道」
「どっち行きます?」
「もちろん避けていきましょう」
「ですよね」
「ええ。私達なら問題ないでしょうが、明らかな罠に飛び込むのはバカです」
結構言う。
シオンという女は迷いなく一本道を選んでいたんだがな。
それを伝えたら、どんな顔をするだろうか?
面白そうだ。
おれがそんな妄想をしていると、聖女達は壁の隅で休んでいる冒険者の集団と遭遇した。
「すみません。もしやあなたは聖女様では?」
冒険者の内ひとりが言った。聖女が代表してそれに答えた。
「ええ。そうですが何か……?」
「すごい! 奇跡だ! あの、よろしければ彼を治療してはくれませんか? 先ほど油断して罠にかかってしまって」
男はその奇跡に興奮したように言った。
「良いですよ」
冒険者の頼みを聖女が快諾し、負傷して蹲っている男に近づいた。
その時だった。
「危ない…!」
突然聖女にお付きの女が覆い被さった。
その瞬間、光と轟音。
壁に設置していたカメラが壊れ、天井に仕掛けていたカメラがかろうじて壊れずに残り、揺れていた。
現在のポイント:???
強襲!
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