第5話 怪人:ファントム


 やぁ、お嬢さん、君についてはもうなかなか調べはついている。


 濃密な過去を持っているってね。


 名前はレイラ、十歳くらの女子。


 ご両親のご冥福をおくればせながら祈らせてもらうよ。



 私の名前は『ブラウン・ティティ』、中年の、スーツが似合う紳士だ。



 君が自動書記について『文字司』に選ばれた。


 それはもう、協会を経由してだいぶ知れている。


 『文字司』の能力者は希少だ。


 記念に神里(コウリ)という聖地の林檎を君のあずけ親に贈ったところだ。


 近々届くと思う、蜜が多くて美味しい林檎だよ。


 枕元に置いておけば、魔除けと安眠効果があるのと、夜中の小腹がすいたが解消だ。


 神里という場所は、どこにあるのか秘密にされてる聖地だ。


 不気味だとか言うひともいるがね。



 ああ、そうだ、林檎の話ばかりでも怖がられてしまうかもしれないね。



 私も自動書記の能力を持っていてね・・・ファントムハンド、と言う。


 今回、協会員を代表してお嬢さんに挨拶をしようと思っている。



 挨拶がてら、紹介しておこう。


 協会のシンボルは金の久滝葉、意味合いは、『法味褒美と無事故』。


 

 内なる感覚が言葉になり、言の葉になり、それにより救われ、災難から逃れる。


 まぁ、そんな意味だ。

  


 シンボルはバッジとして具現化されていて、集まりなんかに付けていく。


 スーツの襟なり、帽子に飾ったりね。


 幹部になると、さらにそのバッジに両翼の金細工が付いている。



 意味は「自由と解放をもたらす者」。


 これは説明せずともよいか。



 うんうん、バッジの話もこれくらいでいいと思う。


 次は君が『文字司』として、どうやって活動するか、だ。



 つまり、協会員の中でも過去を書き出せない体質の代筆だ。


 ただ、それだけだ。


 君の特殊能力の効果は、スキル0。


 ゼロ、もしくはオーだ。


 君が現場に来れないのは、『無効化』の能力、文字司だからだ。


 ゼロにも、オーにもできる。


 オー、と言う響きは、どの人種圏についても「重要で重大」。


 つまり君は必要とされている、ってことだ。


 その期待に応えなければ、ゼロ。


 それは君の潜在能力と深層心理から来る『情景が「見える」能力』に由来する。



 なに、簡単なこと。


 生きていたいなら働け、ってことだ。


 君は健常者らしいから。



 そろそろ仕事はじめでもいいだろう、と言う意味だ。


 無理に頭を掴まれ下げられるようなシステムではないからね。


 それは大丈夫、保証する。


 そこらへんについては、みな繊細なひとたちばかりだ。



 ・・・さて、制裁もこれくらいにしよう。


 嫌な想いをさせたんだったら、とりあえずあやまっておこう。


 私は私の役割を行ったまで、だ。


 それから『ブラウン・ティティ』と言うのは、コードネームや別名である。




 あなたはファントムハンドなのよね?



 ああ、そうだ。



 あなたが、ファントムハンド?



 どういう意味だろう?


 単刀直入にいいたまえ。



 あなたは、協会のひとが言っていた『怪人:ファントム』本人で


 今、『ブラウン・ティティ』の自動書記を借りているんじゃないの?



 ほう・・・なるほど。


「見える」とはこのことなのか。


 大当たりだよ、お嬢さん。



 私はファントム。


 協会員たちを気に入って、守護している存在のひとつだ。



 また連絡をとることがあるのかどうかは、分からない。


 現在、ブラウン・ティティの担当でね。


 それでは失礼。




 ――

 ――――――・・・



 それから利き手がふわっと軽くなって、どっっと疲れた気がした。


 神父様に聞いたら、『ブラウン・ティティ』さんはちょとした知り合いらしい。


 それから名目上男性として活動している、心身共に女性の作家さんらしい。


 

 神父様の教会で記述したこの回は、レイラと魔法の羽根ペンが書いたと記しておく。


 それから贈られてきた来た林檎は、蜜が多くて美味しかった。

 

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