第32話 永久境界の崩壊
夜になるのを待って、陽、葵、零、そしてカイトが動き出した。月のない暗闇に黒装束に身を包み、評議会本拠地の壁際に身を寄せていた。
「奏はここから約500メートル北、中央建物の最上階に捕らえられているはずだ」カイトが小声で説明した。
「あそこだ」陽は東側の小さな扉を指さした。「結界が最も薄くなっている」
零が手をかざすと、空間が切り裂かれたように開き、結界の中へと通じる道が一瞬だけ現れた。4人は素早くその隙間をくぐり抜けた。
中庭を抜け、建物の入り口に立つ2人の守衛を零が「空間分断」で足止めする。
「5分しか持たない。急げ」
陽たち3人は素早く建物内に潜入した。5階に到達したとき、警報が鳴り響いた。
「見つかった!」
廊下の向こうから、十数人の評議会警備員が駆けてくる。
「俺が時間を稼ぐ」零は立ち止まり、両手を広げた。「お前たちは先に行け」
「でも……」
「行け! 奏を助けるんだ」
陽は一瞬迷ったが、葵の手に引かれて前に進んだ。
2人は階段を駆け上がり、最上階の大きな扉の前に立った。
葵は「記憶閲覧」の力でドアの仕掛けを解き、中に入る。
そこには驚くべき光景が広がっていた。
巨大な円形の部屋の中央に、透明なガラスのケースがあった。その中に横たわっているのは奏だった。彼女の目は閉じられ、体は青白い光に包まれていた。
「奏!」陽が叫んだ。
「来たな、高城陽」
部屋の奥から蒼月が現れた。
「30分後、『永久境界』は発動し、2つの世界は永遠に一つとなる」
陽の返事を待たず、蒼月は装置のコンソールを操作し始めた。奏を包むガラスケースが輝き、彼女の体から橙色の光が引き出され始めた。彼女は眠ったままだったが、顔が苦痛に歪んだ。
「やめて!」葵が叫び、ケースに駆け寄ったが、強い衝撃波に吹き飛ばされた。
その時、部屋の扉が勢いよく開き、血まみれの零が現れた。
「奏を解放しろ!」
零が「空間分断」を発動しようとした瞬間、蒼月は杖をかざし、彼の動きを封じた。
絶望的な状況。その時、部屋の窓ガラスが激しく砕け散った。現れたのは御影蓮と白河ミユキだった。
「間に合ったか」蓮が冷静な声で言った。
「侵食者か」蒼月の表情が初めて驚きを見せた。
ミユキは零の封鎖を解き、蓮は蒼月に攻撃を仕掛けた。部屋は戦いの場と化した。
零はミユキから受け取った特殊な手袋で奏のケースの解体を試み、陽と葵は「永久境界」の装置へと向かった。
「弱点は中心の結晶の真下にある制御盤」陽は指さした。
「設計者の記憶が残っている……起動コードの逆を入力すれば、自己崩壊するはず」葵がコンソールを操作し始めた。
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