第29話 新たな同盟

 梅雨の合間の晴れ間に恵まれた日曜日の午後、陽は自宅のリビングに葵、零、奏を招いていた。父親との邂逅から3日が経ち、彼らはこれからの行動について話し合うために集まったのだ。


 テーブルの上には父から聞いた「永久境界」計画の詳細をまとめたノートが広げられ、その周りに4人は緊張した面持ちで座っていた。

「本当の敵は『影帝』――侵食者じゃないんだよね」

 奏は陽の表情を不安げに見つめながら言った。


「ああ。父さんは評議会の腐敗に気づき、表向きは侵食者のリーダーとなることで対抗してきたんだ」

「評議会が若者から結晶を抽出して、長老たちの寿命を延ばしているなんて……私も彼らの標的だったなんて……」


「状況を整理しよう」零は言った。「『影帝』――高城さんが俺たちに協力を求めている。評議会の『永久境界』計画を阻止するためだ」

「でも、侵食者と手を組むなんて、本当に大丈夫なの?」奏は不安げに言った。


「私は侵食者と協力することに賛成よ」葵はきっぱりと言った。「あなたのお父さんの話から考えても、彼らも評議会の被害者。そして今、私たちには彼らの力が必要なの」

「俺も賛成だ」零は静かに言った。「正直、完全には信用していないが、共通の敵と戦うためなら手を組む価値はある」

「みんなが良いと思うなら……私も」奏は迷いの表情を浮かべていたが、最終的に小さく頷いた。


 陽が安堵の表情を浮かべたとき、急にインターホンが鳴った。

 モニター越しに見知らぬ男の影から現れたのは、長い白髪と髭を持つ老人――評議会の首魁、蒼月だった。


「また、会えたね」蒼月は微笑んだ。

「話があるのだが、少し時間をもらえるだろうか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る