第11話 委員会と3つの系統
影学園の中央ホール。
その一角にある「境界委員会本部」と書かれた部屋で、陽は初めての正式な会議に参加していた。
「では、候補生・高城陽を紹介する」
御堂院凛子の声が部屋に響く。
「高城くんは先日、『真実顕現』の能力に目覚めた。昨日の初任務でも、その有用性は証明された」
鷹野零が補足した。
「侵食点の性質まで見抜く高い認識力を持っている」
会議室に小さなざわめきが広がった。
「あの……」陽は遠慮がちに手を挙げた。
「境界委員会について教えていただけませんか?」
凛子は微笑んだ。
「良い質問ね。境界委員会は、影学園で最も重要な学生組織よ」
彼女はスクリーンに委員会の組織図を表示した。
「委員長である私を頂点に、副委員長が2名。その下に各部門のリーダーがいる。主な部門は『監視部』『封印部』『研究部』の3つよ」
「監視部は侵食点の発生を監視し、『封印部』はそれを封印する」鷹野零が続けた。
「『研究部』は境界理論の研究と、境界力の訓練方法の開発を担当している」
「桐生葵は監視部に所属しているわ。彼女の『記憶閲覧』能力は情報収集に適している」
「私は封印部のリーダーだ」零は淡々と言った。
「境界結晶を用いた封印技術を専門としている」
「あなたはどの部門に興味がある?」凛子が陽に尋ねた。
陽は少し考えた。
「本当は研究部に興味があります」陽は正直に答えた。
「父が研究者だったので」
「研究部は森下教授が統括している。入部を希望するなら、まずは基礎訓練を終えてからね」
凛子はさらに説明を続けた。影学園は表向き、境界評議会という上部組織の指示に従っている。評議会は長老級のメンバーで構成され、影学園全体の方針を決定している。
「あなたのお父様も、かつては評議会の研究者だったわ」
「父さんが? 評議会の人間だったんですか?」
「ええ、優秀な理論研究者としても知られていた。だからこそ、彼の失踪は大きな謎なのよ」
会議が終わると、陽は葵に案内されて研究部の施設へと向かった。そこで森下教授から基礎訓練の詳細を聞くためだ。
「境界力には3つの系統がある」教授は説明を始めた。
「顕現型、認識型、干渉型だ」
大きなスクリーンに図表が表示される。
「顕現型は境界力を物理的な効果として具現化する能力だ。例えば、鷹野くんの『空間分断』のように」
「認識型は情報収集や分析に特化した境界力だ。『記憶閲覧』や君の『真実顕現』がこれに当たる」
「干渉型は他者や環境に間接的に影響を与える能力だ。例えば、侵食者の幹部『追憶使い』は過去の記憶を操作する能力を持つ」
「境界力は持ち主の内面や心の傷から形成される。そして、精神的成長に応じて進化する」
陽は父の研究資料を探していると告げた。教授は少し考え込み、古い研究日誌を取り出した。
「これは君のお父さんが残していったものだ。研究の一部しか記録されていないが、参考になるかもしれない」
陽は感謝の言葉を述べ、研究日誌を受け取った。
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