第7話 贈り物

「もう二度と、大切なものを手放すわけにはいかない…」

——多賀


「ここはどこだ…なぜここにいるんだ…」多賀はゆっくりと目を開けたが、そこに見えたのは暗闇だった。「ここはどこだ?」多賀は心の中で疑問に思い、ゆっくりと手を上げた。注意深く自分の手を観察すると、かすかな変化を感じた…多賀は深く考えず、ゆっくりと目を上げ周囲を見渡したが、そこには暗闇しかなかった…戸惑いながら周囲を見回し、心の空虚な暗闇を見つめ、そして歩き出すことにした。ゆっくりと足を上げ、気楽に歩みを進めた…


歩いていると…突然、暗闇の中に三つの人影が現れた…その三つの人影はただそこにじっと立っていた…しかし、それぞれに異なる重苦しさを漂わせていた…多賀は戸惑いながら近づき、それから困惑した表情で三つの人影を注意深く観察した。人影の全身はぼやけていたが、それぞれ異なる模様と色をしていた。


多賀は何度も何度も彼らの周りをぐるりと回った。最初から最後まで、彼らは微動だにしなかった。腕を組んで、ただそこに佇んでいた。それぞれが醸し出す圧迫感が異なっていた。真ん中の者は金色、左の者は青、右の者は赤だった。金色の者からは、力強さはあるものの、激しさは控えめで、それでいて人を安らぎを感じさせる、柔らかな力が漂っていた。金色の者の隣には、赤い者もいた。赤い者からは、極めて強大な生身の力が漂っていたが、その力によってもたらされる圧迫感はあまりにも強く、制御するのが難しいようだった。一方、青い者からは、特に強い力が漂っていた。それは、まるで人のために誂えられたかのような、激しくも力強い力だった。


多賀は好奇心に満ちた目で、彼らをじっと見つめていた。突然、多賀の耳から声が聞こえてきた。「力が欲しいのか…私は感じる…力が欲しいのだ!」その声は、まるで多賀を導くかのように、豊かさに満ちていた。多賀は困惑して頭を掻いた…それからゆっくりと手のひらを上げ、三人の影の間を円を描くように撫でた…突然、誰かが多賀の腕を掴んだようだった。多賀は腕を制御できなくなった。「力を求めるなら…私を選べ!至高の力を授けよう!」その時、青い影はゆっくりと腕を広げた。まるで多賀の胸を抱きしめるように、そして両手を広げるように。まるで歓迎するかのように。青い影の声が多賀の耳元で鳴り響き、多賀の心は過去の記憶を巡り始めた…幼い頃、溶岩で家族が死ぬのを見届けたこと…ティナと出会ったこと…あの頃は彼にとって最も幸せな時間だった…しかし、戦争が始まるまでは…最後に大切にしていた人までもが死んだ…これら全ては彼の無能さのせいだった…力がなかったから…弱さのせいで全てを止められなかった…もし彼らがもっと強ければ…もし彼らがもっと強ければ…彼らは死ななかっただろう…こんなに苦しまなかっただろう…


「私は…力が必要だ!!!」その時、多賀は胸が張り裂けるような叫び声を上げた! まるで制御不能になったかのように、彼の腕は青い影を掴んだ。「お前に力を…」 青い影はゆっくりとそう言うと、ゆっくりと指を上げ、多賀の額を軽く叩いた。その時、青い影から青い力が出現し、指を通して多賀の体にゆっくりと流れ込んだ! そのエネルギーは瞬時に多賀の体の隅々まで浸透した。その時、多賀の目は異様な青色に染まった。多賀は胸を覆い…片膝をついた… 強大な力が体の隅々まで流れ込むのを感じた。その力は多賀の魂を揺さぶったようだった。元々薄暗かった多賀の魂は、この巨大な力の注入によってゆっくりと青く染まっていく! 多賀はゆっくりと立ち上がった… その時、多賀の体から雷の力が溢れ出した。腕、目、胸、そして足元まで。雷は小さな蛇のように多賀の周りを漂っていた。多賀はゆっくりと腕を上げ、自分の体に宿る無限の力を見つめた。長きにわたり体内に蓄積された怨念が、一瞬にして無限の力へと変貌した。タガはゆっくりと頭を上げ、咆哮を上げた。その瞬間、怨念が溢れ出した。それまでの痛み、無力感、無力感、怒り、そして不本意。全てが、タガが力を得たこの瞬間に溢れ出した。


あらゆる負の感情を吐き出し、タガはゆっくりと頭を下げた。目から涙が溢れ…ため息をついた…ついに、守りたいもの全てを守れる力を手に入れたのだ。頭を上げて三人の姿を見ようとしたその時、彼らは姿を消した…タガは混乱して頭を掻いたが、心の中では感謝せずにはいられなかった。


「タガ!タガ!」突然、タガの耳に声が響いた。タガはゆっくりと目を開けた…しかし、目に飛び込んできたのはベインだった。「眠るな、タガ!これ以上眠ったら、お前は屍になるぞ!」ベインはタガの顔を優しく撫で、どうしようもない表情を浮かべた。タガが不思議に思っていると、ふと三人の姿を思い出し、ベッドから起き上がった。腕を上げて手のひらに力を込めようとしたが…何も起こらなかった…


「どうしたんだ?バカか?」ベインは、タガの尋常ではない困惑した様子を見て、どうしようもなく言った。「大丈夫…」タガは手を振り、額を押さえた…「今何時だ?」タガは目を閉じてベインに尋ねた…「もうすぐお昼だよ。まだ起きてないみたいだから呼びに来たんだ」ベインは腰に手を当て、タガを見た。


「早く起きろ!村長が何か頼んでるんだ!」ベインは相変わらず元気いっぱいで、その声はタガをなぜか元気づけた。「わかった…後で洗うよ」タガはどうしようもなく首を振った。ベインはタガの返事を見て、くるりと振り返り、タガの屋敷を出て行った。タガはベインを見て、心の中で言った。「じゃあ…これは全部夢か…忘れろ…心の慰めにしよう!」タガは元気よくそう言うと、深呼吸をして立ち上がり、食器を洗った。過去に囚われるよりは、今この瞬間を楽しむ方がましだと思った。


食器を洗い終えると、タガがドアを開けると、まぶしくも温かい日差しがタガの体を包み込んだ。暖かい日差しにタガは深呼吸をし、しっとりとした新鮮な空気が鼻腔をくすぐった。周囲の楽しげな空気に目をやり、微笑み、そして、これもまた良いものだと、ふと感じた。


「タガ!こっちへ来い!」ベインはすぐそばに立ち、腕を振りながらタガを呼んだ。「行くぞ!」タガはゆっくりと走り出した…しかし、二人は二組の目が自分たちを見守っていることを知らなかった。その時、暗闇の中でザーグの兵士がタガたちを睨みつけていた…そして、もう一つの目が彼らを見つめていた…


ザーグの兵士はしばらく監視した後、一歩下がり、踵を返して巣へと舞い戻った。その時、玉座に座っていたビートルキングは顎を押さえ、兵士たちが知らせを持ってくるのを待っていた。突然、扉がノックされ、監視に向かったザーグの兵士が巣へと飛び込んできた。兵士は片膝をつき、ザーグにしか理解できない言語で話した。まるで自分が見たすべてを王に告げているかのように。ビートルキングは玉座の取っ手を激しく殴りつけ、その顔には明らかに怒りが浮かんでいた。彼はザーグ語で、まるで「この忌々しいエイリアンどもめ!最愛の息子を殺したくせに、喋り笑い続けていたのか!」とでも言いたげに言った。すると甲虫王は立ち上がり、鋭い口を動かしながら、まるで「宣言する!明後日、異星人との全面戦争を開始する!奴らを殲滅しなければ、この大陸で最強の存在にはなれない!」とでも言いたげに言った。すると甲虫王はゆっくりと手を挙げ、召使いが即座に水晶のような球体を差し出した。甲虫王は鋭い爪でその水晶を拾い上げ、ゆっくりと口の中に放り込んだ。すると突然、甲虫王の体から力が噴き出した!その時、人影がゆっくりと巣を出ていった…


夜だった…

見慣れた人影が玉座に座り、赤ワインの入ったワイングラスをいじっていた… 「この人間たちは本当に不思議な味がする…ただの果物で作ったワインなのに…まるで感情がないみたいだ…」 声を発したのは、我らが歪んだ存在だった。彼はゆっくりとワイングラスを持ち上げ、一口飲んだ。そしてテーブルに置き、ゆっくりと頭を上げて空を見上げた。


「あんなに美しい月明かりが見えるなんて、本当に羨ましい…なのに、この忌々しい虚無の中に閉じ込められなければならないなんて…」ディストーションは冷たく無感情な口調でそう言うと、ドアがノックされた。ディストーションがテーブルを軽く叩くと、ドアが開いた…ザーグの巣の外に人影がいた。その人影は地面に片膝をつき、こう言った。「皇帝陛下…有益な情報を集めました…」人影は敬意を込めた口調で言った。「お話しください…」ディストーションは冷たく、しかし同時に威厳も漂わせていた。まるで相手に自分が見た情報をすべて話させ、もし何かを隠したら、たとえ絶対的な忠誠心を持っていたとしても殺すかのような。 「ああ…監視下で、デスティニーマンが影の中から現れたようだ…以前とは様子が少し違っていたようだ…そしてザーグキングは種族の力を増強するクリスタルを持っているようだ…」兵士が見たもの全てを話すと、ディストーションは手を振って相手に退出を促した。兵士は頷き、ゆっくりと後退した。


「デスティニーマン…デスティニーマン…君は本当に速い…古代の神々の力を理解するにはまだ時間がかかると思っていた…やはり君を甘く見ていた…」ディストーションはゆっくりと玉座から立ち上がり、窓へと歩みを進め、大陸全体を見渡した。「だが、力を得たことで全てを変えられると思っているのか?心配するな…もう一度味わわせてやる…『奈落に落ちる恐怖』を…ハハハハ!ハハハハ!」その時、ディストーションの声は冷淡なものから狂気へとゆっくりと変化した。彼は狂ったように笑った...その笑いは宇宙全体を侵食した...

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