夜の散歩した日記
サンカラメリべ
夜の散歩した日記
夜、眠れなくて散歩をする。もう日付は跨いでいたが、大学生になってからというもの時計の針が0時を超えることも珍しくなく、今の自分は幼少の頃に恐れていた丑三つ時にアニメを観ていたりすることも多くなったものだから、それほど気にせずに外に出た。
こういう時、男で生まれてよかったなと思う。女性だったなら危ないやら何やら言われて面倒くさいし、実際、わりと近くでストーカーが逮捕される事件があった。被害者は十代の女子大生で、容疑者は40代のおじさん。バイト先が同じだったらしい。ただ付け回す程度じゃ逮捕されることはそうそうないので、よほどの物理的な迷惑行為に及んだのだろう。
真夜中の道路は、意外にも明るい。都市圏に近いからだろうか。道路わきには街灯が規則正しく並び、昼間ほどではないがある程度の見渡しがきく。ネットで、ホラー作家は悪趣味か性格悪いかのどちらかだ、という呟きを見かけた。こんなにも明るいと人を怖がらせるには街灯を壊さなきゃならないように思う。確かに、わざわざそうした『工夫』を凝らすのは趣味が悪そうだ。
自分以外にも深夜に散歩をしている人はいる。それはどこかで飲んだ帰りとかではなく、普通に歩いている。挨拶を交わすことはない。見かけるのは私と同じ大学生っぽい若い人が多いが、タンクトップ姿のおじさんのこともある。「なぜこの時間に?」というのはきっと互いが抱く疑問であり、同時にその答えは自分自身が握っている。つまるところ、同類である。
ややあって、お地蔵さんの前を通る。誰もがふとしたとき街中にお地蔵さんや小さな祠のようなものが歩道の傍にひっそりと佇んでいることに気が付いてぎょっとした経験があるように思うが、この辺りの地域は更に特殊で、どのお地蔵さんも祠も道路に背を向けて置かれている。気になってその理由を調べたことがあったけれども、道路工事の事情で、とかその程度のことしか書かれておらず、ひょっとすれば偶然そうなったのかもしれない。とはいえ、偶然によってお地蔵さんが道路に背を向けるような区域が生まれたのだとしたら、そこに何かしらの意図を直感してしまうのが人間だ。道路ではなく住宅の方を向いていることから、より家庭や生活を重視している可能性もある。
なんだかんだで高架橋付近にまで来てしまい、そこから道を引き返す。途中のコンビニでアイスを買う。ソフトクリーム型のアイスで、それなりに大きい。これの先端から齧り付くように食べるのが美味い。と、そこで、慌ててコンビニに駆け込んでくる男性二人組がいた。まるで逃げてきたような。しきりに何かを呟いていたが、よく聞き取れなかった。というのも、彼らはさっさとトイレの方に行ってしまったからだ。男性二人で同じトイレに入っていくのも妙な感じだったが、あまり深く考えないことにした。あとは道中、幾つかあるお地蔵さんのうちの一体がなぜか道路の方を向いていたのが不思議だったが、次の日には直っていたのであの男性二人がいたずらでもしたのだろうと思う。
夜の散歩した日記 サンカラメリべ @nyankotamukiti
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