第50話 逃避行。
フィオナたちの追撃をふりきった俺とルルは、森の関所を越え、イザベラから受け取った矢文を頼りに北へとむかっていた。
北限へ……。
おそらく、フライハイ連合国家の最も北に位置する『北の港』のことを差しているのだろう。かの辺境地なら、流石に追手もこないはずだ。が、裏を返せば『北の港』への道のりは、それだけ過酷であると言うことだ。
俺は周囲を見渡す。木々が色づき、冬の足音が刻々と近づいている。北限はすでに冬を迎えているハズだ。しっかりと旅支度を整えないと、のたれ死んでしまう。
森の関所を越えて歩き続けることまる3日。俺たちは、ウエステッドの北東に位置する、高原の国『ハイランド』にたどり着いた。
『北の港』にたどり着くには、ここからさらに峠を3つ越えなければならない。
旅の資金を得るため、止むを得ず、結婚を契機にルルたちに贈った白金の指輪を質に流すことにする。
「すまないなルル。ウエステッドに戻ったら、また作ってやるから」
「構わないの。それより、ゲオルクおじさまには、ルルの飛び膝蹴りを食らってもケロッとしている、フィオナをぶちのめすことができる武器を作って欲しいの」
「おいおい、ずいぶんと物騒なことを言うな……」
まあ、指輪を作るにしても武器を錬成するにしても、安定した高温を維持できる魔晄炉がないことには鉱物を溶かすことができない。ウエステッドに戻るまでルルには我慢してもらう必要がありそうだ。
俺たちは安宿をとると、湯船につかり軽い食事をすませて横になる。
安宿のベッドは、藁をしきつめただけな簡素なものだった。とはいえ、防寒具も持たずに、ルルと肌を寄せ合って野宿をつづけた日々にくらべると、はるかに人間味があふれている。
「ゲオルクおじさま、そっち、いっていい?」
ルルが、寝ている俺に擦り寄ってくる。
「えへへ♪ ゲオルクおじさまをひとりじめなの。こんなのローゼンクロイツのお屋敷では考えられなかったの」
ルルは、俺の胸に顔を押し付けて、話をつづける。
「ルルは、ずっとずっと、ゲオルクおじさまをベッドの中で独り占めにしたかったの。せっかく願いが叶ったのに……なんだか寂しいの。やっぱり、ミエルやフィオナやイザベラと一緒じゃなきゃ寂しいの」
「……………………………………」
泣いているのだろうか、小刻みに震えているルルの頭を、俺は、無言でなでつづけた。
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