【成長】すごい人たちがいる場所にいるだけで、レベルアップする話

晋子(しんこ)@思想家・哲学者

すごい人たちのいる場所の空気を長くたくさん吸おう!

人は「場の空気」から上達する


音楽を上達させたいなら、コンクールを聴きに行って、最初から最後まで会場に居ると良い。


もちろん出場するのも素晴らしい。でも、ただ「観に行く」だけでも得られるものはとても大きい。そこに集まっているのは、皆「上手い人たち」だ。その空気の中に身を置くだけで、自分の意識も自然と引き上げられる。自分の実力が急に上がったような、でもそれは錯覚ではなく、本当に何かが変わった実感がある。これは不思議な現象だけど、多くの人が体験している。


私は昔、音大受験の直前に有名な声楽コンクール(日本音楽コンクールや日伊声楽コンコルソなど)の本選を聴きに行った。特別な練習をしたわけではなかったけれど、その翌週から明らかに自分の音が変わった。音の説得力、歌い方の構成、表現の方向性。それらが、見て学んだというより、まるごと身体に取り込まれたような感覚だった。


人は、「見て学ぶ」よりも「感じて学ぶ」力の方が強い。これは音楽だけではなく、他の分野でもまったく同じことが言える。


たとえば、ビジネスの世界。成果を出している人たちのオフィスやミーティングに同席するだけで、「この人たちはこういう速度感で、こういう判断基準で仕事をしているのか」ということが自然と伝わってくる。何を話しているかだけじゃない。目の動き、沈黙の意味、間の取り方、会話の温度、全てが“空気”として伝わる。そういう空気に触れれば、自分もそこに合わせようと無意識が動き出す。だから何もしなくても、変わってしまうのだ。


「すごい人の近くにいると、レベルアップする」


これは単なる精神論ではない。科学的にも「ミラーニューロン」と呼ばれる脳の仕組みがあり、人は目の前にいる人間の行動や感情を、自分の中に“映す”ようにして感じ取る機能を持っている。他人のすごさは、目に見えないまま、自分に影響しているのだ。


だから大切なのは、「どこに行くか」「誰の近くにいるか」だ。


レベルの高い人たちが集まる場所に、自分も混ざってしまう。無理して話さなくても、何も行動しなくてもいい。ただそこに“いる”だけで、自分の中の基準が変わる。空気が自分を変えてくれる。呼吸をしているだけで、その場のエネルギーが自分の中に入ってくる。


反対に、自分よりレベルの低い人たちの中に長く居続けると、安心感はあるけれど、成長は止まる。自分が一番になれる場所では、人はもう上を目指そうとはしない。居心地の良さが成長を止めてしまう。だからあえて、自分が一番下になる場所に行く方が、長期的には伸びる。


これは学問でも、芸術でも、スポーツでも、すべてに共通する原理だ。


「できる人」「すごい人」のそばに行く。それだけで、人は変われる。自分が何者であるか、何ができるかではなく、まずは“どこにいるか”が大事なのだ。


努力とは、自分ひとりで机に向かってがんばることだけではない。成長とは、ノートやテキストの中にだけあるのではない。世界には、“空気から学ぶ”という成長の形が確かに存在している。そしてそれは、多くの場合、「自分にはまだ早い」と感じる場にこそ、隠れている。


だから、自分より上手い人、賢い人、すごい人の中に、臆せず飛び込もう。


怖くてもいい、居場所がないと感じてもいい、でもその場に居続けるうちに、確実に何かが変わる。自分の意識が変わる。基準が変わる。その「変化」こそが、人を本当の意味で成長させる。


自分の能力に自信がないときこそ、自分の能力ではなく「場の力」を借りてみよう。


成長は、空気からでも始められるのだから。


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