第6話 人間の力

「あの、私をこの洞窟まで運んでくれたのはあなたなのでしょうか。」


「......そうだ。 だが助けたわけではない。そなたの体が力を欲していたように見えたから生かしてやっただけ。 もし気が変わって帰りたくなったのなら、そのときはわれがそなたを殺す。」


 その機械族の男は見た目によらず意外に口数の多い男だった。だが常にこちらをにらんでいるような威圧感を感じるが根はいい人そうだ。




 狭い洞窟を少し歩いていると、そこには開けた円形の場所があり、周りには大きな鍾乳石がびっしりと並んでいた。


「今からお前に、機械族の力を教えてやろう。」


 そう言うとその男は広い場所の中央にたち、構える。


「機械拳!!!」


 男がそういうと、私は急にしゃがみこんでしまった。


「.....どうして足が? それに震えている。」


 すると、頭が体に少し遅れ、この男に対する恐怖心が私を襲い掛かってきた。


 このとき、私は気づいた。私は彼に魔法をかけられたりしたわけではない。



 彼の闘気にやられてしまったのだ。彼の放った闘気が私の頭を刺激するよりも先に、私の本能が先に彼の闘気に反応していた。


 すると彼はその禍々しい闘気を少しだけ抑え、私に近寄る。


「これが機械族の力の所以。 そなたもこの力をすでに経験しているだろう。」


 すると私の脳裏に記憶がよみがえってきた。


 あの機械仕掛けの城でも同じ、禍々しい闘気を感じた。機械城のしもべのカッキー、そして機械族の王、ティークから。


「実は、機械族はみなナメクジのような柔らかい皮膚の種族だ。 だからわれらは技術力で硬い鉄の鎧で身を守っている。 だが機械族のもう一つの守る方法として闘気をつかった身の守り方がある。 闘気を身に纏って敵を威嚇、さらには攻撃にも使用することができる。」


「なぜ機械族の戦い方を私に?」


「多分人間の特性なのだろう。 すべての能力が中途半端な人間種だが、逆にすべての能力を持っている人間種は、エルフ族特有の魔力。 機械族特有の闘気をも持ち合わせている。 つまり、人間は種族特有の力を複数個使える種族なのだ。」


 そのとき、私は気づいた。私たち人間種は、自分たちのポテンシャルをただ弱いと決めつけ、それで戦うことを放棄していた。


「その力を、教えてくれますか。」


「よかろう。そなたがさらなる力を望むのならば、われは応えるだけ。」


 私は彼のように力を欲し、そして誉を捨てないように、彼のもとで闘気を鍛えることを決めた。


 まずは初歩的な訓練として、単純な闘気の放出を学んだ。だが、私は無意識に闘気を戦闘の中で使っていたらしく、微量ながらも闘気の放出はできていたらしい。


 他にも、闘気を全身に張り巡らせたり、逆に一部に集中させることによる驚異的な硬さの出し方なども学んだ。


 私は彼から休まずずっと稽古に励んでいた。




 すると気づかぬうちに、日は1週間ほどすぎていた。

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