ゴリラ系男子は妖精系女子に恋をする
陽麻
第1話 雪の妖精
入学式の日だった。
俺の隣にいたその子は、雪のように白い肌に健康的な朱色が頬と唇を彩っている横顔で、クラスわけの掲示板をみていた。おれは、一年二組に名前が記載されているが、その子はまだ自分の名前がみつからないようだ。
自然に俺はその子に声をかけていた。
「組分け、名前探すのてつだおうか」
その子は少し逡巡したあと、にこりと笑った。
「ありがとう。わたし、空野雪っていうの」
空野雪……名は体を表すとはよくいったものだ。
まさに彼女は空からふってきた雪の妖精のような、可憐で可愛い女の子だった。
「空野さんね、って、二組じゃないか?」
俺は彼女の名前をすぐにみつけた。なぜなら、俺の名前の少し上に記載されていたからだ。
「同じクラスだよ、俺たち」
「そうなの? 偶然だね!」
彼女が笑うと周りが明るくなる雰囲気がした。
ふわりと明るくてあたたかくて、こっちまで幸せになるような笑顔で。
その瞬間、俺は恋に落ちたんだ。
「あなたの名前はなんていうの?」
と、空野さんが俺に名前をきいたとき、
「ようゴリラッち! また同じクラスになったな!」
わりとイケメン部類にはいりそうな整ったかんばせの角田たかしが俺の肩に手をまわしてきた。いい雰囲気をぶち壊されて俺はたかしの襟首をとってポイとよこにおく。目は空野さんをみたまま。
「ご、ゴリラじゃないから。俺は……」
「ゴリラッち、痛てえじゃねーか!」
たかしが顔をしかめて俺をにらみつけるが、俺もヤツをにらみつけた。
い・ま! 一・番! 重・要・な・と・こ!!
無言の眼力でヤツを黙らせ、息を整えて空野さんの方へ優しい目を向ける。
「俺は、」
「ゴリラ……さんなの? どういう漢字を書くの?」
真顔で言われた。空野さんは天然か。
そこもまた可愛くていいが。
気を取り直して。
「いや違うよ。俺は
俺は精いっぱい爽やかに空野雪さんに笑顔を振りまいた。
十五歳にして身長180センチ、筋トレが趣味な俺は胸筋、二の腕、足の筋肉パンパン。
さらに顔にまで筋肉がついてそうなゴツイ顔に、真っ黒いゲジマユ。鷲鼻も手伝って、中学のころについたあだ名がゴリラッちだった。
中坊からのあだ名なので幼稚なあだ名だが、たかしは小学校のときからの幼馴染だから、禁忌のあだ名でもそう呼んでくる。高校生になったんだから、もうやめてほしい。今度そう言おう。
花の高校生活は、初日から空野雪さんという少女への初恋に目覚めて始まったんだ。
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