【現在改稿を超えて改稿中】いつからだろうか?僕が姉さまたちに囚われたのは

白染 虚

プロローグ

ーヴァイス邸ー


 山膚やまはだ一面にあいの花が咲き乱れる、シュヴァルツ山の麓に堂々と建てられた貴族邸宅、ヴァイス邸。


 その一角、窓から月光げっこうが差し込み、華やかな調度品がほどよく照らされ美しく見える一室で、**フィン**は虚無感を感じていた。


 フィンは、数ヶ月前にとある孤児院から引き取られてこの家にきた。当時のフィンは心躍らせた。お世辞にも綺麗とは言えないような孤児院から、正真正銘しょうしんしょうめいの貴族の家に行けるのだ。フィンにとっては、たいそうなことであった。


 だが、実際はどうであろうか。フィンの養父母ようふぼは貴族の形式上、男児を求めていた。そこにちまたで神童と噂されているフィンの名を聞いた。そして、フィンを孤児院から引き取り養子にした。つまり、フィンに対して愛情などこれっぽっちもない。


 養父母はフィンのことを、そこにいるのにいないように扱う。養父母からしたら些細ささいなことなのかもしれない。けれども、フィンにはじわじわと”心の空白はくし”をつくっていった。


 フィンにも救いはあった。それは2人の義姉ぎしの存在である。**ソフィア**と**エマ**だ。彼女たちだけは、フィンに愛を与えた。フィンに貴族を教え、共に遊び、寄り添い、導いた。


 フィンは彼女たちの存在に溺れていった。自ら飛び込んだとも気がつかないで。

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