第2話『戦いの果て、異世界の地平へ』
〖真雲の視点〗
視界が真っ暗だ。
音も風も消えて、静けさがどこまでも続いている。
足が地につかない。
手を動かしても何の手応えもない。
え、もしかして俺、浮いてる?
無重力ってこんな感じなのか?
不思議と恐怖という感情は、湧き上がってこなかった。
どちらかというと、この状況に対する困惑が頭の中を占めている。
と、次の瞬間——。
な!?
え、ちょっ!?
ズダァァァンッ!!!!
「………………」
背中から叩き付けられた衝撃は、大したことではなかった。
だが、それよりも驚いたのは、着地の感触だった。
妙に地面が柔らかい。
アスファルトじゃない。
「俺……廃工場にいたはずだよな」
空だ。
空が見える。
真っ青だ。
しばらくぼうっとしながら、自分の身に何が起きたのかを考える。
ガバッ
果てしない大草原が広がっていた。
え、なんで草原?
爆発で飛ばされた?
いや近くに、こんな場所なかったぞ。
「マジでどこだよ、ここ」
小さく呟き、ぐるっと360度見渡す。
地平線の彼方まで草が揺れ、遠くの丘以外に目立つモノはない。
空には雲一つなく、太陽がほぼ真上に位置している。
時間帯は昼間、恐らく正午前後だろう。
風の流れや草の匂いから、人工的な臭気は感じられない。
「圏外………」
案の定、電波はゼロ。
位置情報アプリも『読み込みエラー』と表示されている。
スーツにGPSセンサーでも付いてりゃ楽だったんだがなぁ。
というかあの光、何だったんだ?
組織が仕掛けた罠とか?
考えを巡らせながら、空を仰ぐ。
その直後——。
「……は?」
グゲウゴオオオォォッ!!
大気を震わせ、丘を覆うほどの巨大な影が、上空を滑るように横切った。
「!?」
思わず、身体が硬直する。
「な……な………な」
視界いっぱいに広がる大翼。
荒々しい牙と黄色に輝く目。
生きてきてこれまで見たこともない、鮮やかな赤鱗。
尾が空を切るたび、風が
その全てが、地上から目視できた。
怪人の比じゃない、あの圧倒的な
……俺は今、夢を見てるのか?
ドラゴンは悠然と旋回を終えると、遠くへ消えていった。
風は止み、草原に再び静けさが戻るが、心臓の鼓動は鳴り止まない。
「………………」
プヨンッ
足元に何か柔らかいものが当たる。
「あ?」
見下ろすと、ゼリーのような物体が繰り返し体当たりしてくるのが分かった。
その様子をじーっと観察する。
これ、スライムってヤツだよな。
青じゃなくて、鋼みたいな色してるけど。
「うーん」
どうやら夢じゃないらしい。
もしかして俺、RPGの世界に迷い込んだ?
そんなことある?
いやでも現に……。
またスライムが足にぶつかってきた。
ちょっと
脚で軽く小突く。
特に抵抗するわけでもなく、素直に転がっていった。
……とりあえず適当に進んでみるか。
「って、おい、ついてくんなよ!絡むなって、邪魔だ!」
今度は、勢いよく足元にくっついてきて離れない。
どうやら俺のことを気に入ったようだ。
無邪気に跳ねて、子犬のようにはしゃいでる。
「くそっ、かわいいな」
『ほへ?』と、スライムがキョトンとした様子でこっちの反応を
「……勝手にしろ」
べ、別に、愛くるしさに負けたわけじゃないんだからな?
現地調査のためだ!
そう自分に言い聞かせる。
再び歩き出すと、嬉しそうについてきた。
「ったく……」
草原の先を見据える。
地平線はまだ果てしなく遠い。
どこか新しい物語の始まりを予感させる中、一歩、また一歩と進んでいく。
「ドラゴンにスライム、さて、次は何が出てくるんだ?」
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