落ち着いても結果は同じ。

――system message――

 神剣PVに新たな力が注がれました。

 刀身が0.23ミリ伸びました。

 攻撃力0.23あがりました。

 小数点以下の切り下げをじっ……


「まてまてまて! いったん落ち着こ! チルチル!」


 ――system message――

 どうかされましたか?


「一回足そ! それ! なんだっけ? 閲覧数? 一回足そ?」


 ――system message――

 足すとは?


「前回0.28だろ? 今回0.23じゃん?」


 ――system message――

 はい。 まさか足すとは……


「そう! 足して0.51! このままじゃどうにもならなくない?」


 ――system message――

 まぁ、仕方ありません。 物語上、何回も同じでは飽きてしまうかもしれませんね。


「物語? 俺、読まれてるの? 誰に?!」


 ――system message――

 では……改めて。


 神剣PVに新たな力が注がれました。

 刀身が0.51ミリ伸びました。

 攻撃力0.51あがりました。

 切り上げを実施しました。


「おぉぉお! 切り上げ!! そんな優しさが!!」


 ――system message――

 刀身が1ミリになりました。

 攻撃力が1になりました。


「うぉおお!! 帰ってきた! 俺の刃が! 全てを切り裂く俺の刃が!!」


「って1ミリじゃどうしようもなくない?」


 ――system message――

 はい、どうしようもありません。


「そうか、おまえもあのじじぃ側だな!」


 ――system message――

 そこにお気付きになられるとは……するどい!


「テメエらの血は何色してんだぁああああ!! あ、まって、スラちゃん! 落ちつい……ガボガボ」



「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない。」

「情けなくてすまんな。 でもおまえは凄く楽しそうだな。」

 半笑いでいつもの台詞を宣うおっさん。

 今回はサングラスで目元を隠しているが口元のニヤけっぷりであいつの表情は丸わかりだ。


 ん?

なんか手招きしてる。 なんだ?


「星がデカい!!」

「うむ。 10回記念であるし、回数は見た目でもわかりやすいように10個目は大きくしてやったのだ。」

「うわぁ、嬉しいわ。 自分の中の殺意もどんどん大きくなっていくわ。」


「そうそう、今回の分の金平糖と……」

 3つ、金平糖を手渡しされる。

「ブックマークの……」

 なんだ? この緑のやつ。 いや、当然見たことはあるけど……

「バランじゃ。」

「やっばりかよ!!」


 ――system message――

 説明しよう! バランとはお弁当のくぎりに使われる緑のアレである!

 ブックマークの形に似せるため、わざわざ加工して山の度に切り取ってあるのさ!


 コイツら、殺意しかわかねぇ……

 どうしたらいいんだよ! クソ!


「どうしたらも何も、貴様が面白ければ読者も増えよう? さすればこの地獄からも抜け出せよう!」

「おまえ、今、はっきりと地獄っつったな! お互いが初めて共通の認識を持てて俺は最高に幸せだよ!」

「んでは、今回も頑張るんじゃな。」

 いつかそのサムズアップの親指をへし折ってやるからな!


 おっさんはサムズアップの指を、一度自分の首を掻っ切るモーションを入れてから、さらに下に向け、いつもの赤いボタンを押す。


 あぁ、いつか俺もおまえをぶっ殺してやるからな!!

 

「覚えてろよぉぉおおおおおお〜〜〜」


 ここは異世界だ。

 いつもの森にいつものスライム。

「よう、スラリン。 今日も殺る気とは裏腹にやる気のない目だな!」

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