転生ボーナスで異世界の宝くじ貰ったら一等当たったので、レベルとステータスをカンストさせて世界征服始めます

甘々エクレア

第1話 転生したら超億万長者へ

 「おばちゃん!夏休みジャンボ30枚!」


 肌を直接焼き焦がすような直射日光が、雲ひとつない青空から降り注ぐ。

 行きつけのスーパーの敷地内に併設された宝くじ売り場に、俺は開店直後に走り込んだ。


 「ありがとねぇ。30枚で9000円だよ」

 「それじゃあコレで!」


 財布から勢いよくお札を引き抜き、叩きつけるようにお金を支払う。

 「毎度毎度威勢よく買ってくれるけど、一度でも当たった試しはあるのかい?」

 「うっ……それ、店員さんに一番言われたくないセリフだよおばちゃん……」

 「はぁ〜、まぁアンタが換金しに来た事ないから知ってるけどね」

 「なら聞かないでよぉ…」

 「はははっ、冗談さ。はい夏休みジャンボ30枚と、お釣りだよ」

 「ありがとおばちゃん!」


 「幸運を…」


 購入した宝くじを財布に忍ばせ、欲しかったおもちゃを買ってもらった子供のように、ワクワクと胸を高鳴らせ帰路につく。

 俺は◯◯ ◯◯◯、歳は30にして未婚の童貞。仕事は先程の宝くじ売り場の敷地内にあるスーパーの品出し、いわゆるフリーターである。

 親元を離れて1人暮らしで、友人は無くたいした趣味も無い。


 が、唯一の楽しみが宝くじを買う事。

 

 「ダメか…」

 数日経った宝くじの当選日、当たりは一等5億円。スマホで宝くじサイトにアクセスして上から下まで当選番号と睨み合った結果、何度折り返し確認しても当選の気配は無い。

 「まっ、これしきの購入枚数で当たるわけないよな…」

 

 くしゃくしゃに紙を丸めると、勢いよくゴミ箱に投げ捨てた。

 「一等7億当たれば、人生変わるんだ…こんな退屈な人生じゃなくて、俺にも…」

 

 子供の頃から夢見てた。親が定期的に購入する宝くじに、人生が変わる大金を手にした自分を毎日想像していた。

 流行りのゲームやおもちゃを買って、好きな漫画を全部買う。食べたい物を好きなだけ買って好きなだけ食べるそんな生活。

 大人になって自分でお金を出して宝くじを買うようになり、妄想はさらに膨らんだ。

 高い服を買って、好きな所に行って、高い車を買って、家だって買えるかもしれない、友達だって、彼女だって!


 でも……現実はそうじゃない。


 結局欲しい物はなかなか手に入らなかった。

 結局食べたい物やお腹いっぱい食べられなかった。

 結局友達とも遊べなかった。

 結局高い服は買えなかった。

 結局好きな所には行けなかった。

 結局高い車は買えなかった。

 結局家も、友達も、彼女も!


「だから今でもあの頃からの自分に囚われて、叶いもしない夢と言う幻想を馬鹿みたいに追いかけてんだよな…」

 当たれば人生変わる。だから買い続けた。

まともな職にも就かず、親に見限られて家を出された今になっても。

 ふて寝のように瞼を閉じると、一瞬胸に激しい痛みが走り、同時に激しい眠気が襲う。

 (なっ、何だ…何だか胸が苦しい……)

 (……こっ声が出ない……そしてなんだか……眠い……)


 @@@@


 「はっ!」

 飛び起きるように身体を起こすと、視界暗闇に包まれていた。

 「眠っていたのか。ここは俺の部屋だよな?」

 辺り一面の暗闇。上下左右一切の光の無い状況に、瞬時にここが自身の部屋では無いと悟る。

 「ここはどこなんだ?どうして俺はこんな場所に?」

 「残念ながらあなたはお亡くなりになられました」

 「誰だ!?」

 姿は見えないが、若い女性のような声が頭に響く。

 「私は女神。転生の女神です」

 「転生の女神?何を言ってるんだ、だって俺は今まで部屋に…」

 「先程もお伝えしましたが、あなたは今し方亡くなられました」

 「死んだ?そんなわけない……。なぁ、これは夢かなんかなんだろ?」

 

 (パチンッ)

 指を鳴らす音と共に地面がスクリーンのように写し出され、見覚えのある部屋の光景が目に映る。

 「残念ながら、心筋梗塞のような症状のようです。我々が駆けつけた時にはすでに亡くなっておられました」

 「……そうですか。息子は一人で……」

 複数の警察官と見覚えのある親の顔。その脇で顔を白い布で隠された自身の身体が、今し方救急隊員に運び出される途中であった。


 「どうです?ご納得いただけましたか?」

 「……俺は、死んだのか」

 「残念な事ですが、生ある者いつかは死が訪れます」

 「……叶いもしない夢を追いかけ妄想にあけけくれた俺の最後はこんな終わり方なんだな…」

 「……悲観にくれるあなたに私は最後の選択をあなたに授けます」

 そう言われた刹那、頭の中に2つの選択肢が浮かび上がる。

 

 (「一つ、全ての記憶を捨て、また新たにこの世界に生を受ける」)

 (「一つ、新たな世界で転生し、一つのギフトを得る」)


 「お好きな方を選択してください」


 まるでゲームのコマンドのように、意識を傾けたほうにカーソルが向き、どちらかを選択するように促される。

 「一つ目の選択肢は、記憶を捨ててまた新たにやり直すってわけか」

 「はい。あなたが元いた世界で、もう一度0からやり直していただけます」

 すぐさまこの選択肢は無いなと、カーソルを下に移す。

 「二つ目の選択肢は…新たな世界で転生?」

 「はい。あなたがいた世界とは別の世界で、記憶を多少引き継いで赤子から転生していただきます」

 「この選択肢の最後に書いてある、ギフトってのは?」

 「とっても良い物です」


 ギフトというのが少し気にはなったが、カーソルは迷わず新たな世界を選択していた。正直今までの世界に未練など無い。記憶を無くして新たにやり直したとしても、あの世界に取り込まれる自分を想像すると嫌悪する。

 選択するように、カーソルは迷わず下を選択していた。

 「だったら俺は新たな世界を選ぶよ」

 「こんな何の思い入れの無い退屈な世界じゃなくて、俺を新たな世界へ連れてってくれ!」

 「あなたの選択はなされました」

 最終決定の選択をしたと同時に意識が徐々に遠くなる。暗闇に溶けるような感覚と共に、少し遠くから微かに先程の女性の声が響く。

 「ギフトはあなたが10歳の誕生日を迎えた頃に届くよう手配いたします」

 それを最後に、プツンとテレビを消すように、俺の意識は途切れた。


 @@@@


 異世界に転生し物心ついた頃、セーブデータをロードするように前世の俺の記憶が呼び覚まされた。様々な習得速度が速く、両親も最初は驚いてばかりだったが、元の世界の地頭があまり良く無かったのもあったためか、現在では周りよりちょっと頭少し抜けている程度に治った。

 そんな俺が10歳の誕生日を迎えたある日の事。突如舞い降りた幸運を告げられ、俺はただただ呆然と立ち尽くした。


 「おめでとうございます!一等700000000000000000000000000000000ゴル当選致しました」


 もはや桁すらも聞き覚えのない数字の羅列。さらに男を祝福するよう現れた、スーツ姿の無数の見知らぬ者達。さらに背後から続々と現れる、様々な楽器を奏でる楽団のような者達。

 「おめでとうございます!」

 「最高に幸福なお方でございます!」

 次々と浴びるように降り注ぐ祝福の言葉の数々。

 「えっ、嘘マジ?」

 「マジもマジの大当たりにございます」

 「1000年に一度行われる超〜〜特別な宝くじ…」

 「ヴァルハラ超ジャンボの一等大当たりにございます」

 呆然とただただ空いた口が塞がらず、思考が3周くらい追いつかない状況。男はゆっくり時間をかけて頭を回転させ、やっと思考が追いつくと、あまりの嬉しさに奇声を上げて喜ぶ。


 「おぉぉぉぉぉぉぉっ、しゃーー!!!」


 この驚きの出来事より遡る事数ヶ月前。平凡な一般家庭であるキャッシュ家の長男、カイン・キャッシュとして生を受けた俺の元に宛先不明の封筒が一つ俺の元に届いた。

 中には一枚の宝くじ。

 特に珍しくも無くこの世界の住人なら誰でも購入可能な代物だ。だがこの宝くじの抽選は超特殊で、抽選は1000年に一度。当たれば莫大な富が、この異世界ヴァルハラの世界共通通貨で支払われる。ちなみに過去の当選報告はまだ無く、あまりに常識を超越したようなクジだ。

 「あの女神が言っていたギフトはこれだったのか…」

 正直クジを手にしたこの時は特別感も何も無く、本音を言うと「なんだこれ…しかも一枚」という感じだった。

 家族も誰一人この宝くじについて触れず、しまいには「夢を見るな」とか、「地道に働いたほうが幸せよ」などと聞いてもいない事を言われる始末だ。

 

 だが今はそんな過去の事はどうでもいい。何を言われようと関係無い、現実に起きた真実こそが全てだ。


 それからしばらくパレードのようなお祭り騒ぎが続き、世界中から様々なメディアや記者が次々と押し寄せ、世界中に俺の名は轟いた。一躍有名人になった俺には護衛が複数人配備され、連日に渡って慌ただしい日々が続く中、あれよあれよと手続きが進み、ついに支払い先であるヴァルハラ統一銀行から振り込み通知が届いた。

 だが、あまりの大金のため通貨で支払うには難しいらしく、特別にこの世界で一枚だけの、カインにしか使用が出来ない魔法のカードが至急される。

 このカードを見せればどこでも買物が可能で、キャッシュレス決済が可能となる。ちなみにこの世界では、パン一個1ゴル未満の1コル、100コルで1ゴル計算である。家なんて5万ゴル程度で建てる事が可能で、計算上使い切ろうと言うのは不可能である。

 なのでひとまず、思いつく限りの色んな物を手当たり次第に買いまくった。流行りの物から、武器や防具、宝石や美術品、高級な食材から、時にギャンブルや女遊び、金で買える物なら何でも買った。

 最高級のレストランで、テーブルいっぱいに並べられた最高級食材で作られた食べ物の数々。

 「本日は当レストランをご利用貸切いただき誠にありがとうございます」

 「お会計、1500ゴルになります」

 「うむ!カードで!」

 希少な素材と魔石を贅沢に使用して作られた、最高品質の剣や防具の特注品。

 「最高級の武器と防具合わせて2万5000ゴルのお買い上げです」

 「うむ!カードで!」

 魔導書専門店にて、山のように積み上げられた、世界各地の希少な魔導書の数々。

 「ご注文いただきました、世界の魔導書全巻セット3万8000ゴルでございます」

 「うむ!カードで!」

 裏のオークション会場にて、目玉商品として出品されている、時の巨匠による名画や美術品の数々。

 「ノッホの失われた名画よまわり、40万ゴルにございます」

 「うむ!カードで!」

 嘘か誠か、時の勇者が所持していた、鑑定書付きの武具。

 「伝説の勇者が使っていた武器なんだ!50万ゴルで買ってくれないか!?」

 「うむ!カードで!」

 時には流浪の最高級冒険者を。

 「私を買いたい?じゃあ、66万ゴルでいいわよ」

 「うむ!カードで!」

 気に入った土地があれば、神域や禁足地などところ構わず様々な場所を探して回り。

 「先祖から代々受け継いだ聖なる土地、1000万ゴルで売ります」

 「うむ!カードで!」

 湯水のように金を使うが、記された残高一定の数値から減る気配は無い。

 途中、金の匂いを嗅ぎつけ、身内や友人、近所の人や顔見知り、まったく身に覚えのない数多の人達から金をせびられる事が増えた。日に日に増す金の催促にだんだんと怒りを覚え、数万ゴル程支払って家族もろとも全ての者と縁を切った。それでも懲りない者に対しては、屈強な者達を雇ってこれを追い払った。

 それからしばらくして、思いつく限りの遊びに飽きた俺は、安息の地として自分だけの国が欲しいと考え、勢いに身を任せて大金はたいて小さな国を購入する。

 価格にして300億ゴル。

 「スケールはデカい買物だけど、思った以上に安い買い物だった」

 金が尽きる心配がないのに加えて、このカードで何かを購入する場合、ある特殊な機能が働く。それはこのカードで支払った物の絶対的所有権と、強制購入である。

 「お前を買いたい」

 カインが声を掛けてたのは、子供の自分を遥かに見下ろす、様々な伝説級の武具や防具を身に付けた屈強な男性。

 「子供…?ふざけた事をぬかすな!俺は英雄クラトスだぞ」

 「へぇ、英雄は金の損得では動かないと」

 「当たり前だ!金に靡く英雄などあるものか!」

 「なるほど、まさしく英雄だな……」

 「わかったならさっさと消えるんだな小僧。俺は忙しいんだ」

 そう言って立ち去ろうとする男に、カインはため息を溢す。

 「はぁ……、え〜っと456万ゴルか、案外安いんだな英雄って」

 「何だと?貴様、今何と言った!」

 「はいはい、じゃあカードでお買い上げで」

 「……本日よりよろしくお願い致します。我が主人カイン様」

 「うむ!」

 このカードで購入した物や人は例外なく俺の所有物となり、奪う事が出来ず、命令には絶対従い反抗出来ない。しかも購入に関して値段のつかない物や人を金額として即座に鑑定し値段を付けて購入する事が出来る。この購入に関しては拒否する事が出来ない強制であり、無効に出来ない。

 こうしてありとあらゆる様々な物や人や土地を買い漁り、約3年の歳月をかけて、小さな国であったこの場所を、強大な国家へと成長させた。

 「3年経ってここまで来たけど、未だ金が減ったような実感は無い…」

 「手の届く物は全部手に入れた。だけど、なんか物足りないんだよな…」

 少し空虚に、お気に入りの玉座に座り見渡す先には、数名の頼れる側近と数十名の精鋭が膝を折り、数百名の騎士と数千の兵士が剣と槍と旗を掲げる。

 「そうだ!もう全部買ってしまおう!」

 「もっと沢山の国や土地や人や物を手に入れて…」

 「そしていつか、この世界を手に入れよう!!」

  

 莫大な富は人を変える。今まさにこの男、カイン・キャッシュは、今後世界に多大な影響と変化をもたらす存在として、世界にその名を轟かせる事となる。

 

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