第17話 魔法による失敗

 どうも、アツキです。

 長いもので魔法を覚えて10ヶ月が経過しました。

 今僕は屋敷にある鍛冶工房にて彫金のまねごとをしている最中です。


 この屋敷は最悪籠城することも想定されているので、戦いに必要な施設は一通りそろっているのです。

 といっても、流石に前世の様にネットで調べました。なんてことはできないので、あの水鉄砲事件の鍛冶工房に頼み込み基本のキの字を習おうと通っていました。

 ありがとう父様の威光。ありがとうやさしい工房のみんな。

 なぜ僕が彫金をやっているのかというと、鉄砲事件でも発見した前世道具を使った魔法の発展形。新たな魔法理論。前世道具+オカルト=中2理論を構築した。

 何を言っているのかわからないだろうから詳しく説明しよう。

 ユズの手伝いとはいえ、僕は毎日シラヌイの花を補助しているわけで、この日々で僕の常識も変質していくのではと考えた。つまり、魔法が僕の常識の1部になる。

 しかし単独で僕が魔法を使えるようになるのか? といえばそれは無理だと判断した。やれる気が1ミリもわかなかったからね。

 そこで僕は考えた。なにか魔法がつかえそうな道具があれば使えるのではないか? ではどんなものなら魔法が使えそうか? そう! かの中2病と言われる人々が好きそうな、なんかわからん幾何学模様! 意味ありげな魔方陣! 効果はまったく覚えていない梵字! つまり、僕の常識をだませそうな小道具が必要だと考えたのだ。

 それを作ろうと鍛冶屋にお世話になっていたのだ。

 まあ、なぜかその習作を作っていたら工房の親方に斬新な装飾だと気に入られ、一部に熱狂的な支持者を生み出し。僕の名前をとってアツキ模様と呼ばれだし、今ラージルの街でちょっとしたムーブメントを生み出している。どうしてこうなった……

お金が入ってきて嬉しいけどさ。


「完成! イヤーカフス、ブレスレット、バックル、アンクレット。これでいけるはず」


 後日。今日は父様との練習日。


「父様どうぞこれを」

「ん、これは?」

「父様へプレゼントです!」

「これは、鍛冶屋でなにかやっているとは聞いていたが……これを作っていたのか?」

「はい。僕が調べた独自のまじないを組み合わせました! 気休めかも知れませんが、いつも戦っている父様を守ってくれるはずです」

「っ……ありがとう。うれしいよ」


 父様が感激してうっすらと涙を見せている。

 ごめん父様。本当に出鱈目、なんとなくかっこよく配置してるだけだから、まあ鰯の頭も信心からっていうから、きっと守ってくれるよ、ゆるして。


「ではでは、早速つけてみてくださいな」

「あ、ああ」

「お手伝いいたします」


 何処からともなくカエデがやってきて、てきぱきと父様にアクセサリーをつけていく。

 なれっこすぎて驚くことないけど、カエデはなんなの? ニンジャだったりするの?


「うん、どうだ。似合うか?」

「はい、よくお似合いです父様!」


 うん。イケメンはなにつけてもいけますね! うらやましいこって


「では、修練を始めようか」

「はい!」

「まずは型稽古から」

「はい!」


 僕の目的はここからだ。

 僕が何をしようとしているのかというと、僕の新たな魔法「動作記録魔法モーションキャプチャー」である。

 父様につけたアクセサリーをマーカーに見立て、父様の動きを完全コピーすることが僕の目標だ。

 そんなことで強くなるのかとお思いかもしれないが、見て覚えるしかない動きを、体験して覚えることができれば、どちらがより早く上手くなるのか? だれもが体験する方が早いと思うだろう。僕は凡人ではあるが、このように革新的な訓練方法があれば天才に近づけるのではないか? との考えからこの計画を思いついた。

 まあ、もっとファンタジーな戦い方を僕もしたかったのだが残念ながら思いつかなかった妥協の産物ともいえる。

 ちなみにマーカーの数とか僕は良く知らないのだが、そのあたりは僕の中2理論、あのアツキ模様が補っているという設定だ。この装備を作る前の習作でも、ちゃんと機能したのでそこは安心してほしい。それにこれは魔法のモーションキャプチャー、動きの表面以外、筋肉の使い方すら模倣できるという優れものさ!


「うむ、では今日の修練はここまで」

「ありがとうございました!」


 というわけで、何事もなく訓練が終わった。

 さてここからは自習のお時間です。記録した動きは、自分で再生することが可能。だからこその動作記録魔法。


「さてと、ではお手本の再生と行きますか」


 魔力を全身に行きわたらせ、記録した動きを再生させる。


「ん?」


 うん、この勝手に動く感じは少し気持ち悪いが、なんか実験の時と違うような?

 僕はこの魔法を練習するにあたり、砂場の端から歩き、砂場を渡り切ったら、元の位置に戻って動きを再生。ちゃんと同じ場所を踏むのかと実験していた。

 だが今回は、何か違う? なんでだろう。やはり他人の動きだと違いが大きいのかな?

 そうこう思考している間にも動きは止まらず、刀を持つ手が上がりふりおろされてっ……


「がぁああああああああああああ!」


 絶叫が自分の口から出る! 地面に倒れ体のいたるところが痛みを訴えるたびにビクビクと体がけいれんを起こす。

 そうか、そうか! 実験の時は自分の動きを再生したから気がつかなかった!

 そもそもスペックが違う。父様の動きに僕の体がもたないのだ。こんな単純なことに今気がつくだなんて。


「イっつ~~……」


 やばい、動けない。気持ち悪くて声も出やしない。


「だれ、か、こない、かな~……」


 僕が助けられるのはそれから4時間ほど後、夕食の時間になっても来ない僕を探しに来たシアヌが発見してくれた。

 ものすごい心配されて、涙でボロボロの顔でメッ! ってされました。

 ごめんね。


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英雄(ヒーロー)を見守りたいので、僕は親友ポジのメガネくんになる! ON03 @yugao

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