第15話 魔法における発見
どうも、アツキです。
魔法を覚えて3ヶ月ほど経過しました。
現状の報告をしようと思う。
僕の日常はユズがとことこ僕の後ろをついてくる以外は変わりない。
いや、父様が何日か家を空けるようになったり、母様も一緒に森に行ってはモンスターを討伐しているからユズが来る前の、家に全員がそろうことの少ない本当の意味での日常に戻ったと言ってもいいだろう。
僕はと言えばいつも通りの訓練をしつつ、姉さまに遊ばれたり、ユズと遊んだりと子供らしい生活をしている。
あとユズの魔法の訓練にも付き合っている。いつ僕がシラヌイの花が使えるようになるかとキラキラした目を向けてくるのに日々圧力を感じている。僕の常識が変わらない限り使える気は全くしないが、それはいずれ魔術が使えるようになれば何とかなるとは思う。
魔法については進展があった。
皆様は引き金式のスイッチで筒状の棒の先から火をつける着火器具をご存じだろうか?
この世界にも見た目がよく似たものがある。使用用途は全く違うが名前をチャージスティックと言う。
この世界は科学の代わりに錬金学が発展しており、日常生活は地球とそん色ない生活ができている。まあ元々がゲームファンタジー世界なので妙なところが現代的な世界なのだ。
で、その錬金学で生み出された製品は、モンスターの心臓付近からとれる魔石と呼ばれる結晶体からエネルギーを取り出し使用される。
チャージスティックの使い方はこうだ、持ち手の部分にクズ魔石と言われる極小サイズの魔石を入れてエネルギーをチャージ。
どうもこの世界のインテリアの流行みたいなのだが、この世界のバッテリーに相当する魔力槽を壁なんかに埋めて見せないのがおしゃれらしく、給魔口と呼ばれる目立たないように普段は蓋している穴にチャージスティックを入れてスイッチを押して魔力を供給。
お金持ちの家のインテリアに使われてるちょっとした道具って所である。
まあ、これの使い方とかはどうでもよくて。本題は、地球で見知った着火器具に形状が似ているという点だ。
僕も記憶を取り戻してから改めて見てみるとそっくりだなと手に取って何気なくスイッチを入れたら火がついた。そんな機能はないのに。
どうも僕は難しく考えすぎていたようだ。
僕は車がなぜ動くのか詳しくはわからないが、車に鍵を指してエンジンを動かせば車が動くという常識を持っている。
つまり僕に必要なのは、中身ではなく、僕が動くと思える外側だったのだ。
よく物語なんかである現代兵器無双なんてことができるのではないか!?
と思い頑張ってマスケット銃モドキを作ってもらった。
ふふ、街の鍛冶屋にお小遣いをつぎ込んだぜ。
ちなみになぜマスケットなのかというと一番形状が簡単そうだったからだ。
「ふふ、鍛冶屋のおじさんに説明するのは大変だった。最終的には物語に出てきた武器を作りたいという、本当にお貴族様の道楽みたいなことをしてしまった……」
「ん? にいさま?」
「なんでもないよ」
昼下がりの訓練場。
家族にはいまだ魔法のことは黙っているがユズには特に隠さず過ごしている。まあ、うちの人間なら気がついている気もするが止められていないのだし好きにやらせてもらおう。
「今日はにいさま、魔法の実験するから」
「じっけん?」
「そ、これはマスケット銃。この筒の先っぽから鉄の球が飛び出すんだ。危ないから僕の前に出てはいけないよ?」
「うん、わかった」
「さて……」
練習用の弾を込めて、構える、ターゲットの木偶人形を狙って。撃つ。
「おお~~~」
「え~……」
出はした、水が。ピューッと木偶人形に届くこともなく放物線を描いて床に水たまりを作っり玉がコロコロとむなしく転がった。
「はは、そうか鉄砲なんて僕の常識ではフィクションだもんな……」
「すごいにいさま!」
「あ、ははっ……えっと。ほーら虹だぞ~……」
「おおー!」
この日はユズと水遊びして楽しかったですマルッ!
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