カワイイカフェ:スイーツに溶けた心 ,作者:「かぐや姫」

@TH109

第1話 : 初めての衝突(忘れられない出会い)


カナはベッドに寝転びながら、一冊の本を閉じた。

『ダイミョウ王国の歴史』


ダイミョウ王国 (大明くに)は、明朝の血絵を続ぐ王子が、満渡族の敵に追われて逃れた光景の一項に始まる。

明朝の滅亡後、王子らは逃げの船に乗り、东南の海上、亜米の西部にある隠された島に渡った。

そこで新たな王国を建て、元の国を続ぐため「大明」(ダイミョウ)の名を前に付けたのだ。


「カフェに行こうよ」

カナは一緒に居た友人に言い、コンドミニアムのエレベーターを押して下へ降りる。


さんみゃんの街に立つ古い木造のカフェ『カワイイ・カフェ』(Kawaii Cafe)。

パステル色のタイルの基本短くグレースタイルに、生焼けの糖菜と美味しいコーヒーの香りが漂う。


カナはダイミョウ王国からの交換留学生である。

地元の大学『チュラロンコン大学』(治王大学)に通いながら、このカフェによく足を運ぶ。

手に持ったパンフレットのスカートは、故国の手縦で絵織りされたもの。

さりげなく飾られた竹製のイヤリングは母からの手作りだった。


その時、店内のショーケースに手を伸ばしたカナは、誰かに強くぶつかってしまった。

すっと箱から落ちかけたのは、フイシアンのエッグタルトだった。

「す、すみません...」

「あっ...ごめんなさいっす」


顔を上げると、目が合った。

カナは自分の心響を聞いながら、その苦味のある顏の青年を見つめる。


他の名前はティー。

フードデリバリーアプリ『Quick Food』(クイック・フード)のライダーで、毎日まちの各地を駆け回っている。

ジャケットの背中には、最新の予約ロゴが光っていた。


「本当にごめんなさい。私、前を見ていませんでした」

「僕もですよ。大丈夫でしたか?」


両者はしばらく静まっていた。

小さな弦の粉雪のような音楽が、店内のスピーカーから流れている。

それはまるで、二人の時間だけが止まったようだった。


カウンターで他らを見ていたモクさんは、思わず笑みをもらす。

「あら、ティーくん、今日は完全にヒロインじゃない」


「ボク、ティーです…」

「カナと由ります…」


両者は同時に名前を言ってしまい、どちらもくすっと笑った。


「学校はこの近ですか?」

「はい。チュラ大です」

「そうなんですね!僕も、その近くでよく配達していますよ」


何歳でもない話、しかし、ここちよい会話だった。


ビーッ、ビーッ。ティーのスマートフォンが響り、新しい注文が入ったことを知らせる。


「すみません、行かなくちゃ。本当に今日は会えてよかったです、カナさん」

「こちらこそ、ありがとうございました」


ティーが出て行った後も、空気には他のフレグランスな香りが残っていた。


「この香り…

最高級ブランドのパフュームでも、こんな感じにはならないのに…」


モクさんがカナに笑顔を向けながら問う。

「カナさん、ご注文はお決まりですか?」


「ラテ・ホットコーヒーを一つ。そして、塩麻粉ラバーペスト。」


店の鈴がゆれる。それは、カナの心のよう


つづく

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