第11話 私たちの後悔
もう、ずっと暗闇に生きている。二度と美しい景色や人々の顔を見ることはできない。私たちは、夫に光を奪われた。もう、須藤に縋って、須藤も私に縋って生きていくしかない。2人で夢見た幸せは、霧散した。
たかが不倫でここまでするかと夫を恨んだが、テレビやネットでは私たちが加害者で被害者は夫になっていた。
それだけのことを私たちはしたのか?
須藤を好きになって、夫を切り捨てただけなのに。でも、やりすぎたのかもしれない。離婚する時、もうちょっと夫にやさしくして、ごめんねって言えばよかった、あなたも愛していたと思ってなくても言えばよかった。そうすれば、逆恨みされることはなかった、それを後悔してる。
なんで俺もこんな目に。香織の口車に乗っただけなんだ。ちょっと誘ったらすぐに寝た、軽い人妻。顔はタイプだった。だから既婚者でも奪ってもいっしょ、て思ってしまった。他にいい女なんていっぱいいた。なんでこんな、どこにでもいる女と俺は、一生一緒にいなければならいのか、毎日後悔している。
知らない土地で暮らして7年。私たちは、誰も知らないけど、みんなは私たちを知っている。不倫したお母さんに、ついていって、お父さんを捨てた姉弟。血も涙もない姉弟、おばあちゃんちに行った時から、そのレッテルは貼られていた。友達もいない。職場は、スーパーの総菜係。だれとも話をしない仕事。それがほっとする。
私も弟もお父さんが大好きだった。あんな、軽い、ちゃらい男に私たちはついて行ったのか。こっちの方が、いい暮らしができるよ、とあの女(母)の口車に乗ってしまった。弟も巻き込んだ。
私は、浅はかだった。それを一生後悔して生きるだけしかない・・・。
【完】
後悔 @shalabon
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