第9話 無情

 俺は、自分で警察に通報して、逮捕された。

 テレビ、週刊誌は、こぞって取り上げた。特にワイドショーは、不倫された夫の復讐劇ということで興味本位で連日報道した。

 被害者ということで、不倫の悪質性はそれほど報道されなかったが、ネットが炎上した。

「ざまあ。不倫女不倫男」

「自業自得。」

「ナイス旦那!」

「こいつら、クズ過ぎる、やられて当然」

 被害者の2人がネット上で叩かれまくった。


 取り調べ、裁判では、俺は悲劇の夫をひたすら演じた。

「妻を奪われ、子どもたちも会えず、財産を失い、家族を奪われた。人生に絶望し、自暴自棄になってなってとんでもないことをしてしまった。」

ウソ泣きも何度もした、心にもない反省の言葉を述べた。その時も、香織と須藤の汚いやり方に自分を失ったことを強調した。

 傍聴席に、汐里と誠が見えた時、でっち上げの浮気を信じ、それが嘘だと知っても俺を捨てた子どもたちにも絶望した、と裁判の中で復讐した。


 判決は、情状酌量の上、懲役10年。俺は、嘘の涙を流してお礼を述べた。一生悔いて生きたいと心にもないことをしゃべった。


ネット上では、

「重すぎる。サレ夫を救え。」

といった書き込みであふれたことを出所後知った。

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