第4話
「ねぇ♡手とか繋いじゃう?」
「繋がないし」
「腕組んでいい?♡」
「無理」
この変わりようは何?千鶴に対して抱いた第一印象もイメージも完全に崩れ去っていった。
誰にでもこんな感じなのか?これが平常運転?意味わからん。
距離が急激に縮まり過ぎて目の前で起きている事に思考が追い付か無くなってきていた。
「なぁ、千鶴」
「わあぉ!?名前呼び、ドキドキするー」
もう嫌、これどうすればいいの?慣れていくしか無いのか?
「咲夜、なぁに?♡」
頬を少し赤く染めてこちらを覗き込む顔と目が合う。
話そうとした事が飛んだ、取り敢えず千鶴は話したい事があったから一緒に帰ってるんだ。
階段下での話しに戻して聞いてみるか。
「千鶴は俺に初めて会った気がしないっていったじゃん?それ俺もなんだけど、どこかで会ってたって事だよな?」
「う〜ん?可能性はあるかなぁ?私昔はこの辺り住んでたし」
「それ早く言えよ」
重要な情報は早めに教えて欲しと思った、だってそれなら昔会ってた可能性がある、と思ったのだが⋯⋯
小さい頃の記憶とかあんまり無いんだよなぁ、記憶力悪くてすいません。
俯き呻っていたら千鶴が話を続けてくれた。
「小さい頃だよ〜7.8歳くらいかなぁ?古いマンションでさぁ、下に公園がある所だったはずなんだけど、探しても見つからなくて」
「え?それ俺が中三の時に取り壊されたかも?」
「へぇ〜そうなんだぁ?」
「いや、今めちゃくちゃ重要な事言ったよ?間違いじゃなければ俺もそのマンション住んでたんだけど」
「え?マジ〜ウケる〜」
「ウケねぇし」
ここまで来ると昔会った事があるのは間違いないと思い、数少ない記憶を捻り出してみた。
「古いマンションでさぁ、風呂壊れた時に隣人が助けてくれた記憶があるんだよね」
「それ家だね〜懐かしいねぇ〜よく下の公園で遊んだよねぇ〜」
「やっぱりそうなんだ、てか幼馴染じゃん、こんな事ってあるんだな」
幼馴染だったのにはもちろん衝撃を受けたけど、よく遊んでた?その記憶が全くないんだが?
「幼馴染だね!なんかいいよね?♡」
「う、うん」
改まって言われると照れてしまう。
そんな俺を横目に千鶴は満面の笑みを俺に向けていた。
お互い不思議に思っていた事、思いや感情がわかりスッキリしたのか?それとも距離が更に縮まったのか?千鶴が流著に話を続けた。
「ねぇ、お腹空かない?」
「夕飯時だからなぁ、空いてはきてるけどなんで?」
「咲也が大丈夫なら食べに行こうぜ!そこのファミレスで、まだ話したい事あるしさ♡」
「俺は全然いいよ、両親共働きで普段外食かコンビニで簡単に済ませてるから」
「やったー♡うちも共働きだからさー!咲也いこっ♡」
可愛いな⋯⋯なんて口が裂けても言えんけど、デートみたいな状況にドキドキしてきてしまった。
女子と二人で食事って初めてなんだが?会話とかどうすればいいんだ?
通り沿いのファミレスに入りそこで少し早めの夕食を食べる事にした。
「咲也〜何食べる?」
「お、俺?明太パスタとサラダかな?」
「めっちゃ女子!ウケる!」
顔を覗かれ少し顔が赤くなっていくのがわかった。パスタとサラダは女子なのか?そんな事は無いはず、それじゃと千鶴に言葉を返す。
「千鶴は何食べるの?」
「私?えっとー、ステーキにライス大盛り!フライドポテトにピザ!あとサラダと食後のパフェ!」
「冗談だよね?」
「え?なんで?」
ビックリして千鶴の顔を見た、マジの顔だこれが千鶴の普通なんだ、そ、そりゃ俺の頼んだメニューなんて女子に見えるわ。
それより何で急に頬赤くしてモジモジしてるの?頼み過ぎたメニューが恥ずかしかったのか?
「あ、あのさ〜」
なんだ?次は何が来るんだ?千鶴の一挙一動にドキドキしてしまう。
俺は高鳴る鼓動を必死に抑えながら、千鶴の次の言葉を待つことにした。
「携帯の番号交換しよ♡」
「そんなことか、はいっ」
「え?何っいきなり冷たいの意味分からないんだけど」
「違う違う、手繋ぐ?腕組む?とか言われたからさ次は何が来るって身構えちゃって」
「確かに〜攻めすぎたね?気を付けまぁす♡」
うん、絶対に気をつけないやつだよね?距離感考えてねと喉元まで出かかったのを飲み込んだ。
めちゃくちゃ顔キラキラさせながら、すっげぇ楽しそうに話すやん?もう俺が慣れるしか無いんだなと諦める事にし携帯を翳し番号を交換しあった。
テーブルに料理が届きお互いに箸をつけ始めた。
食事中は他愛もない話で盛り上がった、俺こんなに話しできたんだ?少し困惑した自分もいたが多分話せてるんじゃなく引き出されてるんだと気付き千鶴に感心してしまった。
「咲也!明日から一緒に学校いこ♡」
屈託の無い笑顔でこっちを見ている、恐らく拒否権は無いのだろうな?と苦笑いをし返事を返す。
「わ、わかった」
「やった♡家出る前に連絡するね♡」
食事を平らげ満面の笑みで満足そうに千鶴は微笑んでいる、俺はその顔を見てペースを完全に握られた事に気付きながらもそれが心地良く感じていた。
「帰るかー」
「うんっ!帰ろ」
会計を済ませファミレスを出る。
今日は初めて尽くしで疲れた、これからこんな日々が毎日続くのか?と横に並んで歩いてる千鶴を見ながら帰路についた。
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