第4話
迎えた撮影当日。楽しみで、うれしくて昨夜何度も確認した合格メール。俺の役はホワイト。戦隊の名称は「七色戦士☆レインボーソルジャー☆」。うん。まあそこは人の思考だからね。ノーコメント。
メインは赤・青・黄、途中参加は参加順に緑・ピンク・黒・白だそう。つまり俺の役は最後に登場するらしい。撮影初日は大乱闘とも呼べる戦闘シーンを撮り、その後日常シーンを徐々に撮影していく予定。戦闘シーンで俳優の緊張をほぐしてから日常シーンに移っていくことで、現場のならしをしていくとのこと。
撮影現場に到着した俺の目に飛び込んできたのはとんでもない人数の人間。これ全部撮影スタッフとキャストなのか。ちょっとした町を作れる人数がその場にいた。ちなみに知っている顔は見えず、隅っこでマネージャーと話をしていると、監督とプロデューサーが通りがかったため挨拶に行く。「監督、今日はよろしくお願いします。こういう現場は初めてなんですが、すごい人数ですね。これ全部スタッフさんですか。」「ん、ああ。白田君!待ってたよこの日を。こちらこそよろしくね。」「あれ、白田さんもしかして聞いてない感じですかね。ここにいるのはスタッフもですが大半は…。」「これから撮影前の確認をいたします!キャストの皆さんこちらへ集合してください!」プロデューサーの言葉の最後は、スタッフの集合の声でかき消されてしまい聞き取れなかった。やっとめぐってきたチャンス、絶対ものにしようと決意し集合場所へ向かう。
集合場所には現場にいる人間のおよそ半数、200名ほどがいるように見える。これ全部キャストだったのか、大乱闘になるって言ってたし、敵役もいっぱいいるよねなんて考えていると、「えー、ではホワイト役の皆さん。順番に衣装をもらって、更衣室で着替えをお願いします。着替えが済んだ人から順番にあちらに並んでくださいね。」
え…?皆さん…?は?なんて思っているうちに着替えを渡され着替えて列に並ぶ。その後の記憶はほとんどない。ただ終わりがけに監督から「白田君、もう少し演技に身が入っているとよかったけど。まあ、初日だもんね。日常シーンはよろしく頼むよ。」という言葉だけが耳に残っている。
事務所に戻り、マネージャーに今回の件について確認しなおすと、どうやらメールでの行き違いがあったよう。重要な設定に関する内容についての連絡が漏れていたと。その状況であの演技ができたことは素直に素晴らしいとほめられたが、設定の内容を確認すると、マネージャーと顔を見合わせて驚愕した。
レインボーソルジャーはメインの赤・青・黄は5人ずつの計15人、緑・ピンク・黒・白は順番に25人・50人・100人・200人とのこと。ちなみに赤・青・緑・黒は男性のみ、黄・ピンクは女性のみ、白は男女混合とのこと。半ば放心状態となってしまったがその日はそのまま帰宅。その後の撮影は危なげなく進み、監督やスタッフからは「本当に見ていて安心する演技。」「来てくれてよかった。」と言われたが、なんとなく素直に受け取れないのはなぜなんだろうか。
翌年、満を持してレインボーソルジャーの放送開始となった。俺が衝撃を受けた例の戦闘シーンはヒーロー総勢390人VS怪人3人という、とんでもシーンとなり、様々な界隈がざわついたが、なぜか大した問題にならず、なんなら続編期待の声が続出するような事態になっていた。俺自身もその後さまざまなテレビやドラマへの出演が決まり、今では後輩にゴマをすられる立場になっていた。
そんなある日、監督がテレビのインタビューを受けたとのことで当時のキャスト仲間とみていた。「ところで監督さん、なぜヒーローをあんな数にしたんですか。ホワイトにいたっては200名ですよ。今までそんな作品見たことも聞いたこともないです。」との質問に監督は得意げにこう返す。「いやーなんといいますか。思い付きでね。でも知ってます?白ってな、200色あんねん。」
白ってな、200色あんねん。 まつやに @matsuyani23
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