第3話
迎えたオーディション当日。緊張のためか周りを気にする余裕もなく、スタッフが指示する通りに演技をしていく。戦隊モノというだけあって走ったり跳んだり、戦闘シーンなんかもあったりと様々なことをやった。本当に…いろいろやった…。ここまで疲れたのは久しぶりというくらいに…。戦隊モノとはいえ、戦闘シーンは戦闘服で顔も映らないから、スーツアクターがやるのでは?と思い、演技終了後にスタッフにどことなく聞いてみる。「ああ、スーツアクターですか。今回はですね、俳優さんたちの演技力を信用し、その人の力を引き出すことも我々の任務みたいで。なので戦闘シーンも皆さんにやっていただくようになります。そのための演技面接ですね。」とのこと。第1シーズンでおそらく予算もそこまでさけないから、俳優に戦闘シーンもやらせて経費削減といったところなのだろう。
お昼休憩をはさみ、監督、プロデューサーとの面接になった。
「白田さんは、以前に一度映画に出てらしたんですね。作品名は…、ああ。あの作品ですか。」あ、これは…、今までの人たちと同じ反応…。結局ここでもか…。俺が何かしたわけでもないのに、あの作品に出ていただけでこの反応。この後続く言葉はいつもなら「まあ、俳優やってればこういうこともありますよね。何か聞いておきたいことはありますか。なければこれで終了となりますが。」である。要は「デビュー作でこけた疫病神を出演させたくない。」ということである。
ところが今回はプロデューサーの隣にいる監督が驚きの言葉を放った。「ん、ああ!なんか見たことあるなと思ってたらあの作品の子か!いや~あの作品見たけど面白かったよね!君の役回りも面白くて。もし叶うのなら僕の作品に一度出てほしいと思っていたんだよ!うんうん、よし。君は合格!」「ちょ、監督!勝手にそういうこと言うのやめてください!白田さん、合否については後日メールを事務所あてで送らせていただきますので。といっても監督のこの様子からするに合格でしょうから、撮影日までしっかり鍛えて、再度お会いできることを楽しみにしていますよ。」まさかの即日合格。これまで俺のオーディションをダメにしまくってきたあの作品が、あれのおかげで合格する日が来るとは…。
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