第3話  え、妖精?

 小田くんは言った。妖精を探してると。

 妖精……って、アニメとかで出てくるちっちゃい人みたいなやつ?


 ん? どゆこと?


「おいおい五年生にもなって、アニメと現実の区別もつかないのか~?」


 ケラケラと笑いだすダイキチ。

 ちょっとそんな言い方ないでしょうよ。本当に性格悪い奴!


「そんなんじゃ天下とれませんよノブナガこう!」

「あはは! ダイキチ~元々ノブナガは天下とってないって!」

「マジか! てかそれにこんな夢見がちな奴がノブナガだったら天下どころか名前も歴史に残らないか! ギャハハ!」


 うわ最低……

 少し変な事言ったくらいでそこまでバカにする?

 ノブナガって名前言いにくそうにしてたのも、こうやってからかわれるからだったんだろうね……


「静かに! これからクラスのお友達になるんだから! 大内くん達もいい加減にしなさい!」


 さすが先生! 頼りになるう!


「まあ……そうだよね。誰も見た事もないし、信じたりもしないよね」


 あたしは不意に見えた、小田くんの悲しそうな表情に胸が苦しくなった……

 傷ついてないかな……?




 ♢




 ――休み時間。


 当然ながら、小田くんは女子達に囲まれて質問攻めに合ってた。まあすごいイケメンだからね~


 好きな物とかよく見るテレビ番組だとか、いろいろ聞かれてる。でもなんか適当に返してるように見えるね。女子達はそんな様子に気づいてなさそうだけど。


「ところでさ、小田くん妖精がどうとか言ってたじゃん」


 ――!

 一人の女子がついにその話題に踏み込んだ!

 それそれ! あたしもそれについては詳しく聞きたい所だったんだよ!


 なんか非日常みたいな雰囲気だし! 気になるんだよねいろいろと!


「うちも妖精好きだよ~。頑張り妖精アルミンとか!」


 ……それアニメじゃん。あたしも見てたけど。そういう事じゃないと思うけどなあ。


「そのアニメはボクも見てたよ」


 あれ? 食いついた?


「まあでも、現実の妖精とはいくらか違ってたけどね。あのアニメはみんなに見えてたけど、現実の妖精は誰にでもなんて見えないし、それに妖精=羽があるわけじゃないんだよね。それに良い子ばかりじゃない。妖精も人と同じでいろんな種類がいるからね。それに……」


 うわわ! ま、マシンガントークってやつ!?

 他の話には一言二言しか返さなかったし、クールだと思ってたのに、興味あることにはす、すごいしゃべるんだね……


 女子達も目をぱちくりして驚いてるよ。これじゃオタクっぽくて引かれるかもよ?


「すごーい! 本当に好きなんだね!」


 ガク~ッ!!

 全然大丈夫だったあ~! イケメンパワーつえええ!


「何してんの~エミコ」


 お笑い番組みたいに、イスからずっこけたあたしを冷ややかに見るルリカ。

 ……確かにリアルでずっこけするのはサムいか……


「と、ところでルリカ! どう小田くん、ルリカのイケメンレーダーにヒットする?」


 恥ずかしくなって話題を変えてみた。一応ルリカのおめがねにかなうか確かめたかったところだしね!


「そだね~確かめてみるよ」


 口でピピピと電子音っぽい声を出して、レーダーではか素振そぶりをする。もちろんレーダーなんてつけてないよ。

 ルリカはこういうお遊びが好きなんだ。


「こ、これは……イケメンランクA相当!? 同世代じゃNo.1だよ~! 文句なしだね」


 おお! ルリカのおすみ付き! となるとやはり文句なしのイケメンさんなんだね!

 これは普通のクラスメイトじゃないぞ~!


「ちなみにルリのお兄さんとかと比べると?」

「下だよ~。にいに達に勝てるわけないじゃん。レーダー壊れるもんあの二人は」

「そ、そうなんだ」


 あたしからしたらここまでのイケメン、今まで見たことないって感じなのに。ルリカのお兄さん達何者? 見たことないんだよね。


 あたしは目線を小田くんに戻す。相変わらず妖精トークだと楽しそうに話してるよ。


 妖精かあ……

 興味あるな。


 本当にいるなんて思えないけど、もし、もしもいるとしたら……

 なんか楽しそうだよね。


 今は女の子達に囲まれてて話しにくいから、放課後聞いてみようかな?





 ♢





 ――放課後。


「おい並み子~帰ろうぜ……」

「パス!」


 あたしはダイキチの誘いを断って、小田くんに話しかけようとする……けど……


「小田くんお家どこ?」

「一緒に帰ろうよ!」


 ……だよね~

 誘われるよね~

 他の女の子達から!


 どうしよ。さすがに押し退けて誘えないよ……

 そう思いながら、遠目で小田くんを見つめてたら……


 カタカタ……


 ――ん?


 今なんか、小田くんの筆箱動かなかった? 地震? いや揺れてなんかないよね?

 小田くんの手は離れてるから触ったとも思えない……


 すると小田くんも筆箱の異変にでも気づいたか、掴んで後ろに隠す。

 ――なんで?


「ちょ、ちょっと家庭科室に忘れ物!」


 そう言うと小田くんはランドセルを置き、走って教室を飛び出した。

 すぐ戻ってくると思ってる女の子達は動かない。


 ――ここだ!


 話しかけるチャンス!


 あたしもすかさず小田くんを追いかける。すると走ってる道中……


「教室の中で話しかけるなよ……」


 ……小田くんは持ってる筆箱に話しかけていた……



 

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