連作短歌「ぼうふらの空」

神崎 小太郎

全一話 しずくの詩(うた)

 日陰にも

 息ある僕は

 水たまり

 ゆらゆら揺れて

 空を夢みる


 乾く風

 昼下がりには

 背を押して

 光の針が

 羽根を貫く


 ひとしずく

 涙 こぼれて

 空に舞い

 線路の向こう

 雲が手を振る


 乾くだけ

 そんな日ばかり

 続く午後

 アスファルトに

 眠るまどろみ


 カラス来て

 驚き隠れ

 息ひそめ

 濡れ葉の上で

 心つなげる


 空を見て

 子どもの瞳

 映す水

 冷たき視線 

 胸に降り積む


 もがいても

 届かぬ先に

 ただ焦がれ

 ベランダの奥

 誰かの視線


 やがて知る

 僕はボウフラ

 さだめ受け

 霧吹きひとつ

 声も出ぬまま


 空の雲

 僕をさらって 

 流れてく

 夢はまだそこ

 水の記憶に


 もし僕が

 羽をもらえた

 その朝に

 ひとすじ光

 空をめざして



 連日続く途方もない熱波のせいで、身も心もふらふら。ペットボトルの水を口に含みながら、気づけば――切なく儚い命の「ぼうふら君」に成り代わり、短歌を詠んでいました。初めての短歌創作なので、うまく詠めていないかもしれませんが、どうぞお許しください。


 第1~8首:ぼうふらとしての現実と運命(生と死)。

 第9首:命の終わりと水の記憶。

 第10首:もし生まれ変われたら――という希望の飛翔(幻想)。


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連作短歌「ぼうふらの空」 神崎 小太郎 @yoshi1449

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