第5話
「おや。一応点呼取ろうか。二人ぐらい少ない気がするから。
「
「なんだそうなの。それは心配だ。徐庶君、なんなら君も見に行ってもいいんだよ。
「ありがとうございます。ですが、今は遠征に集中したいので」
「そうか。いや、無理にとは言わない。司馬懿殿が許可なさったなら伯言君のことはいいんだ。許可なさってないもう一人どうした」
尋ねられた楽進が、はいっ、と元気よく頷く。
「
「
「ええっ⁉ 俺がですか⁉」
「君は郭嘉大先生に憧れているんだろう。このままじゃ憧れの郭嘉大先生が司馬懿殿にその素行の悪さで目をつけられて長安に送り返されるかもしれんぞ。
長安に送り返されるだけで済めばいい方だ。
もっと最悪だと、清く正しく厳かにが信条の
「よくはないですけど、荀彧殿に十字固め決められてる人、賈詡先輩以外に見たことありませんよ……」
「やあ、みんなお揃いで。おはよう。
私を待っててくれたのかな?」
郭嘉が優雅な足取りでやって来る。
「まあ、ある意味であんたを待ってはいた。
勝手な行動いい加減慎めよ先生。あんたほんといつか司馬懿殿に怒られるからな。
そのとき俺は立場上あんたのこと庇ってやれないよ?」
「うん分かった慎む慎む」
「二回言う奴は絶対慎む気がない奴だよな」
「美女が優しく起こしてくれたから寝坊しなかった。誉めて」
いつも通り華やかな笑みを浮かべ、両腕を広げて揺らしながら寄って来た
「いつか本当にお前を殴りつけてやりたい」
「もういい。先生に構ってたら百年経っても涼州に着かねえ気がするからな。
とにかく進軍進軍進軍だ! グズグズしてると先行してる
俺たちが決して行軍サボってないという所をお見せしてこい。頼むぞ」
「はいっ!」
「了解しました」
楽進と李典が出発していく。
肩を軽く叩かれる。
「いいお別れが出来たかな?」
郭嘉が微笑んでいた。
徐庶は彼を見てから瞳を伏せ、小さく笑んだ。
「……はい」
ふと、郭嘉はその徐庶の表情を見た。
それから少し腕を組み、思案したようだ。
「失礼します」
徐庶が郭嘉に丁寧に一礼し、歩き出した。
「死は恐れない、か……」
徐庶の遠ざかっていく後ろ姿を見送る。
(違うよ。徐庶君。
死を恐れず、
何を得るかなんだ。
生を捨てることなんか、子供でも出来る。
でも死を恐れず何かを得ることは、本当に強い者にしか出来ない。
君に足りないのは得る覚悟だ。
捨てる覚悟じゃない)
それが分かる人間かどうかで、
彼はそれから、振り返る。
かつて帝という太陽を戴いた都だ。
そして今は――誰もいない。
朝日の中に静かに眠っている。
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