悪役令嬢、最強魔導師として無双します 〜追放されたけどチートスキルで王国も恋もぜんぶ救ってみせますわ〜

のびろう。

プロローグ『断罪の舞台で、わたくしは微笑む』

――「それでは、リディア・アルヴェイン。貴女に婚約破棄と、断罪を宣告します」




ああ、来たわね。このセリフ。




玉座の間に響いたその言葉に、空気がざわめいた。


臣下たちはざまあ見ろとばかりに目を輝かせ、貴族令嬢たちは口元を抑えて笑っている。


──わかってる。これが、乙女ゲームの“断罪イベント”。


本来ならここで、悪役令嬢は泣き崩れて、すべての罪を認めて退場する……はずだったのよね。




でもね。




わたくし、“悪役令嬢”として転生した女ですもの。


あまつさえ、前世はブラック企業勤めでボロボロにされて、


最愛の人に婚約破棄されて、交通事故で死んだ、地味な29歳OL。




たかが“断罪”なんて、痛くも痒くもないわ。


だって、あの時よりは、ずっとマシですもの。




「……それで?」




口角を上げて、王太子殿下を見下ろす。


自信たっぷりに断罪を宣言した彼は、わたくしの瞳に一瞬たじろいだ。


──残念だったわね。この世界では、わたくし、“傾国の美少女”って呼ばれてるの。


そりゃあ、あなたの目にも魔性が刺さるでしょうよ。




「その程度で、わたくしが泣いて許しを乞うと思って?」




ざわ……と周囲の空気が震えた。


でも止まらない。わたくしは、止まらないわ。




「王太子殿下。ご安心なさい。わたくしが“悪役”なら――」


「これから始まるのは、英雄譚ですわ」







あの日の記憶が、まだ胸に焼きついてる。


満員電車に揺られて、仕事に追われて。


彼と同棲していたアパートのカーテンが揺れていたっけ。


──でも帰ったら、彼の隣には、別の女がいたの。




『ごめん、俺……お前より、可愛い子と付き合いたいんだ』




スマホのロック画面、彼の顔写真を見て、指先で消した。


指輪を外して、鞄にしまって、それきり。




誰にも言えなかった。誰にも縋れなかった。


泣くのも、怒るのも、誰のためにしていいかわからなかった。




そして――気づけば、わたくしは異世界にいた。


目を覚ましたのは、**“乙女ゲームの悪役令嬢”**の身体の中。


周囲はわたくしを侮り、王子に婚約破棄される未来が決まっていた。




「……ふふっ」




その運命、ねじ伏せてやる。


この美貌で、この知恵で、この手に宿る魔導の力で。




わたくしは、誰にも踏み躙られたりしない。


“誰かのヒロイン”じゃなく、わたくし自身の物語を歩くわ。







追放されたわたくしが向かったのは、王都のはるか北。


人里離れた古代の遺跡。




そこで、わたくしは目覚める。


世界の理を記す文字、天空から降りる魔力の奔流。


そして──彼女と出会った。




「……あなたが、選んだの?」




「うん。やっと来てくれたね」




そこにいたのは、小さな少女の姿をした“精霊”。


虹色の髪に、七色に揺れる瞳。


この世界に一柱しかいないという、伝説の精霊・フィーネ。




彼女が微笑むと、空間が震えた。




「あなたなら、できるよ。“世界を変える”って、そういう瞳をしてる」




──その瞬間、わたくしの中で何かが弾けた。




光が身体を貫く。


血と骨に刻まれるような、熱い魔導の紋様。


脳裏に響くのは、古代語と呪文、千年の記憶。




《ユニークスキル──アルカ・コード、解放》




「……これが、わたくしの、力?」




手のひらが光に包まれる。


わたくしの言葉に応じて、魔法陣が回る。


構築、最適化、再演、応用、展開……すべてが、わたくしの命令に従う。




これから始まるのは、ただの復讐劇じゃない。




これは、“世界を救う悪役令嬢”の物語。




そして、


「……わたくしを“愛してくれる”誰かに、出会う物語」でもあるの。




次にわたくしが泣くときは、


誰かの胸の中で、しあわせの涙を流すときよ。




その未来を、奪われたくないのなら――


せいぜい、楽しませてちょうだい? 王子様たち。

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