悪役令嬢、最強魔導師として無双します 〜追放されたけどチートスキルで王国も恋もぜんぶ救ってみせますわ〜
のびろう。
プロローグ『断罪の舞台で、わたくしは微笑む』
――「それでは、リディア・アルヴェイン。貴女に婚約破棄と、断罪を宣告します」
ああ、来たわね。このセリフ。
玉座の間に響いたその言葉に、空気がざわめいた。
臣下たちはざまあ見ろとばかりに目を輝かせ、貴族令嬢たちは口元を抑えて笑っている。
──わかってる。これが、乙女ゲームの“断罪イベント”。
本来ならここで、悪役令嬢は泣き崩れて、すべての罪を認めて退場する……はずだったのよね。
でもね。
わたくし、“悪役令嬢”として転生した女ですもの。
あまつさえ、前世はブラック企業勤めでボロボロにされて、
最愛の人に婚約破棄されて、交通事故で死んだ、地味な29歳OL。
たかが“断罪”なんて、痛くも痒くもないわ。
だって、あの時よりは、ずっとマシですもの。
「……それで?」
口角を上げて、王太子殿下を見下ろす。
自信たっぷりに断罪を宣言した彼は、わたくしの瞳に一瞬たじろいだ。
──残念だったわね。この世界では、わたくし、“傾国の美少女”って呼ばれてるの。
そりゃあ、あなたの目にも魔性が刺さるでしょうよ。
「その程度で、わたくしが泣いて許しを乞うと思って?」
ざわ……と周囲の空気が震えた。
でも止まらない。わたくしは、止まらないわ。
「王太子殿下。ご安心なさい。わたくしが“悪役”なら――」
「これから始まるのは、英雄譚ですわ」
◆
あの日の記憶が、まだ胸に焼きついてる。
満員電車に揺られて、仕事に追われて。
彼と同棲していたアパートのカーテンが揺れていたっけ。
──でも帰ったら、彼の隣には、別の女がいたの。
『ごめん、俺……お前より、可愛い子と付き合いたいんだ』
スマホのロック画面、彼の顔写真を見て、指先で消した。
指輪を外して、鞄にしまって、それきり。
誰にも言えなかった。誰にも縋れなかった。
泣くのも、怒るのも、誰のためにしていいかわからなかった。
そして――気づけば、わたくしは異世界にいた。
目を覚ましたのは、**“乙女ゲームの悪役令嬢”**の身体の中。
周囲はわたくしを侮り、王子に婚約破棄される未来が決まっていた。
「……ふふっ」
その運命、ねじ伏せてやる。
この美貌で、この知恵で、この手に宿る魔導の力で。
わたくしは、誰にも踏み躙られたりしない。
“誰かのヒロイン”じゃなく、わたくし自身の物語を歩くわ。
◆
追放されたわたくしが向かったのは、王都のはるか北。
人里離れた古代の遺跡。
そこで、わたくしは目覚める。
世界の理を記す文字、天空から降りる魔力の奔流。
そして──彼女と出会った。
「……あなたが、選んだの?」
「うん。やっと来てくれたね」
そこにいたのは、小さな少女の姿をした“精霊”。
虹色の髪に、七色に揺れる瞳。
この世界に一柱しかいないという、伝説の精霊・フィーネ。
彼女が微笑むと、空間が震えた。
「あなたなら、できるよ。“世界を変える”って、そういう瞳をしてる」
──その瞬間、わたくしの中で何かが弾けた。
光が身体を貫く。
血と骨に刻まれるような、熱い魔導の紋様。
脳裏に響くのは、古代語と呪文、千年の記憶。
《ユニークスキル──アルカ・コード、解放》
「……これが、わたくしの、力?」
手のひらが光に包まれる。
わたくしの言葉に応じて、魔法陣が回る。
構築、最適化、再演、応用、展開……すべてが、わたくしの命令に従う。
これから始まるのは、ただの復讐劇じゃない。
これは、“世界を救う悪役令嬢”の物語。
そして、
「……わたくしを“愛してくれる”誰かに、出会う物語」でもあるの。
次にわたくしが泣くときは、
誰かの胸の中で、しあわせの涙を流すときよ。
その未来を、奪われたくないのなら――
せいぜい、楽しませてちょうだい? 王子様たち。
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