親友と、好きな人

おおにし しの

本編

授業が終わり、変える支度をしているとき、親友が唐突にあるカミングアウトをした。


「僕、Mと付き合ってるんだ」


その言葉を聞いた瞬間、数多の感情が頭の中を埋め尽くした。

親友に対する嫉妬、怒り、困惑。


「3ヶ月くらい前から」


なぜそれを今言うんだ。

お前は知ってるはずだろ、俺がMを好きだって。

なぜ付き合ったときに言わなかった。


泣きそうになるのを必死に堪えながら、俺はひとりで帰った。


帰ってから、泣いた。

声も出さずに、ただただ、涙を流していた。


生まれて初めて、心の底から泣いた。





「僕、Mと別れたんだ」


その言葉を聞いた瞬間、数多の感情が頭の中を埋め尽くした。

七割八分の喜び、二割一分の同情と、その他の感情。


「今ならチャンスかもね」


それをお前が言うか。

二割ほどあった同情も消え失せそうだった。


「正直引きずってる」


親友が別れて、引きずってるのに、俺はそれを喜んでいる。

わかってはいたけど、本当に俺は、どうしようもなく、最低な人間なんだな。

親友の不幸体験で、喜べるような人間だったんだな。

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