エミリーとアスラーの旅日記
「先生、オススメの本とかありませんか」
「助手君も本を読みたいのかね」
「掃除してばっかりで最近読んでいないもので」
先生は天井の方を見上げてると、1冊の本が手元に降ってきた。
「ならこの本がオススメだな」
「この本は一体なんですか」
「エミリーとアスラーの旅日記と言ってね、私のお気に入りだ」
1009年作。
「先生のお気に入りは何個あるんですか」
「たくさんだ。君の物語も、お気に入りの1つだ」
手渡された本を手に、部屋の本棚に腰掛ける。
むかし、あるところにエミリーとアスラーという二人が暮らしていました。エミリーとアスラーはとっても仲が良く、毎日のように遊んでいました。ある日喧嘩してしまうと二人は家を出ていきました。エミリーは悪かったと思い、家に帰りました。しかし、家のどこにもアスラーの姿はありませんでした。エミリーは心配になり、アスラーを探しに行きました。三日三晩探しましたがアスラーは帰って来ることはありませんでした。さらに半月したほど、アスラーは道端で死んでいました。アスラーはエミリーを好物を持ったまま死んでいました。エミリーは自分がアスラーを殺してしまったと深く後悔してしまいます。アスラーは家を出た後、エミリーの好物を買い仲直りしようと帰っていると、背後から誰かに殺されてしまったのです。エミリーを殺した犯人を酷く憎み、殺そうと決断します。エミリーはアスラーを殺した犯人を殺しましたが、怒りが無くなることはありませんでした。エミリーはその後、村で見たものはいませんでした。エミリーは永遠に続く地獄の日々を送るのでした。おしまい。
「先生はこの話が好きなんですか。とても悲しくて、なんというか、虚しかったです」
先生はこっちを向くと優しく言った。
「助手君。君はどっち側の視点で物語を見たかね。エミリー側かい?それともアスラーかい?はたまた外から見てたかい?」
僕は黙りこんでしまった。そんな深く考えてなかった。僕の感想はエミリーの方に近いのかな。
「……エミリー側だと思います」
「そうか。悲しくて虚しかったか。私はねアスラーがとても可哀想だと思ったよ。」
「先生?」
先生は涙を流していた。
「助手君、この話をよく覚えておくといいよ。1つだけアドバイスだ。自分を責めるな」
「はい」
「それはそうとして掃除を続けたまえ」
うげぇ。また掃除か。次本を読めるのは何年後になることやら。
その日は珍しく先生が客が来るのを予知出来なかった。客は青年で青い髪をしていた。客は本を求めるのではなく、先生と話をし始めた。遠くであまり上手く聞き取れなかった。その時先生は険しい顔をしていた。客は数分で帰った。たったの一冊も読まずに。
「先生、今のは」
先生は僕は軽く睨むといつもとは違う声色で言ってきた。
「助手君には関係無いことだ。気にしなくていい」
先生がこんなことを言うのも初めてだし、こんな声は聞いたことが無かった。何か僕の知らないところで何か起こっている気がしたのだ。
僕は先生に内緒で青い髪について本で調べた。僕が助手を務め始めてからは少なくとも青髪の人はきたことが無い。
本には手かがりはなく、どれも記述がバラバラだった。ただ一つ共通していることは、神出鬼没。ただそれだけ。
そうして捜索して数日がたった頃だった。
「助手君。降りてきたまえ」
一番下には先生と向かい会う感じで、もう1つ椅子が用意されていた。
「座りたまえ」
「なんでしょうか」
「話そうか迷ったか君が青髪に調べ始めたならバレるのも時間の問題なので話そうと思う」
「知ってたんですか……」
「私の図書館だぞ、全て分かる。」
「それで先生、僕になんの話をしてくれるんですか」
「私の過去の話だ。エミリーみたいに後悔はしたくないのでね」
そうして僕に話してくれた先生の過去は壮大で想像もつかないほど自由楽しそうで、同じぐらい悲しそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます