第2話言えなかった言葉
母親からの脅威は、ジャミルからの保護の保証があった後でさえ、ミラにとってますます現実味を帯びて感じられた。その安心感はあまりにも脆く、まるで避けられない別れの前の、ほんの束の間の休息のようだった。
ジャミルの視線が遠ざかるユンの背中から離れ、彼は向き直って、静かに待つミラへと近づいた。ジャミルがその場に着く前に、ミラはか細い声で尋ねた。
「ジャ、ジャミル兄様……な、なぜ私にあのようなことを? ご、ご存知なのですか? この後、きっと私はお母様に罰せられてしまいます。」
ミラの不安を意に介さず、ジャミルは歩みを続け、彼女の真正面で止まった。宙に浮いたその問いに、答えるために。
「ミラ、心配することはない。約束する、僕が君を守る。」
「で、でも……。」
「前に言ったはずだ。でも、なんてない!」
不意に、ジャミルはミラの右手を取り、止まっていた歩みを無理やり再開させた。
「え、ええっ!?」
しばらくして、二つの廊下を抜けると、彼らは執務室の扉の前にたどり着いた。ジャミルは掴んでいた手を離す。彼は扉の前で一瞬黙り込み、すぐにノックもせず、扉を開けもしなかった。代わりに、彼は振り返り、赤くなった手首をさすっているミラに、静かに囁いた。
「僕の言葉を覚えておけ。母上が何を言おうと、僕のそばを離れるな!」
ミラは言葉で返さず、ただ短く、しかし力強く頷いた。その同意を得て、ジャミルはドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を押した。
音もなく開いた扉の向こう、窓のそばに、母親が背を向けて立っている姿が見えた。その視線は、先ほどまでジャミルが遊んでいた草原へと、遠く注がれている。
その紺色の長い髪が、彼女が身にまとう東欧風の優雅な衣服と対照的に流れていた。膨らんだ袖を持つ白いブラウスには、複雑な花の刺繍が施され、まるで胸の上で咲き誇っているかのようだ。編み上げの布ベルトが彼女の細い腰を巡り、魅惑的な古典的オーラを放つその姿を完璧なものにしていた。
ジャミルとミラは、戸口で凍り付いた。ジャミルの表情が変わり、その眼差しには、母親が着ている服を観察する戸惑いの色が浮かんでいた。かすれた低い呟きが、彼の唇から漏れる。
「は、母上……! な、なぜ母上が、そのような服を?」
ジャミルの問いに、母親は素早く振り返った。彼女は二人を冷ややかに見つめ、その鋭い視線は、執務室の中に生意気にも立っている使用人の子供、ミラを突き刺した。
部屋の緊張とは対照的なゆったりとした足取りで、女は自分の机へと歩いていく。その氷のように冷たい声がジャミルの夢想を打ち破り、彼を現実へと引き戻した。
「ジャミル。なぜその使用人の子を連れてきたのですか?」
その冷たい問いは、ミラの心臓を直接突き刺す短剣のようだった。意識が彼女を打ちのめす。自分はここにいるべきではないのだ、と。自分の役目は案内することであって、干渉することではない。
十分すぎるほど丁寧な、しかし心を抉るような口調で、ミラは大奥様の問いに身をかがめて答えた。
「私の差し出がましい振る舞い、お許しください、奥様。それでは、私はこれで失礼ー―」
だが、ミラが身を起こして去ろうとしたその時、ジャミルが再び彼女の手を掴んだ。その突然の行動にミラは息をのみ、その視線は戸惑いを物語っていた。
母親自身を含め、誰の予想にも反して、ジャミルは全く異なる態度でその問いに返した。奇妙な戸惑いのオーラは消え去り、冷たいほどの断固とした態度に変わっていた。
「僕がここにいるよう命じたのです、母上。この施設の第一規則、『使用人は主人の命令に絶対服従すること。拒否した場合は重罰に処す』に従って。ですから、僕がこの権利を行使して彼女をそばに置いても、母上は異存ないはずです。」
自らの規則を逆手に取ったジャミルの論理的な反論に、母親は言葉を失い、その瞳には悔しさの光が閃いた。彼女は下唇を噛み、目を細め、無意識のうちにかすれたうなり声が漏れる。彼女は抗えなかった。自らが作り出した絶対的な規則が、今やその手を縛り、豪奢な椅子の上で沈黙を強いていた。
一方、ミラの体を硬直させていた緊張は、一瞬にして解けていった。ジャミルの弁護が、彼女が再び呼吸をすることを可能にした支えとなったのだ。
命令を待つことなく、ジャミルはミラを戸口から引き離し、ゆっくりと扉を閉めた。彼は少女を机の近くまで導き、その手は固く握られたままだった。
しかし、彼らがたどり着く前に、母親は再び立ち上がり、整然と並んだ棚から一つの書類を取り出した。
「あなたはもう十歳になり、魔法に関する学科の成績に赤点はありません。」
彼女は書類を机の上に置き、それを開いた。
「あなたにはその魔法の才能を伸ばし続けてほしいのです。この街で最も名高い学校に通わせてあげます。」
母親が書類に記された名を指差した途端、ジャミルはそれがどの学校かを即座に理解した。イグニスター学院――ヴァーニ神政圏全土で、ただ有名なだけでなく、恐れられてもいる名門。
ジャミルは即座に、ヴァーニプラの空を突き刺すそのシルエットを思い浮かべた。黒々とした玄武岩で築かれた熱砕ゴシック様式の教育の城塞。その頂では『灯台の塔』が永遠に見下ろしている。首都にとって第二の太陽となる、永遠の炎の柱だ。その暗く攻撃的な建築は、最高峰にそびえるヴァーニラージャ宮殿――白亜の大理石と金で優雅に輝く聖なる複合施設とは、意図的に対照をなしていた。
もし宮殿が約束された天国ならば、イグニスターはそれを鍛え上げる地獄。エリートたちを王国の柱へと作り変えるか、あるいは灰になるまで砕くかの、るつぼである。そして今、ジャミルはその炎の中へと、直接投げ込まれようとしていた。
ジャミルの驚愕の表情を見て、母親は満足げに微笑んだ。彼女の心の中では、もはやその学校の詳細を説明する必要はなかった。
「明日の朝、準備を終えておきなさい。価値があり、持って行くのに非常に重要だと思うものをまとめなさい。」
「ですが、母上。なぜ僕をそこへ?」
息子の問いの裏で、母親の心に薄い笑みが浮かんだ。ジャミルは自分の血肉を分けた子だ。だが、彼を送り出すことに躊躇いはない。自分の計画が、たった一人のために乱されてはならないのだ。ミラのための、計画が。少し前のあの出来事以来、彼女はこの少女の運命を決めていた。十五歳になった時、奴隷として最も遠い街の夜のクラブに売り飛ばす、と。
「説明はありません! さあ、今すぐ荷物をまとめなさい。私が激怒するのを待つことのないように。」
母親の断固とした口調は、逆にジャミルの心に疑念の警鐘を鳴らした。予感だけでは不十分だとわかっている。証拠がなければ、何もできない。だが、この裏には何かとてつもなく間違ったことがあると、彼の本能が叫んでいた。
議論は終わった。ジャミルとミラは息詰まるような沈黙の中、部屋を出た。ジャミルの警戒心は高まっていた。扉のすぐ外で、彼は何かを言おうと振り返ったが、その言葉は途切れた。
「ミラ! 僕は――」
悲しみの入り混じったか細い声で、ミラが彼を遮った。
「わかっています。」
知らず知らずのうちに、一粒の涙がミラの目尻からこぼれ落ちた。
「ジャミル兄様は、この施設を去ってしまうのですね。」
その光景に、ジャミルは凍り付いた。周りの世界が回転を止め、彼の固まった唇から、たった一言だけが、かろうじて絞り出された。
「ミラ!」
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