桜の月
湍水仁
第1話
私たちが知らない時代。
月でいちばん高い山。
そこには桜の木があります。
大きな大きな桜の木です。
季節はない月ですが、
風の吹かない月ですが、
命のない月ですが、
その桜はただ1人
春に咲き、そして散ります。
そんな当たり前の繰り返し。
けれど青い星の桜と違うのは
舞い落ちず、舞い続けます、
散った花びらは舞い続けるのです。
それはまるで星のよう、
それはまるで命のよう、
長い長い時をへて、
月にはないはずの風に靡かれて、
桜の花びらは舞い続け、
桜の木の周りから、
果ての月まで舞い進むのです。
だからこそ、
月の桜は永遠で、
そのうち花びらに覆われて、
月は桜へ変わるのです。
桜の月へとなるのです。
遠い遠い青い星で
今を生きる私たちは空を見ます
鮮やかな桜の月。
それはとてもとても眩しくて、
私たちは見ていられずに目を背け、
薄紅の光に照らされた、
青い星の桜を見て、
枯れゆく姿を偲ぶのです
ただ、ただ、偲ぶことしかできないのです。
桜の月 湍水仁 @hayami000
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