【不思議体験】受け継がれた力
母方の家系には、古くから不思議な力が受け継がれているらしい。
特に曽祖母は、その力が非常に強かったと聞く。
母の話によると、わざわざ遠くから、曽祖母に運命を視てもらいに多くの人が訪れていたそうだ。
祖母もまた、霊が視えるという人だった。
しかし、その力は晩年になるにつれて彼女を怖がらせるようになり、夜は一人では決して出歩かないほどだったと聞いている。
そして、私の母。
彼女は「予知夢」を見る人だ。
些細な日常の喧嘩を夢に見ることもあれば、私がかつて自伝にも書いたように、死にかけたり、死にたいと強く願っていた時期(親友が30歳を迎えた時に自殺したこともあり、特に深く闇に沈んでいた頃)には、私が「闇に呑み込まれて光が消えかけている」夢を見たという。
日常のささやかな出来事から、人の命に関わるような大きなことまで、母の夢は時に未来を映し出す鏡となる。
私自身は、予知夢をめったに見ることはない。
その代わり、人の「死に際」が直感的にわかる。
そして、普通の人には視えないものが、私には視えていた。
ここからは、私自身の具体的なエピソードだ。
13歳の春、絵を描くことが大好きだった私は、当時飼っていた愛犬の絵を、どうしても自分の手で描いて残したくて、がむしゃらに筆を動かしていた。
しかし、その絵が完成することはなかった。
絵を描き始めてから約1か月後、愛犬は毒を食べて亡くなってしまったのだ。
あの時、私を絵に駆り立てた衝動は、もしかしたら愛犬の「死に際」を無意識に感じ取っていたからだったのかもしれない。
同じく13歳の秋、私は大好きだった母方の祖父に、どうしても会いたくてたまらない時期があった。
中間試験中だったにもかかわらず、その気持ちは日ごとに強くなり、我慢できないほどだった。
学校から帰宅し、その熱い思いを母に話そうとした、まさにその時、一本の電話が鳴った。
私が出ると、それは祖父が自殺して亡くなったという知らせの電話だった。
あの日に高まっていた「会いたい」という感情は、祖父の死を事前に感じ取っていた私の第六感だったのだろうか。
祖父の葬式も終わり、心が落ち着いてきた頃、ふと、名前も何も分からないけれど、あるお婆さんが妙に気になった。
数日後、当時仲が良かった友達が、突然一週間も学校を休み、お婆さんが亡くなったということを聞いた。
その時も、私の中の何かが先に察知していたのかもしれないと、漠然と感じた。
20歳の時、友人と集まる場に、初対面の人も何人かいた。
そのうちの一人が、突然私にこう言ったのだ。
「ごめんなさい。あなたのオーラが強すぎて、気持ち悪くなってきたんで、少し離れてもらえますか?」
思わぬ言葉に、私はただ苦笑するしかなかった。
その時まで、自分の何かが人とは違うなどと考えたこともなかったからだ。
そして24歳の時、中学校からの付き合いの友人と旅行に行った先で、有名な占い師さんがいるとのことで、試しに視てもらうことになった。
幕が張られた一角には、有名人、特に相撲取りの写真がたくさん貼ってあったのを覚えている。
期待と少しの緊張を胸に幕をくぐると、占い師さんと私は、お互いに、その場でぴたりと動きを止めた。
占い師さんは、私の顔をじっと見つめて、いきなりこう言った。
「あなた、霊感すごく強いね」私はただ「そうなんですか?」としか答えられなかった。
すると占い師さんは、迷うことなく「あなたは手相を見ようか」と言った。
私の手を占い師さんが取ったその瞬間、まるで静電気が走ったかのような強い衝撃が走った!
あまりのことに、私たちはお互いに手を離してしまった。
占い師さんは少し驚いた顔で、「手を広げて見せて」と促した。
占って欲しい項目が特になかった私は、当たり障りのない会話を交わし、最後に占い師さんは「あなたのオーラを破る(突破)ことができなくて、霊視ができなかったけど、すごく良いもの持ってる」と、褒めて(?)くれたのだった。
けれど、不思議なことに、その力を自分自身の未来や出来事に活かせないのが、いつも悔やまれた。
そして2015年、母のいとこ一家が遊びに来た時のこと。
帰宅したあとに私は母に「オバちゃん、病院行ったほうが良いよ。何がってわけじゃないけど勧めたほうが良い」と伝えたが、母は「どこからみても元気やん」と聞いてくれなかった。それから2か月後、リンパ癌で余命宣告を受けたと知らせが来た。
また2023年にも、母のいとこと会った時、「あ。ヤバい」と感じ、母に伝えた。
母は本気にしなかったが、1か月後に膵臓癌が見つかり、2か月後に亡くなった。
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