第8話 2ー2 王宮の動きとステータス

 遅まきながら俺の住んでいる孤児院に、王宮の経理部門から調査の手が入ったぜ。

 牢獄から脱走した俺を探すためではなくって、王宮から出されていた支援金の額の追跡調査だった。


 マザー・アリシアがきちんと帳簿を付けていたおかげで、実際に孤児院に渡されていた額が確認できたようだね。

 その調査から二か月後、宰相以下かなりの数の貴族が公職から更迭こうてつされたとの噂が王都を駆け巡った。


 俺は、噂の方ではなくって、妖精sから正確な情報を受け取っていたけれどね。

 少なくとも公金横領の罪に問われた者は、損害額を弁済したうえで、更なる罰金を科された上で蟄居ちっきょさせられている。


 残念ながら、ワルの貴族家をつぶすまでには至っておらず、爵位はそのまま嫡男等が継いでいるようだね。

 でも経歴にキズがついたわけだから、後継者が余程頑張らないとこのままでは爵位の降格処分になるらしいよ。


 十年間の猶予の中で相応の功績を上げないと、侯爵は伯爵へ、伯爵は子爵へ、子爵は男爵へ、男爵は準男爵へと降格されることが王命として出され、後継者にその旨が伝えられているようだ。

 特に男爵から準男爵への降格は、場合により貴族と見做みなされなくなることから、当人たちにとってはすごく大変なことらしい。


 それから俺の身の回りの世話役となっていた者の処分だが、男性二人は罰金で金貨十枚の刑に処せられた上に解雇され、王都から追放処分を受けた。

 俺を殺そうとまでしていたわけだから、処分がぬるんじゃないかとは思うけれど、俺の存在自体を公にすることができないのでこんな処分になったようだ。


 ちなみにこの従者三人は、罰金刑を受けた上で追放処分となって、王都の外に出た途端、王宮所属の闇の手が彼らを処刑していた。

 おそらく、彼らがやけになって俺の存在を外部に漏らすことを恐れたのだろう。


 一方、メイドを務めていた女性三人は、情状酌量の上で𠮟責しっせきだけで済まされたようだ。

 前世で言うなら公務員の懲戒免職処分と訓告処分ぐらいなんだろうな。


 同時に、この女性三人からの事情聴取で第四王子に対するひどい扱いが王宮内の一部だけだけれど、表面化した。

 流石にこの一件は、俺の存在とともに王宮内での恥部と見做されたので、王宮外に噂が出て行くことはないが、同時に両親である父と母が大いに反省し、悔やんでいたようだ。


 しかしながら、一方で第四王子が生まれていたこと自体がそもそも公表されていないために、第四王子の失踪しっそうは、そのまま王家の秘密とされたままだった。


 ◇◇◇◇


 俺がハンターになって半年後には満年齢で十歳になった。

 でも、未だに下水道清掃の仕事は続けているんだぜ。


 だって実入りがいいですもん。

 一日1時間足らずの労働で大銀貨8枚ですからねぇ。


 実は一度単価を半分に下げようと企てた者が居たのだけれど、俺が清掃活動から手を退くとすぐに元の報酬に復活したよ。

 俺は必ずしも大銀貨のためだけで下水道の掃除をしているわけでは無いけれど、労働が正しく評価されないのは困るよね。


 だから、ある意味でストライキをしたわけだ。

 生活費ならば既に過剰なほど持っているからね。


 あくせく働く必要はないんだよ。

 マクギアスさんがあせりまくって、俺に何とか清掃を続けてくれないかと頼みに来たけれど、「報酬が元に戻らない限り復帰しません」と、ハッキリ宣言してやったぜ。


 その結果、五日も経たずに元の大銀貨8枚に戻った。

 その時、俺は9級になっていたから、それ以降、下水道の清掃は二日に一回のペースにして、二日に一度は王都外に出て魔物や害獣の狩猟をするようになったんだ。


 これまで俺のレベルはほとんど上がらなかっただけど、魔物狩りを始めると一気に上昇に転じた。

 ギルドに入ってから7か月目のスタータスは以下の通りだ。


名前:リック・バウマー(フレドリック・ブライトン・ヴァル・ハーゲン)

年齢:10歳(数えで11歳)

職業:ハンター

備考:孤児(ハーゲン王国第四王子、忌み子)

レベル:16


*基準スペック

HP(生命力) :78

MP(魔力) :21385

STR(筋力) :85

DEX(器用さ) :84

VIT(丈夫さ、持久力) :78

INT(知性) :64

MND(精神力) :52

LUK(運) :6(+2)

AGI(敏捷性) :57

CHA(魅力) :16

言語理解 :5(MAX)


注1) レベルは急激に上昇しています。

 基準スペックは概ね向上しており、前回と同じく魔力の上がり方が極めて大きい。

 LUCは6になり、更に上昇する可能性あり。


*スキル:

◆◇◆ 武術系 ◆◇◆

剣術 LV4

槍術 LV4

棒術 LV4

盾術 LV4

弓術 LV5

格闘術 LV4

投擲術 LV5

騎乗術 LV1


注2)時間がある際には種々の訓練を亜空間内で行っている。

 ゴーレム馬を使った乗馬訓練もそれなりに継続しているが、騎馬術に伸びは認められない。


◆◇◆ 魔法系 ◆◇◆

火魔法 LV5

水魔法 LV6

風魔法 LV5

土魔法 LV5

氷魔法 LV5

闇魔法 LV3

回復魔法 LV2

空間魔法 LV8

光魔法 LV6

生活魔法 LV7


注3) 魔法系は、特に魔物狩りで使用することの多かった、水、土、闇、空間、光、生活魔法が伸びている。


◆◇◆ 技能系 ◆◇◆

魔物調教 LV0

創薬・調剤 LV2+

料理 LV2+

家事 LV4+

鑑定 LV5+

鍛冶 LV4

心眼 LV3

錬金術  LV5

索敵 LV4


注4) 依然として魔物調教は機会が無く、訓練そのものができていない。

 魔物狩りで試しても良いのだけれど、調べてみると王都で従魔の登録をした者は居ないらしい。

 辺境地域でこれまで一例だけが記録されているにすぎないらしいので、今のところは控えている状況だ。

 仮に所謂テイムができたにしても、王都内には連れて入れない可能性が高いよな。

 創薬・調剤、料理、家事については、相応に手掛けているので伸びが認められる。

 衣服の新たな制作により家事能力(裁縫?)と錬金術能力が上がったようだ。

 鑑定能力の上昇に伴い、心眼も上昇している。

 索敵については、下水道清掃でも伸びたが、王都外に出るようになって特に上昇している。


◆◇◆ 身体系 ◆◇◆

身体強化 LV5

跳躍 LV5

夜目 LV4

闘気 LV3

強靭 LV4


注5) 身体系では、魔力や闘気を纏うことで身体強化の強度を上げることができるようになっている。

 亜空間内での訓練の成果もあるし、王都外での活動で身体系の能力も向上している。


◆◇◆ ユニークスキル ◆◇◆:

精霊召喚 LV2

HP自動回復  LV4

MP自動回復 LV5

無詠唱 LV4

インベントリ     LV7


注6) 精霊の召喚については引き続き試してはいない。

 王都外での活動でも周囲に人目が多いことから、今のところ試す機会がない。

 できれば夜間に王都外の遠く離れた山間部辺りで試そうかとも思っている。

 HP自動回復LV4に上昇したことで、概ね一時間の休憩で肉体疲労は全回復できる。

 MP自動回復のLV5は5時間の睡眠があれば、現在の魔力をほぼ空の状態から満タンにできる程度の回復力だ。


◆◇◆ 装備 ◆◇◆:

ショートソード 3

ショートランス 4

コンパウンドボウ 3

リカーブボウ 2

ベアボウ 3

矢  2500本

六角棒 2

小楯 3

大楯 2

トンファ 2

ヌンチャク 2

サイ 2

革製防具 2セット

革製衣類 4セット

麻擬き衣類 2セット

布製衣類 6セット


注7) 装備類は以前と変えていない。

 防具屋等で装備を揃える必要性を今のところ感じていないんだ。

 王都の外に出たので地中から有用鉱物を抽出して武器を製作することもできないわけじゃないが、9級と言う駆け出しのハンターが持てないような武器を周囲にひけらかすのはまずいだろうからえて控えている状態だ。

 武器が無くても魔法で対応できるから、今のところは放置だな。

 弓も不要ではあるんだが、念のため矢だけは一月に500本ずつ増やすことにしている。

 服装については、自作品を追加、また、市販品の衣類も購入した上で付与魔法で強化を図っている。


◆◇◆ 加護 ◆◇◆:

精霊王の加護

炎の精霊の加護

異世界管理者の恩寵


◆◇◆ 称号 ◆◇◆:

忌み子

異世界管理者が頭を下げし者


注8)その他、加護、称号については変化が無い。



 今の俺は、全般的なステータスから言うと、身体能力だけでおそらく五級から三級程度のハンターに匹敵するぐらいの戦闘力があるのじゃないかとみている。

 経験値は未だ少ないんだが、魔法も使ってまともに戦えば二級ハンターにも楽々と勝てるだろうと思っているぜ。


 従って、9級の受けられる魔物退治や害獣退治では物足りなくなっており、最近は夜にこっそりと王都を離れ、少し離れた山間部に分け入って、9級では受けられないような魔物討伐もしている。

 但し、9級のハンターが本来制限されている狩猟を行って得た代物は、ギルドに納品出来ないし、申告しないのでギルドの実績にはつながらない。

 

 自己鍛錬のためだけに、敢えてしているんだ。

 

 ◇◇◇◇


 ところで、唐突だが、この世界の新年は夏場(?)に在る。

 北半球と南半球とで違いがあるかどうかも定かじゃないんだが、とにかく何故か夏至にあたる日が1月1日の新年で、その日にみんな一歳年を取る。


 そうして、おそらく俺のいる世界が地球と同じような惑星(何せファンタジー世界だから、丸い惑星じゃ無くって、平板な世界かもしれない?)だとしても、この世界の地軸の傾きが余りなくって、季節の変化が余り感じ取れない状況なんだ。

 もちろん日によって暑かったり寒かったりするけれど、これまで一度も雪は降ったりしていないから、間違いなく春夏秋冬の季節の変わり目はほとんど無いと思えるし、俺が居るのは所謂生活のしやすい亜熱帯から温帯の地域だと思う。


 そんな中でも、公転軌道が楕円の為に太陽に最も近い夏至と最も遠い冬至はあるんだ。


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