第5話 1ー5 9歳になりました

 この世界にはお風呂が無いんだよね。

 王宮だって云うのに、浴室も浴槽も無いんだぜ。


 精々、お湯や水を使って布地で身体を拭うぐらいしかできない。

 燃料である薪が安くはないので、浴槽に大量のお湯を張るなんて発想がそもそも無いようだ。


 でも俺は生活魔法のクリーンを使って常時身ぎれいにできるし、二日に一度は亜空間内の風呂場で浴槽に浸かっている。

 西洋式のバスタブだけのお風呂は何となく味気ないし、バスタブの中で体を洗うというのも気に食わない。


 だから、亜空間内に作ったのは、当然のことながら、ジャパニーズスタイルの洗い場のあるお風呂だよ。

 もちろん石鹸もシャンプーも自作した。


 なんだかんだと言って、虜囚りょしゅうでありながら至極便利な生活を送っているんだが、妖精と魔法のお陰で凄く文化的な生活(?)を送っているような気がするね。

 前世の知識と豊富な魔力、それに妖精たちの手助けがあったればこその快適さなんだけれどね。



 それからさらに半年ほどが緩やかに過ぎていった。

 ヒ素の給食は依然として続いているし、混入量も徐々に増えてきたけれど、そもそも口にしていないから何ら影響はない。


 但し、不審に思われたのか、給食時にマルコスが立ち会ったこともある。

 そんなときは、口に入れる素振りでそのままダストシュート入り。


 それを見て安心したのか、立ち合いは一度だけで、二度と食事に立ち会うことは無かった。

 で、俺は昨日で9歳になった。


 現在のステータスは、以下の通りだ。


名前:フレドリック・ブライトン・ヴァル・ハーゲン

年齢:9歳(満年齢)

職業:なし

備考:ハーゲン王国第四王子、忌み子

レベル:1


*基準スペック

HP(生命力) :40

MP(魔力) :8342

STR(筋力) :38

DEX(器用さ) :36

VIT(丈夫さ、持久力) :32

INT(知性) :48

MND(精神力) :33

LUK(運) :5(+1)

AGI(敏捷性) :28

CHA(魅力) :10

言語理解 :5(MAX)


注1) 前回と同じくレベルは上がっていない。

 基本スペックは概ね向上しており、特に魔力の上がり方が極めて大きい。

 LUCは5になり、+もあることから時間をおけば更に上昇する可能性もありそうだ。

但し、何をすれば上昇するのか、その方法が今一わからない。


*スキル:

◆◇◆ 武術系 ◆◇◆

剣術 LV3

槍術 LV3

棒術 LV3

盾術 LV3

弓術 LV4

格闘術 LV2

投擲術 LV3

騎乗術 LV1


注2)種々訓練を亜空間内で行っているのは変わらない。

 土の妖精グロンに頼んで土を亜空間内に運び込んでもらった。

 その上でゴーレムを作成、これを使って訓練相手にしたことから、スキルがいずれも上昇した。

 最近始めたばかりなのと、体格がまだ小さいので格闘術の方は上がりにくい。

 ゴーレム馬も製造して乗馬訓練としゃれこんでみたが、正直なところ動きが生きている馬とはどうも違うような気がする。

 それでも騎馬術はLV1になったから、まぁ、良しとしよう。


◆◇◆ 魔法系 ◆◇◆

火魔法 LV5

水魔法 LV5

風魔法 LV5

土魔法 LV3

氷魔法 LV5

闇魔法 LV1

回復魔法 LV1

空間魔法 LV7

光魔法 LV5

生活魔法 LV6


注3) 魔法系も闇魔法、回復魔法を除き、一様に上昇している。

 特に空間魔法でLV値が上がったことで、久方ぶりに転移をやってみた。

結果は別途、後述する。


◆◇◆ 技能系 ◆◇◆

魔物調教 LV0

創薬・調剤 LV1

料理 LV1

家事 LV1

鑑定 LV4

鍛冶 LV3

心眼 LV3

錬金術 LV3

索敵 LV3


注4) 依然として、魔物調教は訓練そのものができていない。

 創薬・調剤、料理、家事については、それなりにやっている。

 亜空間内で色々なものを試作しているので鍛冶と錬金術は、相応に上昇。

 索敵については、寝ているとき以外、ほぼ常時発動としている。


◆◇◆ 身体系 ◆◇◆

身体強化 LV5

跳躍 LV5

夜目 LV2

闘気 LV2

強靭 LV4


注5) 我流ながら引き続き、訓練を継続している


◆◇◆ ユニークスキル ◆◇◆:

精霊召喚 LV2

HP自動回復 LV3

MP自動回復 LV4

無詠唱 LV3

インベントリ LV6


注6) 精霊の召喚については影響が大きいので試してはいない。

 妖精召喚の訓練でLV2に上昇したまま、それ以後の上昇は無い。


◆◇◆ 装備 ◆◇◆:

ショートソード 3

ショートランス 4

コンパウンドボウ 3

リカーブボウ 2

ベアボウ 3

矢  500本

六角棒 2

小楯 3

大楯 2

トンファ 2

ヌンチャク 2

サイ 2

革製防具 2セット

革製衣類 4セット

麻擬き衣類 2セット


注7) 装備類は素材を妖精たちに集めてもらい、亜空間内で鍛冶や錬金術で作成若しくは生産したもので前回と余り変わっていない。


◆◇◆ 加護 ◆◇◆:

 精霊王の加護

 炎の精霊の加護

 異世界管理者の恩寵


◆◇◆ 称号 ◆◇◆:

 忌み子

 異世界管理者が頭を下げし者


注8)その他、加護、称号については変化が無い。


◇◇◇◇


 ラノベで「有る、有る」の空間転移については、小さなものをわずかの距離だけ動かすにも相当の魔力を必要としたので、何となく怖かったから試さなかったのだが、ここを出て行くときには絶対に必要だと思い、再度トライアルを始めたのだった。

 訓練と検証を種々行ったことがこうじて、移動するモノの大きさや重量が変わっても使用魔力量の増減がほとんど無いことが解かったのだ。


 因みに大きなものとしてゴーレムを移動してみたけれど簡単にできた。

 室内は精々5m四方ぐらいだから、壁に当たらないようにするには対角線をとっても精々5m強ぐらいの距離だけれど、石と泥で造られた身長2m重量700キロ超のデカ物がすんなり転移した。


 この時の魔力使用量は34程度だった。

 更に、亜空間内で長い距離を転移させてみたけれど、100mの距離でも魔力使用量は18%程度増えて40になっただけだった。


 どうも魔力使用量は、転移距離により多少は変化するらしいが思ったほど大きくは無いようだ。

 6m弱の距離が約100mの距離に変わることで増大した使用量が18%程度という事は、同じ比率ならば1.5キロの距離でさらに18%程度増大する可能性がある。


 で、亜空間内で距離を色々変えてやってみた。

 現状で俺が造ることのできる最大の亜空間は一辺が200mの立方体だ。


 この立方体を個別に12個ほど作ることができるけれど、残念ながら空間を連結して大きな空間にすることは今のところできていない。

 そうして一旦作った亜空間の維持に左程の魔力量は要らない。


 自動的な回復で補填できるくらいの魔力量に収まっているので、実は亜空間の維持に必要な魔力量がいくらなのかは不明なのだ。

 この亜空間は、作るのも消すのも簡単である。


 但し、中に入れた物は、亜空間を消すとそのまま消滅してしまうので注意を要する。

 当然、己が身体も空間転移ができるだろうと信じてやってみた。


 成功しましたねぇ。

 亜空間の中だけれど100mほどの距離を一瞬で転移できたんだ。


 かなりの数をこなして色々と試した結果、以下の数式で近似値が得られることが解かった。

 使用魔力量≒(0.997÷(移動距離(m)×1.2))×移動距離(m)の1・5乗+32


 この数式に当てはめると、1000mでは約58の魔力を、5000mでは約90の魔力を、10キロで約115の魔力を消費することが予想された。

 この近似値が合っているならば、現状の魔力保有量だけで、多分2万キロの距離を往復できることになる。


 こんなべき乗の計算をどうやってできたのかって?

 俺が造った計算機で結構複雑な計算ができるようになったんだ。


 残念ながら電卓じゃないよ。

 小さな魔法陣を組み合わせて作った計算機は、関数電卓でできる程度の計算なら結構できるんだ。


 但し、計算速度はさほど早くない。

 さっきの計算式に適宜の移動距離を代入して、その答えが出るまでには10秒近くかかってしまう。


 多分、魔法陣の段階的発動(サブルーチンの繰り返し読み込み等)がMPUみたいに高速にはできないことと、そもそもが近似値計算式で回答を求めているからだと思う。

 単純に言って、放物線での最小値を求めるのに数値を代入して徐々にせばめて行くやり方だから、電子計算機ならば早いかもしれないけれど、半自動で魔方陣を順次動かすのに時間がかかる分だけ遅くなるんだ。


 それでも暗算ではちょっとできないような複雑な計算ができるから随分と重宝しているよ。

 話を転移の能力に戻すと、この世界の大きさは分からないけれど、仮に地球と同じ(直径約12,800キロ)であれば、世界中のどこへでも転移できることになる。


 重力方向の違いや転移座標の確定など、長距離転移をする場合には考慮しなければならない問題は山積みだけれど、取り敢えずここを脱出する下準備はできたよね。

 さて、何時でも出られるけれど、どうしようか?


 9歳になったばかりなんだけれど、9歳児って前世で言えば、小学校の三年生ぐらいなんだよね。

 そんな子が外界でちゃんと独りで生活できるのだろうか?


 転生者が冒険者ギルドに加入するってのもラノベの定番だけれど、9歳で加入できるの?

 で、早速、妖精sに調べてもらいました。


 この世界の冒険者ギルドは、ハンター・ギルドって言うんだって。

 狩猟者の意味かと思ったら、どうもバウンティー・ハンター(賞金稼ぎ)の意味合いらしい。


 魔物退治に獣の狩猟、どぶ攫いさらいやら失せ物探し、人探しにお尋ね者たずねもの探しまで何でもやるけれど、依頼を受けて仕事をするので「必殺雑用仕事人」って感じなのかな。

 因みにギルド加入の年齢制限はあるんだそうで、10歳から。


 一瞬がっかりしたけれど、こっちの世界の年齢の数え方は、ステータス上は満年齢の表示だけれど、世の中はの年齢で動いているみたい。

 つまりは生まれた年は1歳で、翌年1月には2歳になるんだ。


 だから、満年齢で9歳の誕生日が来た俺は、既に10歳になっているわけなんだ。

 まぁ、胡散うさん臭い奴を弾くために身元照会がそれなりにあるみたいだけれど、この世界は孤児が多いみたいだから意外と何とかなりそうな気がする。


 但し、万が一の場合の身元引受人は必要みたい。

 『何かあった時の連帯責任で賠償』って話じゃなく、本人が死亡した場合の遺体やら遺産の引き取り人の様だ。


 13歳(もちろん数え歳)以上の成人の場合は、連絡先は必要でもそうした身元引受人は必ずしも必要じゃないらしいけれど、未成年の場合は必要とされているみたいだ。

 俺って、そもそも生まれたこと自体隠されている子だからね。


 戸籍的な証明は何も無いから、普通の人から見ればとても胡散うさん臭い奴になる。

 まぁ、孤児という事で誤魔化しはできるだろうとは思っているけれど、それでも身元引受人を探さなきゃいけないのは不便だよね。


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