第2話 1ー2 色々とやってみる

 あ、そういえばこの子の能力って何なんだろう?

 俺は、フレドリックの過去を振り返った。


 第三者の記憶をのぞくと言うのは、初めての体験だが中々に興味深い。

 ただ、生まれてすぐにこの北の塔での幽閉生活が始まっているから、フレドリックにはろくな知識も経験がない。


 唯一の情報源は従者たちであり、その従者たちから得られる情報が、フレドリックの知識のほとんど全てなのだが、その中で気づいたのは、この子が精霊若しくは妖精の存在に気付いていること。

 若しくは、精霊や妖精を目で捕らえられることだ。


 良くは知らんが、精霊や妖精を目にする機会はそうそう無い筈だし、その姿を見ることそのものが特殊な能力なのかもしれない。

 そう言えば、言い伝えにあるサラマンダーって、確か火の精霊じゃなかったっけ?


 もしかするとこの子は、精霊や妖精の召喚ができるのかも知れない。

 召喚ってどうすればできるのかな?


 ラノベじゃ、召喚魔法を実行するには魔力を必要とするのじゃなかったけか?

 うーん、俺にというか、この身体にその魔力がそもそもあるかどうかもすらもわからんのだが・・・。


 定番のステータス・オープンで見えないかな?

 そう思った途端、目の前に半透明の表示が出て来たヨ。


 俺は、この世界の文字は知らないはずなんだけれど、何故か見慣れない筈の文字や記号が読めた。

 或いは、俺の前世の記憶が覚醒かくせいする前のフレドリックの知識を受け継いで読んだのかもしれないが・・・。


 でも、フレドリックの記憶を探った限りでは、この子はほとんど教育らしきものを受けていないから、従者たちと会話ができること自体が不思議なくらいなんだ。

 賢くても教育を受けたり、教えてもらったりしなければ、文字なんか読めるはずもないんだが、一体どうなっているのか、・・・。


 よくわからん?

 ステータスと思しきものは以下の通りだ。


名前:フレドリック・ブライトン・ヴァル・ハーゲン

年齢:8歳

職業:なし

備考:ハーゲン王国第四王子、忌み子

レベル:1


H P(生命力): 5

M P(魔 力):32

STR(筋 力): 3

DEX(器用さ): 3

VIT(丈夫さ): 2

INT(知 性): 5

MND(精神力): 5

LUK( 運 ): 4

AGI(敏捷性): 2

CHA(魅 力): 2

  言語理解  :5(MAX)


スキル:

◆◇◆ 武術系 ◆◇◆

<剣 術  LV0>

<槍 術   LV0>

<棒 術   LV0>

<盾 術   LV0>

<弓 術  LV0>

<格闘術   LV0>

<投擲術   LV0>

<騎乗術   LV0>


◆◇◆ 魔法系 ◆◇◆

<火魔法  LV1>

<水魔法  LV0>

<風魔法   LV0>

<土魔法   LV0>

<氷魔法   LV0>

<闇魔法   LV0>

<回復魔法 LV0>

<空間魔法 LV0>

<光魔法  LV0>

<生活魔法 LV0>


◆◇◆ 技能系 ◆◇◆

<魔物調教  LV0>

<創薬・調剤 LV0>

< 料 理  LV1>

< 家 事  LV1>

< 鑑 定  LV1>

< 鍛 冶  LV0>

< 心 眼  LV0>

< 錬金術  LV0>

< 索 敵  LV0>


◆◇◆ 身体系 ◆◇◆

<身体強化 LV0>

< 跳躍  LV0>

< 夜目  LV0>

< 闘気  LV0>

< 強靭  LV0>


◆◇◆ ユニークスキル ◆◇◆:

< 精霊召喚  LV1>

<HP自動回復 LV1>

<MP自動回復 LV1>

< 無詠唱   LV1>

<インベントリ LV1>


◆◇◆ 装備 ◆◇◆:

 なし


◆◇◆ 加護 ◆◇◆:

 精霊王の加護

 炎の精霊の加護

 異世界管理者の恩寵


◆◇◆ 称号 ◆◇◆:

 忌み子

 異世界管理者が頭を下げし者


 ラノベで知っている通りなら、多分、こいつはかなり低いステータスなんだろうな。

 MPを除くと一桁台だ。


 HPが5というのは、おそらく大人に殴られたらすぐに瀕死になるレベルなんじゃないかな?

 MPが32というのは、他の数値に比べるとかなり高いのだが、普通の人はどうなんだろうね?


 うーん、他人のステータスと比べてみないとわからないぜ。

 言語理解が5でマックスというのも良くわからんが、まぁ、この世界で言葉には困らんということで、文字もこのおかげで分かっているのかも知れないな。


 スキルで武術系が全部LV0というのは壊滅的にダメという意味か?

 それとも一応表示されているということは、伸びしろがまだあると言う意味か?

 

 魔法系では、火魔法だけがLV1で、後はぜんぶLV0。

 少なくとも火魔法だけは、現状でも使えると言うことだろう・・ネ?


 技能系では、料理、家事に鑑定がLV1なんだが・・・。

 「主婦」じゃなく「主夫」でもやれってか?


 身体系は、全部LV0だな。

 まぁ、もともとの体力が3以下だからな。


 このままじゃ身体系のスキルは、きっと使えないと言うことかもしれない。

 ユニークスキルは、精霊召喚、HP自動回復、MP自動回復、無詠唱、インベントリがLV1でこれが随分と目立つな。


 少なくとも精霊召喚については、王家の隠れスキルじゃないのか?

 聖紋にばかりこだわって、大事なものを見逃しているんじゃないのか?


 そうして「精霊王の加護」と「炎の精霊の加護」が、この子の将来にはきっと大きな存在になる。

 「異世界管理者の恩寵おんちょう」というのは、例の顎髭あごひげの爺さんがくれた奴だろう。


 そう言えば、爺さんの恩寵でも、この子の能力を伸ばすのには役立つと言っていたな。

 「インベントリ」は、モノを蓄えるには便利なはずだが、今の幽閉状態では多分役には立たないか・・・。


 精霊召喚は、おそらく魔力を大量に使うだろうからな。

 今のままじゃ危険かもしれない。


 先ずは体力を増やし、魔力を増やして、魔法を使えるように訓練するしかないだろうな。

 8歳の子供か・・・。


 精々小学校の低学年ということだが、どうやって訓練したものかいな。

 それと体力の強化には、食うものが大事なんだが、この子の記憶では余り良いものを食わせてもらえていないような気がするぜ。


 王家なんだから、もっと良いものが出せるだろう。

 まぁ、文句を言っても始まらない。


 何とか現状を打破して改善するしかない。

 魔法で色々やってみたいな。


 空間魔法で転移ができるようになれば、此処ここから抜け出ることも可能だろう。

 或いは精霊や妖精の助けを得られれば、色々と生活改善も図れるかも知れないな。


 先ずは体力の増強。

 急には無理だから徐々に進めよう。


 俺は、部屋の中を歩き、手を使って指先、腕の運動をゆっくりと始めた。

 始めてすぐにわかったが、この子はとにかく疲れやすい。


 筋肉が細いんだ。

 それでも、合間、合間に休みを取りながら訓練を進めることにした。


 記憶にれば、この子には魔法の教師もいないし、今まで魔法を発動したことも無い。

 であれば、ラノベで読んだ方法が間違っているかもしれないが、寝る前に魔力をほぼ全部使うと言う方法で魔力の増加を狙ってみるしかない。


 食事は三食だが量は左程無いし、俺が見ても栄養的にバランスが悪い。

 どうにかせにゃならんのだが・・・。


 取り敢えずは、従者の男に注文を付けてみた。

 まぁ、反応はあまりかんばしくはない。


 忌み子が何を言うかという態度だな。

 ウン、こいつは当てにならん。


 順番に従者たちを試して行くと、男二人は駄目だったが、女三人の内二人は同情的だった。

 但し、監視役が上にいるらしく彼女たちも勝手はできないようだ。


 こいつは最悪だね。

 何でも自分で色々やってみるしかないわけだよ。


 一週間ほどすると、体力が若干上がった。

 上昇したのは精々1か2だから大したことは無いんだが、上がると言うことは将来的に大いなる希望と可能性を秘めている。


 それに魔力は32から48と五割増しだ。

 こいつは大きい。


 まぁ、ラノベで読んだことのある魔力の増強方法は間違ってはいなかったと言えるだろう。

 未だこれでは大した魔法は使えないと思うのだが、使えるかどうか試す意味合いはある。


 そんな時は、定番の生活魔法で試してみる。

 魔力が乏しい一般人でも、魔力使用量が少ないので使えると言う奴の筈だ。


 先ずは少量の水を出してみる。

 テーブルの上にある銅製のカップに指から水が滴るようなイメージで水を出してみる。


 寝る前にやっている魔力の体内循環を行い、その魔力を指先に集中して、水をイメージする。

 フッと魔力と思われるものが抜ける感覚がして指先から水が滴下した。


 カップの底に少し貯め込んで、止めた。

 恐る恐る飲んでみると、美味おいしい水だった。


 水差しの中に入っている水は不味かったが、こいつは美味うまい水だ。

 ひょっとして、この城の中はもしかして水が悪いのか?


 まぁ、これで魔力がある限り、飲み水に困ることは無いだろうな。

 念のため確認すると、MPは48のままでその後ろにかっこ書きのマイナス表示がついていた。


 良くわからんが、恐らく1までは行かない減少量ということではなかろうか。

 確認のために、その後三回水を出して、数値が47に変わるのを確認した。


 つまりは一回当たり(精々10cc程度の量の水量)、0.25から0.3程度の魔力を使っているということだ。

 次に着火のための火を指先から出してみる。


 マッチの火を思い浮かべたが、出たのはライターの火に近い。

 これも5回ほど出して、MPが1減るのが確認できた。


 やはり、生活魔法の魔力使用量は、かなり低いようだ。

 ラノベでは、他にクリーンとかがあったような気がするが、今は置いておこう。


 俺としては、是非とも空間魔法を試したいのだ。

 転移は、相当に魔力を使用すると思われる。


 だが、小さなものの移動ならばどうだ?

 小さければ小さいほど、移動距離が小さければ小さいほど魔力の使用量は小さいのではないだろうか。


 魔力の枯渇こかつで死ぬ気はないが、少々の冒険はしなければ何も始まらない。

 室内を物色して、小さな木片を床の隅に見つけた。


 丁度たくの影になっていて、掃除の際には見過ごされたのだろう。

 俺はそれをテーブルの上において、僅かに10センチ先へ転移させる実験を行った。


 毎日繰り返しながら試している内に、コツを掴んだようだ。

 魔力がブワッと奪われる感じがして、木片が瞬時にテーブルの上を移動した。


 多分、転移という空間魔法には成功したのだが、魔力の使用量は30を超えていた。

 この実験を始める前に46あったMPが一気に14まで減少していたのである。


 恐らくは数グラムに満たない様な小さな木片である。

 それを僅かに10センチ動かすのに32の魔力を使ったわけだが、仮に転移する距離に魔力消費が比例するなら1m動かす場合には320のMPが必要になるかもしれない。


 こいつは慎重に検証を進める必要があるよな。

 そうして少なくとも我が身を別の場所に転移すると言う試みは、しばらく諦めねばならないようだ。

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