この作品、おもしろいんですけど、はっきり言って鬱展開がかなり多いです。
私はこういう鬱展開だらけの作品が好きなんで平気ですけど、普通の感性の人が読む際はかなりの覚悟を必要とするでしょうね。
でも、その覚悟を持って読むだけの価値はあると思います。
なぜなら、この小説は、ただ辛いシーンがあるだけじゃなくて、現代的な問題を扱っている、社会派の作品だからです。
主人公は早川優里という女の子でパパ活をしているのですが、家庭環境にいろいろ問題があって望んでそんなことをするようになったわけじゃないんです。
彼女がパパ活をしていることは学校の人達にもバレているようで、陰口を言われたり、冷たい扱いを受けています。
そんな彼女に学校で唯一優しくしてくれるのが春陽という男の子で、二人は両思いなんですけど、優里はパパ活している自分は彼にふさわしくないと考え、彼を拒絶してしまいます。
その春陽も、なんだか不穏なものを感じさせるところがあって、彼は彼で大変なようです。
優里はそんな春陽の代わりとして、モカという自分と似たような境遇の女性と肉体関係を持つのですが、どちらも傷をなめ合うような、共依存の関係になってしまいます。
このまま優里は春陽をあきらめて、モカとの関係を続けるのか、それとも……。
先が気になってしかたないですね。
ちょっと希望が見えたらまた絶望に叩き落とすような展開が来て、油断が全くできない作品。でも、そこがいい! と私は声を大にして言いたいです。
幸せな日常がただ続いていく、そういう作品ももちろんいいのですが、こういう超シリアスな作品ももっとあってもいいんじゃないでしょうか。
このまま救いがなく終わるのか、それとも幸福な結末へと至るのか……最後まで見守りたいと思います。
生ぬるい作品にあきたとか、社会派の作品が読みたいとか、そういう方にこの小説を強くおすすめいたします。