第10話「次の獲物」

「さて、アサンを正式な仲間にできたし、今後5年間は安泰あんたいなわけだが。サラが言ってた大臣の持つ強欲のネックレスがある限り安心はできないな。残り二つの貴族が持つ宝、次はネルソン家が持つ『折れた聖剣』だ。かつて伝説の騎士が使ってた聖剣らしいが、刀身は折れて使い物にならないが、財宝としては値が高いそうだ」


 私が次の目標について話してると、サラが楽しそうに質問してきた。


「またアサンちゃんみたいな番人とか居るのかな!?」


「なんでワクワクしてんだ! 今回もいつも通りレミアとディンが調査してるよ! まぁでも、アサンが比較的に話の通じる相手だったが、アサンから見て折れた聖剣に番人が居ると思うか?」


「む? 我に聞くのか? 我の鑑定眼があれば、その折れた聖剣の値打ちが分かると思うが……まぁ居るだろうな。我のように話が通じる相手か分からんが。レミアとディンが戻って来たら聞けばよいじゃろ」


 まぁ、アトランティスの涙の番人がたまたまアサンだったから良かったが、伝説の騎士が実際にその聖剣で戦場を駆け抜けた武器だからな。


 たぶん話が通じない番人でも居るんだろうな。


 とか考えていたら、レミアとディンが戻って来た。


「朗報、と呼んで良いのか分からんが、折れた聖剣に番人も居ないし警備は杜撰ずさんだと言う事が分かった」


「罠か?」


「ワタシもそう思ったが、どうも折れた聖剣そのものを盗む事が不可能なんだ」


「えーと?」


「なんでも、折れた聖剣は聖剣が認めた相手しか持ち上げる事ができない厄介な財宝らしい。実際に他の怪盗団がチャレンジしたが失敗して諦めて帰った話を聞いたぞ」


「なんじゃそりゃ、ほとんど博打ばくちじゃないか。聖剣が認める相手って誰だ?」


「それをディンと調べたが、ネルソン家の人間達が隠蔽いんぺいしてて分からなかった。どうする? こんな博打みたいな獲物よりも別の獲物を狙った方が良くないか?」


 レミアの意見に賛成だ。いくら警備が杜撰とは言え、苦労してたどり着いた先で諦めるとか時間の無駄じゃないか。


 しかし、サラは引く気がなかった。


「いいえ、折れた聖剣を狙いましょう。あの聖剣はネルソン家の象徴でもあります。それに折れた聖剣を盗む事ができただけでも帝国に新たな波紋を作る事に繋がり、大臣に近付くチャンスが生まれます」


 マジかー。まぁ今回は護衛としてアサンが居るから大丈夫だよね? 誰か大丈夫だと言ってくれ。

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