冒険の始まり
「ねぇ、そういえば女神を探すって言ってたけど......。目星はあるの?」
リリンがエルンに尋ねる。
「実は、無いんですよね......。ただ、フェフィール様は強力な魔物が暴れている際に地上に降りて戦うことがあるんです。ここ最近、各地で強力な魔物が暴れているので、倒すために各地を回っていると思っているのですが......」
「そういえばここ最近、魔物による被害が増えたって聞くね。しかも、かなり酷い状況だって......」
「そうなのか......」
俺がここ一ヶ月、同僚と冒険していた時は、そこまで強い魔物に出会うことはなかった。
もしかしたら、俺はかなり運が良かったのかもしれない。
その強い魔物に出会っていたら、と思ったが、ゾッとしたので考えるのをやめた。
「でも、一ヶ月も天界に戻らないというのは、今までになかったので......。ありえないとは思うのですが、もし、やられてしまっていたら......」
エルンがだんだん涙目になり、落ち込み始める。
「よし、だったら一刻も早く探そう! まだどこかで頑張ってるかもしれないし」
「......そ、そうですね!」
エルンは手の甲で涙を拭く。
「それで、どうやって探すの?」
「各地を回って、強い魔物の場所を探します!」
そう言いながら、エルンは突然俺とリリンの胴体に腕を回す。
「お、おい! どうしたんだ突然!」
突然エルンに抱き着かれ、戸惑ってしまった。
「も、もしかして......!」
「はい! 飛んで空から探します!」
俺の嫌な予感は的中していた。
エルンの羽が開き、羽ばたき始める。
次第にエルンと抱きかかえられた俺たちは宙に浮き始める。
「と、飛んでる......!」
「おー。空なんて初めて飛んだよ......」
「しっかり抱きかかえていますが、一応お二人も私の胴体に掴まってくださいね!」
俺とリリンは、言われた通り体に抱き着く。
「それじゃあ! しゅっぱーつ!」
エルンがそう言うと、突然エルンは急加速した。
一方その頃。
エウルガの酒場にて。
「クソっ! ライトのやつ! 調子乗りやがって!」
セイヤが木製のジョッキに入ったハチミツ酒を一気飲みし、机に叩きつける。
「ねー。あいつ調子乗りすぎ」
セイヤに同意しながら、つまみであるチーズを少しずつ食べるミキ。
「しかし、ライトくんをパーティーから抜いたのは失敗だったかもしれないな......。もう少し判断を遅らせていれば、あの天使の力は僕たちの力をしても使えたのに......」
「あぁ!? あんな天使を使役してるライトをパーティーに入れてたら、俺たちがヘコヘコ頭を下げなくちゃいけなくなるじゃなぇかよ!」
「そうよ! そんなのごめんよ!」
後悔しているリョウに対し、反対意見を言うセイヤとミキ。
「あんなやついなくたって、俺たちだって十分やれるはずだ! 現に、この世界に来た時と比べて、かなり強くなってるじゃねぇか!」
「そうよ! ドラゴンくらいなら、三人で協力すれば普通に倒せるし!」
「ド、ドラゴンを倒せるだって!?」
突然、隣の席で酒を飲んでいたおじさんが、そんなことを言いながら三人の席に近づいてきた。
「な、なぁ! 君たちにお願いがある! 私の故郷の周辺に強い魔物が現れて困っているんだ! 頼む! 助けてくれ!」
「はぁ!? なんで俺たちがお前を助けなきゃいけねぇんだよ!」
「お礼はする! これは前金だ! 報酬はこれよりたくさん出す!」
おじさんはカバンから袋を取り出し、テーブルに置く。
ジャラという音が聞こえたので、中身は恐らく金貨だろう。
「これだけあれば、数日は食事や寝床に困らないな......。これに加え、更に報酬を出すということは、相当お困りのようですね。わかりました。私たちがあなたの依頼を受けましょう」
「本当か! ありがとう! これが私の故郷へ行くための地図だ!」
カバンから取り出した地図をリョウに渡す。
「じゃあ、頼んだよ! 倒したら、またここに来てくれ! 毎日同じくらいの時間に飲んでるからさ!」
三人にそう伝え、おじさんはまた自席で酒を飲み始めた。
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