あの夜、猫だけが知っていたこと。
@Wagena
一 星の囁き
夜の風が、静かに過ぎていく。
遠くの蝉の声は、まるで時間の隙間からこぼれ落ちる音のようだった。
君はぽつりと呟く。
「星は遠くて、届かないんだ。」
僕は空を見上げる。
街灯に隠れながらも、一つだけ確かに輝く星があった。
その光は小さく、けれど消えずに揺れている。
猫が間に入り込み、柔らかな毛先が君の指に触れる。
君は微かに笑い、夜の秘密を共有するようにその瞬間を大切にしていた。
言葉は重くて、口にできなかった。
触れられないものがここにあることを、ただ黙って受け入れるしかなかった。
猫の瞳は、星の光を映し出し、僕らの間の静寂を揺らした。
あの夜、君と僕の世界はひそやかに交わっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます