かげろうに乗って
シッポキャット
1 おかっぱの白ネコ
ぼくは目をこすり寝ぼけた意識を
「どこから
ぼくはネコを追い出すため、ベッドを降りて窓辺に向かった。そういえば、ここはマンションの四階だったな。ここまで登って来たネコの努力は認めるけど、
「あまり時間が無いの。わたしの話を聞いてくれない?」
ネコがニャアと鳴かずに
「わかった。とりあえず話を聞こうか」
ぼくは窓辺に椅子を持って来て、窓枠のレールに座ったネコと向かい合った。すらりとした短毛の白いネコだけど、おでこにおかっぱのような灰色のブチがある。吸い込まれるような
「今からわたしと一緒に、
予想外の
苦労して手に入れた旅行のペアチケット。一緒に行く予定だった友だちが急に行けなくなったらしい。
「あともう少しでフライトの出発時刻なの。もったいないから、たまたま通りがかったキミを誘ったのよ。どうする?」
ネコはどこから取り出したのか、
「そんなこと突然言われても。明日も学校はあるし、それ以外にもやる事はたくさんある。それを全部ほっぽり出して旅行に出るなんて……」
ぼくはこれが夢の中の出来事なんだということをすっかり忘れて、馬鹿正直に答えた。
すると、おかっぱの白いネコは溜め息を
「もうほんとに出発時刻が
この旅行のチケットは天文学的な確率の
だけど、このチケットは
突然突きつけられた究極の選択。ネコのイライラした表情を見ると、決断を長引かせる
ぼくの頭の中に、なぜか身の回りのしがらみの数々が思い浮かんできた。今すぐにイヤなことから逃げ出したい。だけど……本当にそれでいいのだろうか?
答えを出せないでいるぼくに
「決められないようね。残念だけどもう行かないと。キミとなら楽しい旅になるだろうと思ったんだけどね。それじゃあ、さようなら」
「待って! ぼくも一緒に行くよ!」
ぼくは去りそうになったネコの長いしっぽを
「ちょっと! わたしのしっぽはデリケートなの! ……決して
ぼくの手から上品な灰色のしっぽをスルリと
「一緒に行く。ぼくはイヤなことから逃げ出すためじゃない……と思う。二度と無いチャンスを
おかっぱの白いネコは立ち上がって小さな手を差し出した。ぼくはその手を
「窓の下に
ぼくは白いネコの手を握って、着の身着のまま窓から飛び降りた。これが夢だという
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