犬の散歩でダンジョンへ行くんだが、うちの子は強すぎないか? 飼い主の俺が実は最強とか勘違いです

轟イネ

第1章 テイマーとサモエド狂戦士

第1話 お散歩とジョブ獲得?

  ▽第一話 お散歩とジョブ獲得?


 犬飼いぬかいカイトの日課は早朝のお散歩だった。

 朝の五時前。

 蒸し蒸しとした日本の夏に抗うように、まだ朝日が昇るか否かの時間のお散歩である。その理由は……犬を飼っているから。


 犬種はサモエド。

 白いモコモコとした大型の犬――厳密には中型の中での大きい部類らしい――であり、なんだかいつも笑っているような顔つきをしている。やたらとデカい。

 抱きつかれた時は、なんだか暑い。

 寒い国で生まれ、現地では寒さを凌ぐための湯たんぽとして実績をあげていたらしい。綿毛のような体毛はふわふわでいとおかし。

 大型もふもふ犬の常で――彼らは日本の夏にとても弱い、、、、、


 だから朝に散歩させる。


「だいじょーぶか? シュマロ?」

「わん」

「そうか、わんか」


 正直なところ、カイトはサモエドを飼うことについては反対だった。あまりにも日本の気候と合致しない生物だから。

 けれど、飼わねばならない理由があった。

 結婚した姉が出産と同時期にもらってきた犬なのだ。


 半ば押し付けられるような形だったという。


 そのサモエドに対して、生まれた赤ちゃんが重度のアレルギーを見せた。サモエドはその犬種柄アレルギー物質を出し辛いが、無理な人は無理なのだそうだ。


 そしてやって来たのが、実家。


 不登校児であるカイトは、もっぱらサモエドのシュマロの相棒役を引き受けていた。夏だけれども、ややヒンヤリとした風がやって来る。

 そろそろ太陽が昇ってくる。

 アスファルトが熱を持つ前に帰ってしまおう……そう踵を返そうとした時だった。


 振り向いた時。

 そこにはカイトの腰の高さほど――彼は平均身長よりやや背が低い――の体躯をした、緑色の化け物がいた。


 ――ゴブリン、、、、


 二十年前。

 突如として出現したというダンジョンに住むはずの魔物。


「ま、ず――」

『ぐぎゃああああ!』


 まずい、と思った時には飛び掛かられていた。

 咄嗟にシュマロを抱きかかえ、カイトもまた跳んでいた。大型犬とはいえ、まだ一歳未満のシュマロは抱きかかえることが可能だった。


 地面にこすれるようにして転倒。

 シュマロは胸の中で驚いている。遊んでいると勘違いしているのか、嬉しそうに尻尾をぱたぱたさせて、わんわんと興奮していた。

 ついでとばかりに顔面を舐められる。


 ちろちろと。


 腕から解放する。

 シュマロはすぐに立ち上がり、くるくると回転した。尻尾の先端が鼻をかすめてくすぐってくる。


「ば、ばか犬……」

『ぐぎゃぎゃ』


 ゴブリンに背中を獲られた。

 かと思えば、肉体に熱が入り込んでくる。生まれた瞬間からゴブリンが所持しているという錆びたナイフによる攻撃だ。

 どすどす、と確かめるように何度か刺突される。

 血が吹き出て意識が朦朧としていく。


 不思議と痛みはなかった。


「死……ぬ、と…………か」


 直後のことだった。

 急に身体が軽くなった。薄れゆく意識の先で見やった。カイトが目撃したのはゴブリンへと襲いかかるシュマロの姿だった。

 いくら子犬といえども、大型犬。

 ガチでやったら人間よりも強いのは当たり前なのかもしれない……


【レベルアップしました。】

【ジョブを取得しました。】


 これが最強の飼い主と呼ばれるようになった犬飼カイトとその相棒――最強やばい犬と呼ばれるシュマロの冒険の……始まりであった。


       次回 テイマーと狂戦士?



――――

本日より連載スタートです。

やばいサモエドともっとやばい飼い主のお話になってくると思われます。

毎日18時更新予定。

良い予感がした方はぜひお話のフォローと評価のほどよろしくお願いいたします。

かなりモチベーションと連載期間とに寄与します。

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